【65】王都にコンビニ建てたら人が殺到しました
「ここに作ろうと思うんだよね」
ライオネルさんと公爵に案内された場所は、以前ナーミャに来た時に、ペロと串焼きを食べた場所の近くだった。
流石は王太子殿下というべきか、後ろにはずらりと護衛の騎士が並んでいる。
ちなみに、その奥には、ちゃっかりと魔導士団長のセレディオさんと一緒にサールさんまでついてきていた。
俺がチラッとサールさんの方を見るとブンブンと手を振ってきた。
そんな中、ライオネルさんは俺に自分の考えを語り出した。
「まあ、コンビニの買い物客はきっと裕福な平民と貴族が多くなるのかと思うのだが。カワグチ殿の作るコンビニには防犯機能がついてると聞いた。セイン殿下がチラッと前に教えてくれてな。万が一市民が危ない目に遭った時はここに皆逃げ込めるとなると、皆安心感があるだろう? ──それに、騎士の仕事の手助けになるしな」
確かにそれは言っていることに一理ある。
そういえば、日本にも「見守りの家」的なところがあったかも。
地域ごとに小学生が変質者から逃げ込めるような場所なんだよね。
俺の実家の近所の駄菓子屋もそうだったし。要はコンビニに防犯と商売、両方兼ねさせる……ということか。
ナーミャとラングスチアは治安がかなりいいらしい。だが、それでも時々変質者や人攫いも出るらしい。
「我が騎士団でも、加害者を追いつめるのには限界を感じておりまして。それなら被害者が逃げ込める場所がある方がいいと前から思っていたんです」
騎士団長らしき男性がそう言って頭を下げた。
確かに、逃げ込める場所があれば、安全の確保と同時に、追いかけてきた加害者を特定しやすい。
「わかりました。じゃあここに建てましょうか。人払いをお願いできますか?」
俺の言葉に一斉に騎士団のメンバーが動き出した。
「はーい!! みなさん! 下がってくださーい」
王太子であるライオネルさんやフォンティーヌ公爵が来ているのもあり、結構野次馬が集まっている。
「それじゃ、いきますよー」
俺は両手をかかげる。
今日はスキルをサイレントモードにしてきたので、タブレットが出ない代わりに頭の中にこんな文字がよぎる。
『スキルポイントを5消費して、テナント(コンビニエンスストア)を生成しますか? MPを10消費します』
そのメッセージに俺が頭の中でYESを選択した瞬間──。
パアアアッとライオネルさんに指定された区画が白く輝く。
ゴゴゴゴゴ……!!!!
「なんだ?!」
「地震か?」
市民達が泡を食って逃げ始める。
すると、あっという間にコンビニがその姿を現した。
「ふぅー。出来ました!」
俺にとってはもうお馴染みとなった『ペロマート』のロゴ。──はじめてのペロマートナーミャ店が出来た瞬間だった。
ナーミャ店は結構大きなサイズのコンビニだった。俺の住んでるマンションのペロマートより一回り以上でかい。
ロゴは、アルカディアと同じオレンジではなく、ナーミャのホテルと同じ茶色だ。恐らく少し高級志向なのだろう。
「これは……!」
「なんと素晴らしい……」
騎士達が呆然としながらも、次々と俺のスキルを賞賛する。
ふと、サールさんの方を見ると、ぷるぷると震えていた。
「……本当にコンビニだ……」
そう言って泣きそうな顔をしている。
今すぐにも入って行きたそうにソワソワするサールさん。それをセレディオさんが必死で宥めている。
「それじゃあ中を案内してもらっていいかい?」
レオンハルトさんに言われて、俺はまず、彼とフォンティーヌ公爵を中に案内した。
「どうぞ。このコンビニは恐らく僕の住んでいるマンションのものよりも、少し高級志向のものです。もちろん平民向けの商品もあるんですが、ちょっぴりいい商品多いみたいですね。食べ物だと通常より高級なブランドものの食材をつかっていたりします。ショッピングモールが今のところナーミャに建てられないので、僕のスキルが高級志向の方がいいと判断したようです」
すると、ライオネルさんは満足そうに何度も頷いた。
「素晴らしいな。これはサールが焦がれるのも納得だ。おーい! セレディオ、サール、それにレオン。入っていいぞ」
ちなみにレオンというのはこちらの騎士団長の名前らしい。
「……僕までいいんですか?」
そう言いながらフラフラとサールさんがコンビニに入ってくる。
カゴを手に取ると、カッと目を刮目し、狂ったように商品を入れまくり出した。
「……納豆だ! おにぎりだ! 味噌汁だ! 漬物と梅干しもある!! うわ、漫画だ! 懐かしいっ」
そんなサールさんの様子をライオネルさんは微笑ましそうに見つめている。
「それではカワグチ殿。私にも、おすすめの品を教えてもらってもいいかな?」
俺が唐揚げちゃんとオニギリと、おでんと肉まん、そしてコーヒー、あとカップ麺のカレー味を薦めると、ライオネルさんは素直にそれを買ってくれた。
ちなみにセレディオさんは大量のお菓子をカゴに入れている。
「セレディオさんは甘党なんですか?」
俺が尋ねると、彼は首を振った。
「……私は、別にそこまで好きなわけではない。だが、魔導塔の者達にお土産に買ってやろうと思ってな。その他は、家族にもお土産だ」
……気遣いの紳士……!
