6-1 ドワーフ国を目指して
やっと戻ってこれました。
ちょっとプライベート関係で投稿できませんでしたがやっと元のペースに投稿できるかと。
追伸:友人に勧められてベイブレードを始めたのですが店頭に以前の在庫がどこにもないところにブームの怖さを感じました…
王都を発った新見たち一行はゴリオンの案内の元、一路ドワーフ国を目指して森の中の道を進んでいた。
道中、何度か魔物と遭遇し戦闘になったものの、結果から言えば苦戦らしい苦戦は一度もなかった。
それもそうである。
魔王を倒した元勇者である新見。(冒険者ランクは最初から発行しなおしたのでEランク)
歴戦のドワーフ、ゴリオン。
そして魔法に特化したBランクと高位に位置するハイエルフの冒険者、ゼノン。
その三人が揃っている時点で、並の魔物では相手にもならなかった。
今その者たちの足元には体高五メートルはあろうかという巨大な猪型魔物が地面に沈んでいた。
太い牙を持ち、全身を黒い剛毛で覆われたその巨体は、普通なら討伐隊が組まれるような危険種だ。
それを見下ろしながら、薫は乾いた笑みを浮かべた。
「うわぁ……これ、《ワイルドアンガーボア》ですよ……」
呆れ半分、感心半分といった声だった。
「Bランク指定の魔物ですし、本来なら冒険者を集めてレイドを組んで対処する相手なんですけど……」
彼の視線の先では、巨大な猪の額に深々とめり込んだウォーハンマーを、ゴリオンが何事もなかったかのように引き抜いている。
ゴリオンは肩を回しながら首を傾げた。
「ふむ。肩慣らしには、ちと役不足じゃったかのぅ」
「いや、役不足って、おっさん…」
新見が即座にツッコむ。
「なんであの突進を正面から止められるんだよ……」
思い出しただけで頭が痛い。
あのワイルドアンガーボアは、おそらく時速六十キロ近い速度で突進していた。
普通なら回避一択。
受け止めるなど論外だ。
だがゴリオンは
『ふんぬ!』
と一言呟いた後、ハンマーを構え、
真正面から殴り返した。
結果、突進してきた巨体の方が止まり眉間にハンマーがめり込んでいた。
「まぁ、おじさまが止めてくれたおかげで魔法は当てやすかったんだけどね♪」
ゼノンが楽しそうに微笑む。
彼女の放った高位風魔法が、ワイルドアンガーボアの足の腱を切り裂き、動きを完全に封じていた。
そこを新見が剣でとどめを刺すという流れるような連携を見せる。
その様子を戦闘力のない薫が隠れながら見ていた。
「とりあえず討伐報酬になる牙とお肉、回収しちゃいましょう」
そう言うと、慣れた手つきで解体用ナイフを取り出すと躊躇なく巨大猪へ刃を入れていく。
関節を外し、血抜きを行い、価値のある部位を見極めながら次々と切り分けていく手際は実に鮮やかだった。
「結構手慣れてるな」
それを見ていた新見が感心したように声を漏らす。
「そうですか?この世界で生きていくとなるといやが応にも慣れちゃいますよ」
その声には、少しだけ苦労の色が混じっていた。
(思ったより苦労人だな……)
新見はそう思っていると
当の本人はそんな視線に気づくことなく、
「あ、この肉の部位、サシが綺麗で美味しそうですよ!今晩はこれを焼いちゃいましょうか!」
などと呑気に言いながら、せっせと肉を切り分けていた。
「あ、骨はこっちにくれ。スープに使う。」と骨は新見のアイテムボックスに収納された。
次の朝、
また道中で魔物を討伐すると討伐した魔物の素材を回収しながら、新見は呆れたように呟いた。
「しかし結構物騒な道だな…ここに来るまでにグリーンサーペント、マーダーベア、コカトリスの群れ、ポイズンリザード…挙げ句の果てにワイルドアンガーボアだぞ」
指を折りながら数えていく。
「どれも並大抵の冒険者じゃ太刀打ちできねぇ連中ばっかりじゃねぇか」
普通なら一種類遭遇しただけでも十分厄介な魔物ばかりだ。
それを一日二日でこれだけ遭遇している時点で、この街道の危険度は相当なものである。
「でも、おかげで素材もたんまりですよ!」
薫は上機嫌でマジックバッグをぽんぽんと叩きながら満面の笑みを浮かべる。
「次の町で換金すれば、当分軍資金には困りません!」
商人らしい発想だった。
二人の話が耳に入ったゴリオンが不思議そうに首を傾げた。
「ん?そりゃ物騒じゃろう。今通ってる道がドワーフ国まで最短じゃが、一番危険なルートを通っておるんじゃからな」
まるで当たり前のことを言うような口調で言い放った。
「…は?」
新見たちの動きが止まる。
ゴリオンは気にせず続ける。
「それにドワーフ国まですぐじゃから、どこの町にも寄らんぞ」
一瞬の沈黙ののち
「「えぇぇぇぇぇっ!?」」
新見とゼノン、そして薫の叫び声が林道に響いた。
