【73】教会建てたら女神様に呼び出されました
「さあてっと! こんなもんかな」
あと三日で、ラングスチア皇都でセイワ共和国の王太子と、カミシロさんに会うことになる。
それまでに俺は冒険者ギルドと教会を建てることにした。
俺の隣にはペロとフィオナさんがいる。
出発するまでに、家族でのんびりと過ごす予定だ。
まずはコンクリートの堅牢な作りの冒険者ギルドを兵舎の横に作った。これで、ならず者もすぐに対処できるだろう。
「うむ、走るスペースや、昇級試験を、行える大きな広場もあるし、いいのではないか?」
ペロの言葉に俺は頷く。
クリスさんや騎士達に聞いたところによると、肉を解体したりする場所と必要らしいので、敷地内に解体する小屋も作った。
「うん。これで、冒険者が来てくれるいいな」
「……ナツキさん。貴族が泊まるホテルとは別に、宿屋を作った方がいいかもしれないですわね。雰囲気が違うので、トラブルになるかもしれないわ」
その言葉に俺はハッとした。
「確かに。今作っちゃいます」
俺は、スキルAIに、全室ゲストルームのマンション……ビジネスホテルが作れるかどうか確認する。
すると、頭の中に
『大丈夫ですよ。建てますか?』と表示されたので、YESを選択する。
その瞬間、ゴゴゴゴゴ! と音がしてビジネスホテルが二つ建った。
どうやら最初に指定すれば一気に何棟から建てられるらしい。
「まあ、これで安心ですわね。次は教会を建てましょうか」
そう言われて街の真ん中に、教会を建てた。
教会なので、真っ白の塔のようなお洒落な建物にしてみた。
「もう少しで皇都で会談があるから、せっかくだから皆でお祈りしておきましょうか」
別に何かの宗教を信仰しているわけではないが、何となくそうしておいた方がいい気がした。
フィオナさんとペロと教会の中に入ると、そこは静謐な空気で溢れていた。
吹き抜けの講堂がなんだかとても落ち着く。
ふと上を見たら十字架があった。
この世界でも祈る時に十字架を持つというのは何だか不思議な感じがする。
そっと手を合わせたその時だった。
ふわっと身体が、浮き上がった気がする。
「ようやく教会を建ててくれたのねっ!」
その声で目を開けると、俺はふわふわの雲の上にいて、転移してくる時にスキルをくれた女神がいた。
「あ、どうも。ご無沙汰しておりますー」
俺が挨拶すると、女神が嬉しそうに笑った。
「貴方ダラダラしたいとか言うから、本当に何もしないつもりかと思ったけど、なんだかんだで頑張ってるじゃないっ! 貴方のおかげで、私も今季はボーナスがいっぱい貰えてウハウハよー」
え、ボーナス? なんかこの女神様も妙に社畜っぽいんだよな。
スキルの表、エクセルだったし。
「それでね。お礼に何かしてあげたいと思うのっ! 何がいいかしら?」
そう言われて俺は考え込む。
「……そうっすね。今度セイワ共和国に異世界転移したカミシロさんって方と会うんですけど、なんかきな臭いんですよねぇ」
その言葉に女神は首を傾げる。
「カミシロ? カミシロって……あー!!!! 思い出した。確か”CEO”のスキルを選んだ人ね」
そう言われて俺は顔を上げる。
「CEO? それってどんなスキルなんですか?」
すると、女神は困った顔をした。
「流石にそれは困っちゃうのよね。貴方も私が貴方の能力全て他の人に言えちゃったら困るでしょ?」
あー、それは確かに。
「……じゃあ言い方を変えます。その人のスキルにかからないようにするにはどうしたらいいですか?」
すると、女神はパッと笑顔になった。
「それなら”スキル返し”の能力を貴方の身近な、ペロちゃん辺りにつけておくわ」
「えっ。いいんですか。ありがとうございます。ところで、あのカミシロ社長、少なくとも俺がこの世界にくる何年か前にもきてますよね?」
俺が尋ねると彼女は頷いた。
「そうね。日本とは時間の流れが違うから。向こうではたった数ヶ月でもこっちでは何年も経ってる可能性はあるわ」
まじか。じゃあ、やっぱりセイワ共和国がおかしくなった時期ってもしかしてこの人が来た時期か?
