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スキル『マンション』で異世界無双 〜不労所得で一生ダラダラします。  作者: 間宮芽衣


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【66】帰ってきたら街がさらに忙しくなっていました


「カワグチ様っ! フィオナ様っ! お帰りなさいっ!!」


 次の日。俺たちはタロウに乗ってアルカディアに帰った。


 フィオナさんとペロと、役場に業務の引き継ぎで行くと、思いの外大歓迎されてしまった。


 ……ちなみに本当は俺の仕事なのにフィオナさんに事務仕事を押し付けている自覚はある。なので、どんなことをやるのかくらいは、きちんと一緒に聞こうと思っている。


 フィオナさんが倒れた時くらいは流石に俺がやるべきだしね。


 俺達はグレイスさんと一緒にカフェテリアで引き継ぎすることになった。


 なんだかんだ言って、やっぱり自分の住んでいる街は落ち着く。


 ペロはドリンクバーが嬉しいのか、役場のペロ専用のお皿でジンジャエールをがぶ飲みしている。


「僕達の不在中、困ったことはありませんでした?」


 俺が尋ねるとグレイスさんは頷いた。


「困る……というほどのことはないですね。ただ、ペロモールが思ったよりもずっと人気がありまして。移住希望者が殺到しております。また、あまりの人気ぶりに、ラミア、エレインタウンに住むショッピングモールで働く者達が、てんやわんやになっていますかね」


 心配になって俺は思わず顔を上げる。


「え。人、増やした方がいいですかね」


 すると、グレイスさんは首を捻った。


「……とはいえ、品出しなどは特になく、日付が変わると店内もカワグチ様のスキルのおかげで自動で清掃はされるのですよ。私は今の人数が妥当かと思っています。オペレーションを今後うまく整えて行く予定です」


 その言葉に俺とフィオナさんはホッと息を吐く。


「そうですか。新しく来たメラノ村の人達は馴染めてます?」


 すると、グレイスさんは頷いた。


「ええ。ですが、カワグチ様の作ったスカイファームタワーの性能が良すぎて、やることがあまりなくなってしまったと言っていました。若者などはスーパーやショッピングモールで働いてみたいと言っている人達もいます。今調整しているところです」


 俺はその話を聞いて、酒場のことを思い出した。


「そういえば、アルカディアって酒場がないですよね。今の所、ショッピングモールでも飲めますけど、出来たら、大人だけで楽しみたい人たちもいるとは思うんですよね。そろそろ働いている人達も増えてきましたし、娯楽も必要かなって。……どう思います?」


 すると、グレイスさんも頷いた。


「確かにそれはそうですね。適度に発散できないと、犯罪なども起こりやすくなってしまいますし。ただ、場所を考えないと、一気に治安が悪くなってしまいますからね……」


「学校から離れてるので、ショッピングモールの方に酒場を作るのはどうでしょう…と話していたんですわ。グレイス様はどう思われます?」


 フィオナさんがそう言うと、グレイスさん顎に手を当てて思案し始めた。


「確かに今の状況なら、それがいいかもしれないですね。……ただ、近々恐らく冒険者、商人、そして、教会あたりが絶対に色々言ってくると思うんですよね。今の所はまだ具体的に話はきていないのですが」


 その言葉に俺は思わず目を見開いた。


「色々言ってくる……っていうのは?」


「ギルドや教会を建てろ……という催促ですね。まあ、もちろん国を通してですが。


 ──そうなってくると、私は飲み屋は冒険者ギルドの近くが妥当かなと思うんですよね」


 言われてみれば、確かに漫画などのファンタジーものの異世界では、冒険者ギルドの中に酒場があることが多い気がする。


「なるほどねー。……でも、いずれどうせ建てなきゃなんないなら、もうギルドや教会も建てちゃってもいいかもしんないですね。グレイスさんの方からセインさんに問い合わせて貰えますか? それから色々建てる場所とか決めますわ」


 街はどうやら、さらに発展していくことになりそうだ。


「わかりました。……それでは前置きが長くなりましたが領主の業務の引き継ぎを行います」

 

