【67】スキルで祭り会場を作ったら、街が大盛り上がりした
「よいしょっと。ここでいいかな」
明日はサミュエル殿下の送別会だ。
明後日、彼はモニカ・ムスタフ侯爵令嬢の家に婿入りする為に、旅立つことになっている。
……ということで。
俺とアルカディアの文官さん、それにフィオナさんとペロ、そして、リオネルさんとユリアさんは、送別会の会場設営に勤しんでいた。
どうせなので、サミュエル殿下の送別会をアルカディアのお祭りと兼ねることにした。
アルカディアの空いている土地に、市民が交流できるような大きな公園を作ることに決めた。
グレイスさんが使っていい土地に印をつけてくれたので、まずスキルで石畳にする。
「よーし、いい感じだな」
俺がスキルを使うと、パアアアッと地面光って、土が剥き出しだった地面が石畳になった。
さらに、街灯、街路樹、花壇、噴水、生垣、ベンチを組み合わせていく。すると、美しい憩いの場になった。
イメージは札幌の大通公園である。
「よーし! 準備が整いましたよ! それじゃあ皆さん会場設営を、お願いします!」
俺がアイテムボックスからワンタッチタープ、それにアウトドア用の椅子、そしてテーブルを決まった場所に取り出し、配置していく。
ちなみに、これらの備品は全て、ショッピングモールで俺が購入した。
俺の合図に合わせて、文官達をワンタッチタープを組み立てた。
さらに椅子やテーブルを細かく配置していった。
屋台にはコンロやたこ焼き機、わたあめの機械などが配置された。
この日のために、文官さんやラミアタウンやエレインタウン、そして、メラノタウンから有志を募った。
屋台で働いてくれる人や、楽器を演奏してくれる人、踊ってくれる人などを募集したのだ。
すると、一週間弱という短い期間だったのにも関わらず、結構な人が集まってくれた。
どうやら住人達は、街を上げてのイベントに住民達は飢えていたらしい。
もちろん映画とゲーセン、それにテレビの今までに比べたら格段に娯楽は増えたらしいが、皆で何かやりたかったようだ。
皆で手分けしたので、会場設営やイベントに出てくれる人達との打ち合わせも、三時間程度で終わった。
明日はスタッフは朝から会場に集合して、午前10時に祭りが始まる予定である。
「皆、楽しんでくれるといいですわね」
「そうですね。今日は早めに寝ましょうか」
フィオナさんと二人で話していると、ペロが嬉しそうに尻尾を振った。
「明日のカワグチの出し物、楽しみにしておるわい」
──そう。実は、俺も住民達と一緒に、イベントスペースで出し物をすることになっていた。
「おお、頑張るわ。まあテキトーにやるよ」
言いながら、俺たちは会場を後にした。
◇◇
次の日。公演前は沢山の風船や飾りで彩られた。
役場近くの学校と、メラノ村近くの学校の子ども達が最初に祭りに訪れていた。
「うわー! このこのたこ焼きっていうの、すっごく美味しいよー」
そう言って、子ども達が大興奮で屋台のご飯を食べている。
なお、スタッフ達にはショッピングモールと役場で普段貰っているのと同じ給料が支給される。
俺はニコニコと子供達が歓声を上げるのを見た。
ついでに風船をフィオナさんとペロと一緒に配っていく。
「わー! 領主様! ありがとう」
「今日のご飯も領主様がご馳走してくれたんでしょ? 先生が言ってた」
言いながら子供達が尊敬の眼差しで見つめてくる。
うん、スタッフの給料は普通に出すだけだし、材料は全部ショッピングモールで賞味期限が迫った材料なんだけどな。
むしろ金がかかったのは、タープやテーブル、椅子である。
「全然いいよ。楽しんでね。ちなみに、後で俺がみんなが喜ぶサプライズをするから。楽しみにしていて」
俺の言葉に子供達が歓声を上げた。
「えー、なんだろー」
「領主様っ! ありがとう」
俺が子供達に手を振ると、フィオナさんが笑った。
