【70】黒幕が異世界人だと判明しました。
「セイン様。セイワ共和国を動かしていたのは、どうやら異世界人だったようです」
その日、俺達は、ヴァラのショッピングモールの近くにマンションをもう一棟建て、そこのゲストハウスに泊まった。
国境近くはトラブルが起こりやすいので大きな監獄がある。捕えた者達を大人数を収監できるようになっている。
セイワ共和国の九人は引き続きこの監獄に収監される予定だ。
ヴァラの王都への移送も考えたが、その際に万が一逃げられた方が面倒だという結論になり、結局その場に残ってもらうことになった。
『あー、そういうことだったんだ……すぐにわかったっていうことは、もしかして、君と同郷ってこと?』
そう言われて、俺は頷いた。
「そうですね。僕と同じ国出身の有名な社長でした」
『社長……?』
セインさんが訝しげに尋ねてきたので、慌てて説明する。
「僕の世界では基本的には国の直下の仕事をしている人達以外は、”会社”というものを立ち上がるか、”会社”に就職して働かせてもらってお金をもらうんですよ」
『ふーん。この世界の”商会”のようなものかな?』
「そうですそうです! 異世界の”商会”で、商会長みたいな立場だった人ですね。すごくやり手で有名な人で、本まで執筆している方です」
するとふーっとセインさんが溜息を吐いた。
『そっか。じゃあ敵は頭が良く立ち回りも上手いってことだね。オマケに、侵入して来た人達に、セイワ共和国の人間ではなく異世界人が直接支持を出していたっていうのも気になるかな。とりあえずわかったよ。密偵の魔導士たちに引き続き探りを入れるように支持を出しておくね』
「わかりました」
俺が魔道具を切ろうとした時だった。
『あ、そうそう。明後日サール君がアルカディアに来るから。駅を作る場所や、構想を練りたいんだって。もてなしよろしくね』
そう言って、セインさんが電話を切った。
すると、隣でソファに寝そべっていたペロがぴょこんっと耳を立てた。
「終わったかの?」
「うん。明後日サールさんが来るんだって。ペロは会うの初めてだっけ」
確か魔導塔に行ったとき、フィオナさん達とフォンティーヌ領に行ってたんだもんな。
「そうなのじゃっ! 会うのが楽しみじゃ」
そう言って、ペロはバリバリカレー煎餅を食うと、再び丸くなった。
俺は窓の外を眺めながら、セイワ共和国と何事も問題が起こりませんように、と願った。
◇◇
「それじゃ、ソフィア王女。また何かあったら連絡下さい」
「お気遣いありがとうございます。一応あの後は何も起こりませんでした。よかったです」
次の日の朝、俺達はマンションのカフェテリアでクリスさんやヴァラの文官のセーラさん、ソフィア王女と一緒に朝食を食べていた。
本当はショッピングモールのファミレスで食べたかったが、誰に聞かれているかわからないからな。
「恐らく、最初の刺客が囚われて様子を見ているのかもしれませんね」
クリスさんはサンドイッチにかじりつきながら窓の外に見える、ショッピングモールを一瞥した。
「カワグチ様。本当にありがとうございました。遠いところまですみません……。」
そう言われて、俺は首を振る。
「いやいや! オープン初日に色々あって大変でしたね。まあ、セキュリティ機能が付いてるんで、今回と同じように守ってくれる筈です。そこまで心配しなくて良いかと思います」
「わかりました。今後何かあったら、念の為連絡を取り合いましょう」
ソフィア王女の言葉に俺は頷いた。
「では、僕達も朝食を食べたら帰りますね。引き続きよろしくお願いします」
──こうしてこれで、一旦ヴァラのアルカディア襲撃騒動が幕を閉じた。
◇◇
「明日はサールさんが来る日か。なんだか目まぐるしいな」
アルカディアに帰ってきたばかりだというのになんだか最近バタバタしている気がする。
「まあ、ただダラダラしているよりはいいのではないか?」
