5-6 ワシが、その“鍵”を持っとる
やっと目的地の決定まで行けました。
大雑把でいいと思ったのですがパッと全体を読み直すとちょっとわかりづらいかな?の不安が常に押し寄せてきちゃうので度々書き直しています。
これってあるあるなのでしょうか?
一方、
―――薫サイド―――
薫は、市場の雑踏の中を歩いていた。
王都の市場は今日も活気に満ちている。
薫はそんな喧騒に紛れ込みながら、さりげなく周囲の会話へ耳を傾けていた。
「王子様が魔王を討伐してくださったおかげで、最近は魔物被害も減ったわねぇ」
「ほんとほんと。街道も前より安全になったって聞くし」
「凱旋はいつになるのかしら?」
(へぇ…魔王を倒したの、ここの王子なんだ…)
薫は素直に感心した。
まさか、その“魔王討伐”の真相が、今いっしょにラーメン屋台を切り盛りしている新見によるものだとは、まだ知る由もない。
奥様の井戸端会議(?)からは碌な情報を聞き出せそうもないので
場所を変えて自由広場に移った。
自由広場では新見達の販売したラーメンの影響か所々に食べ物を売る屋台が増えていった。
その中には似た商品をラーメンと銘打って売ってるが本家には程遠く行列どころか閑古鳥が鳴いてる店もしばしば見かける。
新見達が休んでいる間一番人気は焼き串の店だ
「焼き串一本百ゴルドだよー!」
「今朝獲れたの川魚が焼けたぞ!買った買った!」
屋台から漂う香ばしい匂いに、ぐぅ…と腹が鳴る。
太陽を見上げるとほぼ真上まで来ていた。
(そういえばもうすぐお昼でした…)
薫は少しだけ苦笑しながら、焼き串を買うとこっそり”うま味調味料”をかけて食べた。
(これでもだいぶましになったほうだ)と思いながら食べてると何か聞こえてきた。
どうやら冒険者たちが集まって焼き串や焼き魚を食べながら話していた。
「聞いたか? 最近、貴族向けの荷物が届かねぇ件」
「あぁ、商業ギルドに怒鳴り込んだって話だろ?」
「原因は調査中だってギルド側は言ってるのに、“全部ギルド長の責任だ!”って難癖付けながら大騒ぎだったらしいぜ」
「まったく、貴族様は気楽でいいよなぁ」
「貴族向けの高級調味料の値段が徐々に上がってるらしいな。」
「貴族がこぞって従者をあちこちの商店に送ってるかと思ったらそういうことね。」
「まぁ、俺達には手が届かない代物だからあんまし関係ないな。」
「そうだな。」
(なんか新見さんたちが気にしてた件と近い話っぽいな……)
薫は何気ない顔を装いながら、最後の肉を食べ終わるとその会話をしっかりとメモに刻み込んだ。
―――ゴリオンサイド―――
ゴリオンは、新見達とは逆に自ら動き回らず、工房の片隅でいつも通り仕事をしながら情報を集めていた。
工房へ出入りする冒険者や商人、業者たちに、世間話がてら何気なく話を振って探るといった感じだ。
「そういやゴリオン、お前さん最近屋台の護衛なんぞやっとるらしいじゃねぇか。ついに鍛冶師引退か?」
鉄鉱場から鉄材を運んできた顔なじみのドワーフ業者が、にやにやしながら茶化してくる。
「あん? 誰が引退じゃ、ワシぁまだまだこの通り現役じゃ、そんなことよりお前さんとこのドラ息子がまた酒場でやらかしたって聞いたぞ」
ゴリオンも負けじと言い返した。
「てめぇ、どっから聞いた…!」
「カマかけたつもりじゃったんじゃがまさか本当じゃったか」
とさらに煽った。
周囲のドワーフたちはまるで当たり前の光景かのようにこの口げんかを止めようともしない。
端から見れば軽い喧嘩腰だが、歳の近いドワーフ同士ではよくあるやり取りだった。
もっとも、ゴリオンとピンだけは本気で反りが合わないのでこのときだけは喧嘩が勃発した途端全員で止めに入れるようみんな気張ってるらしい。
そんな雑談の合間にも、御者がさりげなく話を滑り込ませていく。
「そういや最近、オイラの実家からの知らせがなくてな。そろそろ中元の返事の挨拶の文が届いてもおかしくない時期なんじゃが」
ゴリオンと軽く口げんかしていた鉱夫ドワーフがそれに反応して
「おー…もうそんな時期か…ワシのとこもそうじゃ…心配じゃが文が届かないなんてよくあることじゃからな。」
「んだんだ、ついこの間一緒に帰省けどその時はみんな元気にしてたから大丈夫じゃろ」と御者が続けた
「そうじゃの、何かあったらワシのところに”火急の知らせ”が来るから多分大丈夫じゃろ。それより面白い話があってのぅ、貴族が商業ギルドで…」
とゴリオンが先ほど聞いた冒険者から聞いた、例の“怒鳴り込み貴族”の話へ流れていく。
どうやら王都では、だんだんと広まっている噂らしい。