 ちなみに、領主の業務は思ったより結構簡単だった。


 まあ、俺が会社員だったからと、文官さん達の方で大分巻き取ってくれたからもあるだろうが。


 基本的には起案されたものに対してゴーサインを出すかどうか判断し、よくわからなければ確認するといったものだった。


 結局この作業なら週に三日程度で何とかなりそうだという結論にいたった。


 ──ということで、フィオナさんは週に三日、役場に通うことになった。


 本来は領主は、自分の邸の執務室で作業を行うらしい。


 だが、うちはマンションなので、オフィスに通った方が作業に集中出来るだろうという判断になった。


「……フィオナさん、なんか仕事押し付けちゃってすみません……」


 俺が謝ると、フィオナさんは口元を綻ばせた。


「カワグチ様が建物を建ててくれているからこの街は回っているのですもの。事務作業まで出来ないというの当たり前ですわ」


 そう言ってもらえてなんだか安心してしまう。


「ありがとうございます……」


「とりあえず、何があったか……などは、領主はカワグチ様なので、きちんと共有するように致しますね」


 こうして、領主の事務作業問題もフィオナさんが引き受けてくれたお陰で、なんとか解決することができた。


◇◇


「はー、なんか、疲れましたね」


 引き継ぎ作業が終わり、フィオナさんとペロとコンビニ飯を買った。今はそれを家で食べて、ドラマを見ながらだらだらしているところだ。


 ちなみに、フィオナさんは韓国ドラマにどハマりしているらしい。


 ドラマを見ながら食べる醤油煎餅と、緑茶が疲れた体に染み渡る。


 ドラマの中でヒロインが、フライドチキン店で働いてるヒーローに、ドン引きするほどキレて怒鳴りつけていた。


『最低っ! 追いかけてもくれないのねっ! 貴方がそんなに冷たい人だと思わなかった』


『待ってくれ! チキンを揚げ終わるまでせめて待ってほしい』


ヒーローが困った顔で黙々とチキンを油から取り出していく。


『私よりチキンが大事なのっ?! ひどいわ』


(……ひどいのはこのヒロインだわ。揚げ物してる時は、せめて、責めるのをやめてやれよ)


 心の中で俺がツッコミを入れていた時だった。


 ピンポーン!


 インターホンが鳴ったので、慌ててテレビモニターを覗き込む。すると、リオネルさんと、彼の婚約者のユリアさんだった。


 俺は慌てて玄関のドアを開けた。


「リオネルさん、どうしましたか? 確か、ユリアさんの実家に挨拶に行ってたんじゃなかったですっけ?」


「ああ、すまないな、突然尋ねて。先程帰ってきて、お土産を持ってきた」


 そう言われて俺は目を見開く。


 ……やべ。俺、忙しくて何もお土産、買ってきてないわ。


「ありがとうございます。おーい! フィオナさーん、ペロー。リオネルさん達がお土産持ってきてくれましたよー」


 すると、フィオナさんが驚いた顔で立ち上がった。


「まあ。ありがとうございます。良かったら上がっていきますか?」


「いいのか? ではお邪魔する」


 二人をリビングに通して、俺はとりあえず家にあったチョコパイとコーヒーを出した。


 ちなみにお土産は、クッキーと紅茶と飴玉だった。あとでゆっくり頂こうと思う。


「それにしても、フロアごと改装したのだな? すごい立派になっていてびっくりした」


「ええ。結婚したんで。……あ、リオネルさん達の部屋も良かったらあとで改装しましょうか?」


 そう言って、俺はお土産を買ってこなかったことをごまかした。


 すると、リオネルさんとユリアさんは恐縮しながらも嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。


「……まあ!」

「いいのか?」


 俺はドヤ顔で頷いた。


「ええ。マンションを拡張するのと、大使館に住むスペースを作るのだったらどっちがいいですか? リオネルさんのところのフロアは他に人が住んでますもんね。拡張するなら、ユリアさんの今滞在してるケーキ屋のあるマンションになります。丁度婚活にきていた令嬢達もごっそりいなくなりますし」


 すると、ユリアさんが、「そうですわね、選べるのであれば大使館がいいですわ」と言った。


「……そうだなぁ。それなら、大使館の方に家を作ってもらってもいいだろうか」


 そう言われて、俺は頷く。


「わかりました。あとでみんなで大使館に行きましょうか。……そういえば、サミュエルさんっていつモニカさんの実家に婿入りするか、知ってます?」


「ああ、あと一週間後と言っていた」


 リオネルさんの言葉に俺とフィオナさん、そしてペロは顔を見合わせる。


「……それなら、せっかくだから送別会しましょうか」


 その言葉に全員が頷いた。

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