ゴリオンはその叫び声が上がると同時に慣れた動作で両耳を塞いでいた。
「なんじゃ、お前さんらの実力なら問題なかろう。薫は知らんが」
耳から手を離しながら平然と言う。
「え?あ?ちょ…」薫がリアクションに困るのを無視して続けるゴリオン
「それに今回は火急の用じゃ。多少の不便は我慢せい」
「それはそうだけど…先に行ってほしかったぜおっさん。見ろ、戦闘力のない薫が屋台の中に立てこもったぞ。」
と新見が屋台を指さすとそこには屋台の中でフードをかぶって避難する薫がいた。
「すまんすまん、次はちゃんと伝えるから堪忍しておくれ。」
とゴリオンは気にせず先を急いだ。
しばらく進むとゼノンはふと新見の後ろを振り返った。
相変わらず屋台は薫を載せて新見に引かれている。
しかも林道と言ってもほぼ獣道や悪路を進んでいるにもかかわらず、妙に安定していた。
しばらく眺めていたゼノンだったが、ついに疑問を口にする。
「ねぇ、そういえばさ」
「ん?」
「なんで屋台引きながら移動してるの?アイテムボックスに入れればいいじゃない」
極めて当然の指摘だった。
実際、荷物を収納できるスキルがあるのだから、わざわざ引いて移動する必要はない。
しかし新見は苦笑いを浮かべる。
「あー、それでもいいんだけどさ」
そう言いながら屋台の取っ手を軽く叩く。
「道中は確かに楽になるんだよ。でも取り出す時が面倒なんだ」
「…面倒?」ゼノンが首をかしげる。
「アイテムボックスとかアイテムストレージって、収納した屋台を収納前の状態のままポンと出せるわけじゃないんだよ」
「へぇ…」
「だからアイテムボックスから出すとバラバラで出てくるからもう一度整理しなおさないといけないんだよ。しかも結構いろんなものがあるからいちいち設置しなおさないといけないから融通が利かないんだ。」
「へぇ…大変ねぇ。」
「あと、この屋台自体も軽量化されてるし、何より…」
話が脱線して聞いてもいないのに屋台のこだわりポイントを熱弁しだしたのでゼノンは話半分しか聞いて適当に相槌をしてやり過ごしていた。
二日後。
鬱蒼とした森の中を延々と進み続けた一行は、ようやく獣道を抜け出していた。
足元には明確な轍の跡。人や荷車が定期的に通っている証拠だ。
それを確認したゴリオンが満足そうに頷く。
「みんな、待たせたの」
そう言って前方を指差した。
「この道に出れば、もうドワーフ国は目と鼻の先じゃ」
一行は足を止める。
ゴリオンの視線の先、森の向こうには異様な光景が広がっていた。
巨大な山のような霧がまるで山そのものが雲に飲み込まれているように形作っていた。
「あれが…霧の洞窟…」
ゼノンが小さく呟きながら目的地が近いことを実感していた。
それをよそに新見や薫がぞろぞろと出てきた。
「いや~道中の新種の巨大毒リスが出た時はさすがに焦ったわ~」
森の中で突然現れたあの魔物のことを思い出した新見。
リスの姿をしているくせに体長が三メートル近くあり、しかも爪にはあからさまな色で猛毒持ちだった。
さらに木々を飛び回るため非常に捕捉しづらい。
正直、ワイルドアンガーボアより面倒だった。
薫も同意するように頷く。
「そうですね」
討伐証明として回収した巨大な毒爪と尻尾をマジックバッグへ収納しながら続ける。
「待ち伏せ作戦でまさか屋台を盾代わりに使うなんて…そのおかげで一気に距離を詰められたのが大きかったと思います…」
毒爪で攻撃するため突撃してきたところを新見が咄嗟に屋台を前面に押し出し、攻撃を防いだところでゼノンの氷魔法で動きを封じ、その隙に脳天にゴリオンの渾身の一撃が決まったのだった。
「いやー、とっさのことで屋台を盾にしちゃったけど流石エルダートレント製の屋台。今のでも全然傷一つついていないや。」
新見が屋台を撫でながら言うと
「当然じゃ、その程度で傷つくほどやわな作りにしとらんわい」となぜか胸を張るゴリオン
「え、エルダートレント製なんですか…この屋台…」初めて屋台がエルダートレント製と聞いた薫。
「おう、贅沢にまんべんなく使っとるわい」とゴリオン
それを聞いた薫はざっと計算すると屋台の値段が軽く豪邸が建てる値段になろうとしていることに気づくと青ざめながら新見を見ていた。
その価値観に誰もツッコまなくなったあたり、一行もだいぶ毒されてきているのかもしれない。
そんな他愛もない会話を交わしながら、一行は霧の山へと続く道を歩いていく。
ドワーフ国は、もうすぐそこだった。
薫は商団に紛れて移動しながら生活していたので戦闘力はほとんどないですが、
実は後にとあることに気づくのでそのくだりについてはもうちょっと先の話になるかと思います。