そう思った瞬間、ユサユサとフィオナさんに肩をゆすられた。
「カワグチ様? どうしましたか?」
いつのまにか、教会に戻ってきていた。
周りからはただ、ぼーっとしているように見えていたらしい。
心配そうに覗き込むフィオナさんから視線をずらし、ペロの方を振り返る。
すると、ペロがパアアアッと白く輝いた。
「な、なんですの?!」
すると、ペロの額に十字の紋章が一瞬出てから消えた。
どうやら夢じゃなかったらしい。
「どうやら、異世界転移してきた時に能力をくれた女神様が、ペロに相手のスキルを跳ね返す能力を与えてくれたみたいなんです」
「……まあ!」
とりあえず教会を建てておいて本当に良かった。
次はいつコンタクトを取れるかわからないが、これで一応女神と連絡を取る手段ができた。
「なんだか清々しい気分じゃわい」
そう言ってペロは尻尾をふりふりしている。
とりあえず、女神にも能力が貰えたのでセイワ共和国との会談は安心して臨めそうである。
「ペロ。一応カミシロさんと会う時、彼がスキルを使ったら跳ね返してくれ」
「わかった。やってみるわい」
こうして俺は会談に臨むことになった。
◇◇
「これはこれは、カワグチ殿。ずっとお会いしたいと思っていたんです」
数日後。
俺はセインさんとペロと一緒にラングスチアの皇都でセイワ共和国の王太子、それにカミシロさんと向き合っていた。
笑顔で握手を求めてくるカミシロさんに、俺は笑顔で返す。
「カワグチです。カミシロさんも日本からお越しになられたとお伺いしました。僕の事を知っていて下さるなんて光栄です」
すると、セイン様が俺の方をチラリと見た後、話を切り出した。
「ところで先日、我が国の属国であるヴァラにショッピングモールを経由して何人かセイワ共和国の方達が入り込もうとしていたけれど。あれは一体何なんだい?」
すると、セイワ共和国の王太子電話は驚いた顔をした。
「申し訳ありません。あの国と我が国は王妃として、我が国の姫が嫁いでから親密だったものですから。ショッピングモールが出来ても自由に行き来できるはず、と勘違いしておりました」
そう言ってニッコリと微笑んだ。
「そうなんだ。それではもうヴァラはラングスチアの属国なので、ルールも変わるから、気をつけて貰えると嬉しいな」
セインさんがそう言って笑うと、セイワ共和国の二人が目配せをし合った。
「本日私達がお話したかったのはその事についてなのです。確かにラングスチアとセイワ共和国は検査なしでは自由に行き来することが出来ません。ですが、いくら属国になったと言ってもヴァラはあくまでも違う国です。一方的にルールを決めるのは少々乱暴なのでは?」
そう言われて、セインさんは目を見開いたあと、好戦的に笑った。
「なら、逆に聞くけれど。其方の希望としては何を望んでいるんだい?」
すると、カミシロさんはニヤリと笑った。
「そうですね。カワグチさんと私は同郷です。出来たら、カワグチさんはセイワ共和国に来て頂いた方が彼も過ごしやすいんじゃないですかね? もし、彼がうちの国に来て下さるならラングスチアのルールを全面的に受け入れてもいいですよ」
そう言われて、俺はキョトンとする。
「あのー……。勝手に僕がセイワ共和国の方が過ごしやすいと思うと言ってますが、それは何故ですか?
僕、今十分満足してますし、結婚もしたので引っ越すことは考えていないのですが」
すると、カミシロさんがニヤリと笑った。
「それは、君が私の下で働くことになるからだ」
その言葉に俺とペロとセインさんは困惑してしまった。