どうやらセレディオさんはご結婚もされているらしい。
買い物が終わったあと、レオンハルトさんは外に出て叫んだ。
「皆も良かったら是非この『コンビニエンスストア』を体験して欲しい! 見たこともない品がたくさんあるぞ」
するとワッと歓声が上がり、市民やその場を歩いていた貴族が買い物を始めた。
──ライオネルさんのお勧めというだけあり、びっくりするほど人が殺到している。
こうして、ナーミャでもペロモールの一号店が無事オープンしたのだった。
◇◇
「はー……。なんか、人が多くて疲れたわ」
フォンティーヌ公爵家に帰ると、ペロとフィオナさんが出迎えてくれた。
ちなみに、クリスさんと公爵婦人とペロとフィオナさんは、フォンティーヌ領に行って求人を商人ギルドに出したらしい。そしてその後、みんなでちゃっかりスパに行ってきたらしい。
「うわー! いいなぁあああ!!!!」
思わずそう漏らす俺に、ベロが前足で励ますように背中をポンポンした。
「またいつでも行けるわいっ」
「そうですわっ! それにスパはアルカディアにもあるではないですか」
結局、五日間もあったのに、ホテルを建てて、戻ってきて、サールさんに会いに行って、謁見してコンビニを建てたら、明日帰る、という目まぐるしいスケジュールになってしまった。
せっかくナーミャまであいさつに来たのに……!
全然だらだらも観光も出来なかった。
「あー……。もう明日帰るのか……」
俺がぼやいていていると、フォンティーヌ公爵が慰めるようにこう言ってくれた。
「良かったら、夕食の後、これから皆で私がよくお忍びで通っている酒場にでもいくか?」
そう言われて、俺は顔を上げる。
「是非!! そういえば、アルカディアは飲食店でお酒は飲めはするんですけれど、本格的な酒場はまだないんですよねぇ」
すると、フィオナさんが楽しそうに頷いた。
「後々、そのような場所も作ってもいいかもしれないですわね」
「そうですね。でも、もし酒場を作るなら子供が少ない場所の方がいいかもしれないですね……。多分、治安も少し変化するかもしれないですし」
俺がそう答えるとペロがこう言った。
「……それなら学校もないし、兵舎も近いからショッピングモールの近くがいいかもしれないのう」
そう言われて俺は頷く。
「確かに。帰ってみたら、グレイスさんに酒場を作ることを相談してみようかな」
──ちなみに、フォンティーヌ公爵が連れて行ってくれた酒場は、貴族がお忍びで通うお店……というのもあり、オシャレであまり荒くれ者っぽい人もいない店だった。
「……昔我が家の使用人だった者達がやっている酒場でな。接客も他の店に比べてレベルが高いと自負している」
お酒の種類も多く、カクテルのような飲み物もあった。
俺は自分が思っていたよりも疲れていたのか、少し酒を飲むとすぐにほろ酔いになってしまった。
「あらあら、お疲れ様ですわ」
言いながらフィオナさんはニッコリと笑った。
俺達は結局一時間ほどで屋敷に帰った。そして、部屋に戻ると、俺はあっという間に眠ってしまった。