「あと聞いた話じゃと、ドワーフ国産の調味料が最近値段も上がってると聞いたんじゃが?」とゴリオン
「調味料だけか?ドワーフ国産のものだけが品薄ではなくてか?」
「そこまではわからんがドワーフ国から頻繁に輸出するものと言ったら調味料ぐらいだし。
それが最近届いてないとか聞いておるか?」
「いやー、担当が違うから何とも言えねぇな…」
「そうじゃったのぅ、すまんな時間を取らせて」
「いやいや、これくらい大したことないって。」
と言うと御者は鉱夫を乗せて去っていくとゴリオンは段差に腰かけて普段あまりしない煙管をふかした。
その胸中では、じわじわと嫌な予感が膨らみ始めていた。
その夜。
工房の一角にある作業机を囲み、新見たちはそれぞれ集めてきた情報を持ち寄っていた。
「じゃあ、整理するぞ」
新見が紙を広げながら口を開く。
「まず一つ。今、王都で一番の話題になってるのは、商業ギルドに怒鳴り込んだ貴族がいるって話」
「これは市場や自由広場辺りでもかなり広まってましたね」
薫が頷く。
「しかも、その原因になってるのが“貴族宛の荷物が届かない件”らしいわ」
ゼノンも続けた。
「冒険者ギルド側の依頼には調査依頼も護衛依頼も来てなかったから少なくとも表向きは盗賊被害とかではなさそうね。」
「あと、一部の調味料が品薄で値上がりしてるって話もあったな」
新見が付け加える。
「ただし影響受けてるのは高級品だけ。庶民の生活には、まだほとんど影響出てないみたいだけど」
すると薫が何かに気づく
「多分ですけど荷物が届かないと調味料が品薄は繋がってるんじゃないでしょうか。噂の発生時期がほぼ一緒ですし。」
「しかも貴族向けの高級品でそんなに出回らないからみんなも噂程度だと思ってるんでしょう。」
「そこに商業ギルドに怒鳴り込んだ貴族がいるとなると…」
全員の情報をまとめると、妙に点と点が繋がっているようにも見える。
「ふむ……」
ゴリオンが腕を組む。
「それらの情報を聞いてふと気になったのじゃが、ドワーフ国からの連絡が完全に途絶えておることも関係ありそうじゃ」
「というと?おっさん。」
ゴリオンは先ほどの出入り業者のドワーフの話をした。
「一応何かあった際の知らせもワシのところに来るんじゃが、それすらもないのが逆に気になるのじゃ。」
「それは心配ね。」とゼノン
重苦しい空気を振り払うように、新見が勢いよく立ち上がった。
「ええい、まどろっこしい。こうなったら、直接ドワーフ国へ行って調べよう!」
ばん、と机を叩く。
その勢いに驚いた薫がびくっと肩を震わせ、ゼノンは即座に額へ手を当てた。
「それができたら苦労してないわよ……」
「ん?」
「だって、ドワーフ国って普通は入れないんでしょ?」
ゼノンが呆れ混じりに言うと、
「…霧の洞窟を抜けられんから、じゃろ?」
ゴリオンが横から口を挟んだ。
「霧の洞窟?なんですそれ?」
薫が首を傾げる。
ゴリオンは静かに頷いた。
「ドワーフ国の周囲を覆う、魔力を帯びた特殊な霧じゃ。
その魔力が強力でな。無策に入り込むと方向感覚を狂わされ気づけば入口へ戻されておる程度ならまだ幸運じゃが最悪の場合、中で永久に迷い、朽ち果てる者もおる」
「うわ、特殊ダンジョンかよ…」
新見が顔を引きつらせる。
「ドワーフ国自慢の天然の防衛線とも言われてるわね」
ゼノンも真面目な顔になる。
「霧の洞窟を抜けるには、“鍵”を持ったドワーフの案内が必要なの。今からその鍵を持ったドワーフを探して説得するとなると…その人次第だけど骨が折れそうね…」
簡単に協力してくれるとは思えない。
そう言いたげなゼノンだったが、
「そのことなら心配いらん」
ゴリオンがあっさりと言った。
「ワシが、その“鍵”を持っとるドワーフの一人じゃからな。ワシと一緒ならその霧の洞窟を抜けられるぞ」
一瞬、部屋が静まり返ったや否や
「「「な、なんだってぇぇぇぇ!?!?」」」
三人の声が見事に重なったがゴリオンだけやかましそうに耳をふさぐ。
「おっさん!それって本当か?」
「あぁ、ほんとうじゃ。嘘ついてどうする。じゃからドワーフ国に直接出向くのには賛成じゃ」
「よし!思い立ったら吉日!だけど明日は営業はあるから準備して明後日から早速出発だ!」
「「「おー!」」」
全員の気持ちが一致した瞬間であった。
霧の洞窟を出入りできるのはドワーフはだいたい数千人に一人の比率なのでカギを握るドワーフが目の前にいるとなるとみんな驚くわけです。
感覚的にはAB型Rh-(超希少な血液型)を見つけた感覚に近いかな。