ペロは面白そうに笑った。
「いや、俺ダラダラしたくてこの世界に来たんだけどなー……確か、王太子殿下も来るから領事館にも行くんだっけ」
そう言えば、リオネルさん達の家を改装してあげたけど、住み心地とか大丈夫なんだろうか。
そこらへんも明日不便なところがないか聞いておこうと思いながら俺は家に帰った。
──家に帰ると、フィオナさんが笑顔で出迎えてくれた。
「カワグチ様っ! おかえりなさいませ!」
そう言われて俺はふと真顔になる。
「……そういえば、今更なんだけど、結婚したのにカワグチ様って変じゃないですか? だって、フィオナさんもカワグチですよね?」
俺の言葉にフィオナさんがハッとした顔をした。
「確かにそうですね。ではなんとお呼びすれば……?」
「じゃあ”ナツキ”で」
「……ナツキ様。じゃあこれから敬語も少しずつ辞めましょうか」
なんだかフィオナさんは嬉しそうである。
「うん! その方が俺もめんどくなくていいかも」
「なんだか家族って感じがしていいのう」
なんとなく勢いでした結婚だったが、フィオナさんと、結婚して良かったと思う俺だった
◇◇
「うわー!! セレディオ様っ! めちゃくちゃ大きなショッピングモールがありますーー!!!」
アルカディアにやってきたサールさんは、ショッピングモールに大興奮だった。
「ああ、噂には聞いていたが、素晴らしいな。見たこともない異世界のものを買えると聞いている。それに、異世界の料理はとても美味いと公爵も太鼓判を押していた」
セレディオさんはサールさんを弟を見るような目で見てから口元を上げた。
ちなみに、今回アルカディアに来たのはナーミャの王太子のライオネルさん、セレディオ魔導士団長、そしてサールさんと護衛が何名かである。
「ではまず、役場にご案内しますね! あとでゆっくりとショッピングモールは見れますので楽しみにしていてください」
俺がそう言うと、二人は嬉しそうに頷いた。
「はい! 僕が日本に生きている頃になかった家電で、面白いものに出会えたら嬉しいですっ」
サールさんにそう言われて俺は頷く。
ちなみに今日はフィオナさんとペロで出迎えした。
「はじめまして、セレディオ様、サール様。私もナーミャで育ったのですが、お会いするのは初めてですわよね。妻のフィオナです」
その言葉にセレディオ様が目を見開いた。
「おお、フォンティーヌ公爵の……。そうか。色々聞いている。ナーミャでは大変だったかと思うが。その、こちらの生活では不便などはないか?」
どうやらセレディオさんは魅了騒動の話を知っており、心配していたらしい。
「……はい。カワグチ様のおかげで、この街はとっても居心地が良くて便利なのですわ!」
すると、セレディオさんはホッとしたように息を吐いた。
「そうか。よかったな。では、今はここで幸せに暮らしているのだな」
「はい、ナツキ様と結婚することが出来て、私は今とても幸せですわ。今日は宜しくお願いしますっ」
フィオナさんから「幸せ」という言葉が出て俺も嬉しくなってしまった。
「ワシも一緒に回ってやるからな! 感謝するんじゃぞ」
ペロがそう言うと、セレディオさんは笑いながらペロをわしゃわしゃと撫でた。
「ああ、宜しく頼む」
ペロも満更ではなさそうに尻尾を振ると、役場の方に駆け出した。
「こっちじゃ!」
俺達は、微笑みながらその後に続いた。
この後は、グレイスさんのいる役場に行ったあとは、リオネルさんのいる大使館に行き、ショッピングモールを見た後、ホテルに案内する予定である。
「荷物は僕のアイテムボックスに入れちゃいますね。長旅でお疲れのところ、さらに荷物も持っていたら体力を消耗しちゃいますからね」
「ああ、お気遣いありがとう」
サールさん達の到着と共に、いよいよ鉄道計画も本格的にスタートすることになった。
二日もお休みし申し訳ありません。とりあえず熱は下がりましたので、再開します。




