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帰れるまではラーメンの屋台引こうとする元勇者  作者: 白湯のお湯割り
5.新たな旅立ち

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5-4 ゴリオンの様子が…

五月病との闘病生活はきつかったです。

が、今月なにかと忙しい…繁忙期はどうなることやら…

レシピを貰ったミハイルとオッドが時間をおいて依頼元の貴族への対応をしていた頃。


新見たちの屋台は、すっかり自由広場の目玉となりつつあった。


営業スタイルは一日営業したら次の日は仕込みのために休む形の隔日営業。


と言うのも営業にかかりきりになると同時進行で仕込みができる時間が取れなくなってしまうことに悩んでいたところ

「スープとか仕込みを扱う屋台なら一日おきの営業は別に普通じゃぞ。」とゴリオンの鶴の一言でこういった形になった。


実際こういう営業でも文句を言う客は皆無だった。


異世界生活が割と長い(一部記憶喪失)新見、ゼノン、薫の三人だがいまだに知らない常識があるものだと感心していた。


最初の頃は薫とゼノンは、営業終了後には完全に(リビングデッド)だった。


特にゼノンはなど、接客経験のないので助っ人ドワーフのサポートをしながらも慣れない作業をした結果、


「もう無理…動けない…」

などと言いながら、その場で力尽きる始末。


薫も薫で、

「ラーメンってこんな重労働だったんですね…元の世界に帰ったらちゃんと感謝しよう…」

と、魂が抜けた顔で呟いていた。


そんなことを言いながら二人は、閉店後はドワーフたちに担がれて帰還するのが日常になっていた。


がしばらくすれば人間(?)慣れるもので

ゼノンは助っ人ドワーフのサポートありきだがオーダー取り終わった後に提供までスムーズになり、薫は裏方担当として皿洗い、マジックバックを利用した在庫補充、そして時折、新見の補助。と言う立ち位置を決めながら成長を遂げ、わずか数日で営業後は自力で寝床まで戻れるまでになっていた。


そして、ゴリオンは主に、列整理や護衛役を担っていた。


人気店になれば当然、人が増える。人が増えれば問題のある人も比例するように増える。


時には割り込み。


時には酔っ払い。


時には喧嘩の仲裁。


そういった厄介事に対し、「おい、何してる」ととてつもない低く響く声をかけたとたんピタリと止む。

人一倍厳しく腕っぷしもあるゴリオンの一睨みは、抜群の効果を発揮した。


新見(俺からしたらただの食いしん坊のおっさんなんだけどな)

薫(私も素の彼を見るまで信じられなかったですけど、私が昔聞いたゴリオンさんの通り名、”鬼のゴリオン”ですよ!!)


”鬼”の睨みが聞いているのかここ最近は屋台の列に並ぶ客の治安はすこぶるよくなっていった。


が、最近そのゴリオンの様子がおかしかった。

ふとすると遠くの一点を見つめ、落ち着かない様子でそわそわしているのがわかる。


仕事自体は、いつも通りきっちりこなすが、どこか上の空といった感じなのだ。


営業後。


新見が小声でゼノン達に話しかける。

「ねぇ…ここ最近のおじさまなんだけど…」

「あ~わかる?なんかどっか上の空って感じ?だよなぁ?」

流石に気付きだしてくる一行。


「ちょっと何かあったか聞いて来てくれない?支障はないとはいえみんな気になってしょうがないのよね」

「え?なんで俺?」と戸惑う新見。


「だって、そういうプライベートっぽい質問はあんたが最適任だってドワーフたちが…」とゼノンが後ろのドワーフ達に目をやると静かにペコペコしまくるドワーフ達がいた。


「あ~確かにお前さんたちじゃぁ聞きづらいよな…(上下関係が厳しいため)わかった。ちょっと聞いてみる。」

「お願いね。」そう言うとゼノンはドワーフと一緒にそれぞれの宿泊場所に移動した。



その夜。


新見は、作業台で安酒をちびちび飲んでいるゴリオンへ歩み寄った。


「なぁ、おっさん」

「ん?なんじゃいこんな時間に、珍しいのぅ」と茶化すゴリオン

「何かあったのか?」新見がそう聞いた瞬間、ゴリオンの手が、ぴたりと止まる。


「…なんじゃ急に藪から棒に」

「みんな気づいているぞ。ここ最近おっさんがどこか上の空だって。」

新見は率直に言った。


「む…」

ゴリオンは露骨に目を逸らした。


「何でもない、ってわけないな。顔に出てるぞ。」

「むぅ……」


しばらく黙り込んだあと、ゴリオンは、観念したようにため息を吐いた。


「…実はなそろそろ届くはずの調味料が、届かんのじゃ」


「はあぁ?」

新見は首を傾げる。


「前に”そろそろ頃合い”といったじゃろ、あれは調味料が少なくなってきたからそろそろ届く頃合いのことじゃったんじゃが…」

(あー、屋台作るときにテスト用のラーメン食い終わったころだったっけ?何か言ってた気がする)


「いつもなら、もうとっくに届いておる頃なんじゃが、一向に来なくての…心配で仕方なかったんじゃ」

と白状した。


「なるほどね、理由は分かったけど遅れるなら遅れるで何か連絡とか来そうだけど」

新見は当然の質問をすると

「そうなんじゃ遅れるなら必ず何かしらの知らせがあるはずなのじゃが全く音沙汰がないのじゃ…」

ゴリオンは即答した。

「なら、こちらからの連絡は?」

「とうの昔にしておるがうんともすんともじゃ」

「あー……」


新見は納得したように頷く。

「でもそこまで心配することか?」

「そりゃそうじゃ!なんてったって届く予定の荷物の中には、“醤油”もあったんじゃからそれに…」

そうゴリオンがこぼすと


「…は?」


「ラーメン作りにも役立つじゃろうと思って、多めに頼んでおいたんじゃが……」


「ちょ、待て」

新見が身を乗り出す。


「今なんつった?醤油って言った?」


「言ったぞ?」


「確かこの世界の醤油は貴族御用達の高級品で普通の店頭では買えないんじゃ…」

と興奮気味にゴリオンに詰め寄るが


ゴリオンは、きょとんとしていた。

「…何を言っとるんじゃ?そもそも醤油は、ドワーフ国が生産元じゃぞ?」


「え?」

新見が固まる。


「醸造所に知り合いがおっての」

ゴリオンは普通に続ける。

「昔からの付き合いじゃ。“お中元”も送り合う仲でな」


「お中元」


思わず復唱する新見。


(この世界、お中元あるのか……)


妙なところでカルチャーショックを受ける。

「じゃから、いつもなら足りなくなれば送ってもらっておるんじゃが…」


ゴリオンの表情が曇る。


「今回は、その知らせどころかなにも連絡がない。こんなことは初めてじゃ」

「……なるほどな」


新見も、ようやく事態の重さを理解した。


「なら現地に行って確認しよう!」

「は?」今度はゴリオンが新見の発言に戸惑いの表情を見せる

「ドワーフ国だよ!ついでに何があったのかも気になるし」少々興奮気味の新見。


「お前さん……」

ゴリオンは少し驚いた顔をしたあと。

ふっと笑った。

「……そういうところ、ほんとお人好しじゃの」


「うるせぇよ」

そんなやり取りが更けた夜にかわされたのだった。



Q:異世界生活長いのに何でこの習慣知らないの?

A:ご自身だって自分の住んでいる県の習慣を全部ご存じないでしょう?

知ってそうで意外と知らないものなのです。

そんな感じなのです。

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