【64】魔導列車計画始動、ナーミャ王都にコンビニ建てます
「こうしちゃいられませんっ! すぐ、一刻も早く団長に許可を取りに行きましょうっ」
そう言って、俺の手をグイグイとサールさんが引っ張ってきた。
「……いいですけど、そんなにうまく行きますかね? 下手したら、ナーミャの陛下か、王太子様から許可を取らなくちゃいけないんじゃ……」
すると、サールさんはクワッと目を見開いた。
「僕は!! 一刻も早く納豆と梅干しと米と味噌汁が食べたいんです!!」
──まあ、それは日本人として理解はできる。
「じゃあ行きますか」
俺達は部屋を出て魔導士団長とフォンティーヌ公爵を探しに行った。
二人はカフェテリアのようなスペースで談笑していた。
「おお、終わったか?」
そう言ってセレディオさんが笑顔で手を振った。
「はい。お陰様で。それでですね。団長! 実はお願いしたいことがあるんですが」
目をキラキラさせて言うサールさんにセレディオさんは後ずさる。
「……なんだ? なんだか嫌な予感がするんだが。とりあえず先ほどの部屋で四人で話そうか」
そう言われて部屋に戻る。
「──実は、僕達は同じ世界の同じ国の出身だったんです。それで……僕達の故郷は、この世界と結構食文化が違うんですよ。フォンティーヌ公爵はご存知ですよね?」
俺が切り出すと、フォンティーヌ公爵は頷いた。
「……ああ。確か、主食が米という白い食べ物だったな」
「ええ。それでサールさんが米を食べたいらしくて。それで、出来ればこの国にもコンビニを作ってあげたいと思ったんです。それで、その許可を取るためにラングスチアのセイン殿下に電話したんですよ」
すると、セレディオさんがなんとなく察したような顔をした。
「なるほど。それで? なんと言われたんだ?」
「実はセイン様がナーミャとラングスチアを結ぶ魔導鉄道を構想中らしいのです。で、その魔道鉄道の開発に、是非サールさんに関わって欲しい、とのことでして。ですが、サールさんはナーミャの方なので、コンビニを作る代わりにナーミャと同じ条件で仕事を引き受けて欲しいらしいんです。まあ、それにナーミャとラングスチアが鉄道で繋がれば双方にも利益がありますし」
俺が説明をすると、フォンティーヌ公爵が困惑した顔をした。
「確かにその通りだな。だが、そこら辺は陛下や王太子殿下と、きちんと話は進んでいるのだろうか」
その言葉にシーンと、部屋が静まり返る。
「──私は今のところ聞いていないぞ?」
ポツリと、セレディオさんがつぶやく。
「……もしかしたら、まだセイン様はナーミャにこの話をしてないかもしれません。でも、流石にラングスチアだけが負担するのはきついので、コンビニも作るし協力して欲しい、とこれから持ちかけるつもりなのかもしれませんね……」
すると、フォンティーヌ公爵が溜息を吐いた。
「そうかもしれないな」
「団長、仮に陛下にこの話をしたらなんて言いますかね?」
サールさんが尋ねると、セレディオさんは少し考え込んだ。
「……まあ、ラングスチアは友好国だしな。それに、私もアルカディアにはまだ行けていないが、物凄い評判になっている。実際、陛下も殿下も、ショッピングモールは素晴らしいと、絶賛していた。だから、この魔道鉄道の話をしたら、恐らく好意的に受け取るんじゃないか? もし、ラングスチアから持ちかけられたのに、明らかにこちらの負担が大きいなら、抗議するかもしれないが」
「じゃあ、大丈夫ですかね? ちなみに、ナーミャの陛下にすぐに確認は取れますか? 出来たら僕、せっかくナーミャに来たので、こちらにいるうちに、コンビニを作ってしまいたいのですが」
すると、フォンティーヌ公爵が申し出てくれた。
「私が連絡しよう」
言いながら、すぐに魔道具で連絡をし始めてくれた。
陛下も丁度魔道具にすぐに応答してくれらしく、結構長く話していた。だが嬉しそうな顔で公爵は魔導具を切った。
「……どうでした?」
俺が尋ねると彼は目を細めた。
「どうやら大丈夫そうだ。陛下も魔導列車は元々必要だと考えていたらしい。ラングスチアとは対等な条件で開発したい、と仰っていた。早速、今日これから、ラングスチアのセイン殿下に連絡をすると言っていた」
その言葉に俺とサールさんは頷きあう。
「……じゃあ!」
「ああ、とりあえず、私に陛下が折り返しをくれることになっている。ラングスチアの詳細を確認でき次第、コンビニは作っても大丈夫、だそうだ」