「カワグチ様、子供達に大人気ですわね」
「ええ。まあ、子供は結構好きですからね」
そんな話をしていると、遠くの方からヴァイオリンのような弦楽器の演奏が聞こえてきた。
異世界にもどうやら似たような楽器があるらしい。
「いい演奏じゃな。昼メシを買ったら見にいくのじゃっ」
案外ペロは音楽が好きらしい。
俺とフィオナさんは視線を交わすと、屋台に昼ごはんを買いに行った。
ちなみに、アルカディアの住民達はショッピングモールの店で鍛えられたらしい。クレープやドーナッツ、それにたこ焼きや焼きそばなど、どの屋台で料理を買っても普通に美味しかった。
弦楽器の演奏は皆、なかなかの腕前だった。
中でもまだ10歳だという女の子の演奏が素晴らしかった。
「あの子、すごいなー。どこの村から来た子だろう」
俺の呟きにフィオナさんが笑顔で答える。
「確か、エレイン村からだったと思いますわ」
「ふーん、独学であれだろ? ちゃんと学んだら一流になれるんじゃない?」
すると、フィオナさんが含み笑いをした。
「では、王都のラングスチア音楽院への推薦状をカワグチ様の名前で書いても?」
「あーいいよ。ついでにお金もよかったら出してあげて。ショッピングモールの金あるからさ」
俺はこの土地から天才が出る可能性にワクワクしてしまった。
◇◇
「カワグチ殿!」
演奏を見ていたら、サミュエル殿下とモニカさんに声をかけられた。
ちなみに、その後ろにはリオネルさん達もいる。
「おー、サミュエル殿下! 明日いよいよ出発ですね」
すると、彼は嬉しそうに笑った。
「ああ、僕達のために、こんなに大規模な祭りまで開いてくれて、本当にありがとう」
「いいんですよ。住民達も喜んでますし。それより、幸せそうで良かったです」
俺の言葉に、サミュエル殿下とモニカさんが目を綻ばせた。
「ああ。幸せだ!」
そう言われて、ホッとする。
ステージを見ると、弦楽器の演奏が終わっていた。
いよいよ俺の出し物の番である。
「あ、次俺なんで! ちょっと行ってきますね!」
俺がそう言って席を外すとサミュエル殿下が期待に満ちた目で頷いてくれた。
「はーい、皆さん注目ー!」
そう言って俺はステージ前で両手をかかげる。
すると、ゴゴゴゴゴっと音がして、街路樹が出現した。
「すごーい!!」
子ども達の歓声が上がる中、さらに俺は木を2本立てる。
『この3本の木をグミに変えますか? MPを15消費します』
すると、頭の中にこう表示されたので俺は頷いた。
──その瞬間。
パアアアッ
街路樹がキラキラと光って、色とりどりのグミになった。
「わぁあああ!! きれーい!!」
「領主様ー!!! これなぁにー?!」
そう言われて俺はニヤリと笑う。
「この三本の木は美味しいお菓子になりました! みんなちぎって持っていっていいですよー! あ、子供達が優先でーす」
俺の言葉に子供達がグミで出来た木に群がっていった。
ちなみに、大人にも大好評で、文官達が一生懸命グミを入れるための袋を配ってくれた。
ペロも嬉しそうにグミをもぐもぐしている。
とりあえず、自分の出し物が皆に喜んで貰えて、ホッとする俺だった。
◇◇
祭りは大盛況で進み、夕方になると美しいドレス姿のモニカさんとサミュエルさんが礼服で登場した。
ステージの上を皆でフラワーシャワーを投げて二人を祝福する。
その姿はさながら結婚式のようだった。
「サミュエル殿下ー! ムスタフ領でもがんばってねー」
「モニカ様ー! 素敵ー!!」
皆に祝福されながら、二人は嬉しそうに手を振った。
……良かったな。サミュエル殿下、モニカさん。どうかお幸せに。
そう思いながら俺とフィオナさんも手を振る。
「……落ち着いたら、俺達もちゃんと結婚式しましょうか」
「ええ、そうですわね」
こうして、サミュエル殿下は皆に祝福されながら、無事ムスタフ侯爵家に婿入りすることになった。