すると、サールさんが拳を握りしめて叫んだ。
「やったーーーー!!! じゃあ陛下から折り返しが来たら、王都にコンビニが出来るんですね?! 最高ですっ!!」
フォンティーヌ公爵は少し口元を綻ばせるとこう言った。
「──サール殿、故郷の味が楽しめそうで良かったな。とりあえず、今日は折り返しが来るかはわからない。折り返しが来たら、すぐに魔導塔に連絡する」
「はいっ! お待ちしていますっ」
何度も頷くサールさんの背中をポンポンっとセレディオさんが叩いた。
「もう少しだな」
「っはい!」
嬉しそうにサールさんは笑った。
◇◇
──次の日。朝起きて、フィオナさんとペロ、公爵夫妻とクリスさんと朝ごはんを食べていたときだった。公爵の魔道具に誰かから連絡が来た。
「……ちょっと話してくる」
ちなみに、朝ごはんはシンプルにシードルかワインとパンとチーズだった。その代わり昼を豪華なものを食べるらしい。
オリーブオイルにカリカリに焼いたパンを付けて食べるのは結構美味かった。
「おおっ! これは!! なかなかいけるのう!」
どうやらペロはチーズが気に入ったらしい。
暫くすると、公爵が満面の笑みで戻ってきた。
「ラングスチアとナーミャを結ぶ魔導鉄道計画が正式に合意された。取りあえず、フォンティーヌ領からナーミャ王都、そして、アルカディアの他に、通り道となる他の町を経由し、ラングスチアの王都に線路を繋ぐこととなった」
その言葉に、フィオナさんとクリスさん、そして公爵婦人が歓声を上げた。
「凄いわっ」
「ではますます栄ますね」
そんな三人を微笑ましく見ながら、俺は公爵に確認を取る。
「では、もう今日のうちにコンビニを建ててしまってもいいですかね」
「ああ。……ちなみに、陛下によると、出来れば停車する場所の一つ一つにカワグチ殿に店を作ってもらえたらいいな、という話になっているらしい。まあ、これは、セイン様から直接話があるだろう」
「あ、それは全然大丈夫ですよ。……そうですか。魔導列車ですかー。楽しみですね」
ドラゴンの数は限られてあるし、馬での移動はつらい。
──きっと、これから人々の暮らしが劇的に変化するに違いない。
「ああ、それでな。今日は、コンビニを建てる前に、陛下と王太子殿下にあってもらえないだろうか。そのあと、王都の王族の直轄地に店を立ててもらおうという話になっていてな。いいだろうか」
そう言われて、俺は頷く。
「はい、わかりました。でも、僕、この服で大丈夫ですかね?」
挨拶のため綺麗な格好はしてきたが、流石にこの国の礼服とは程遠い。
「大丈夫だ。私の服を貸そう」
公爵がそう言ってくれたので、俺はありがたく服を借りることにした。
ちなみにナーミャの国王と、王太子殿下に会うのはこれで二回目だ。
アルカディアのショッピングモールのプレオープンで会っているからだ。
あの時は慌ただしくてあまり話せていなかったが、今回はゆっくり話すことになりそうだ。
(まあ、リオネルさんのお父さんとお兄さんだからそんなに悪い人ではないだろう)
こうして、慌ただしく俺は王城へと向かうことになった。
◇◇
「おおっ! カワグチ殿!」
ナーミャの王城に行くと、国王陛下と王太子殿下は俺に嬉しそうに声をかけてくれた。
どうやら、プレオープンの時のことを覚えていてくれたらしい。
(うん、やっぱりリオネルさんの顔と似てるな)
そんな事を思いながら陛下の顔をチラ見する。隣の王太子殿下は温厚で、とても聡明な雰囲気を醸し出している。
「この度は、ラングスチアとの魔導鉄道の計画に合意してくださってありがとうございます」
「良い良い! 元々こちらでも構想していたのだ。──カワグチ殿にはリオネルがいつも世話になっているな。それに、コンビニまで王都に作ってくれるという話ではないか! これからどうか宜しく頼む!」
陛下はそう言ってニッコリと笑った。
「僕が主体となって魔導鉄道計画を進めることになる。改めて宜しく頼む。王太子のライオネルだ。この後、コンビニの建造する場所に案内するから頼むよ」
ライオネルさんも笑顔で握手してくれた。
「はい! どちらに建てるおつもりですか?」
すると、ライオネルさんは一泊置いてからこう言った。
「城下町かな。貴族街と平民街の間くらいに作ろうかと思っている」




