【52】学校作ってたらヴァラの王位の話になった
「さあてっと。ここらへんかな」
五日後にはサミュエル殿下も最終的にラングスチアとのショッピングモールの話や属国になるに当たって契約するために来る。
そして、二週間後にはいよいよ、ラミア村、エレイン村に続き、土砂崩れの被災地の最後の村人達が引っ越してくることになっている。
今度の村は人数が多いというので、俺は受け入れ準備を頑張っていた。
今はグレイスさんとペロとどこに何を建てるか最終確認していた。
(なんだか最近そこそこやる事が多いな……)
ヴァラの件はまだバタバタしているが、国の方でセイワ共和国の国境を塞いだこのタイミングで引き取るのが最善と判断したらしい。
ラミア村の村民は105人。
エレイン村の村民は326人。
そして、新しく入居予定のメラノ村から来る村民はなんと418人いるそうだ。
アルカディアの人口はいよいよ800人を超えることになる。
「そうですね。ここなら新たに400人以上住むスペースがあるでしょう」
グレイスさんの言葉に俺は頷きながらタブレットを起動させる。
………………………………
川口 ナツキ(28)
HP:480
MP:800
スキル:『マンション』『言語』『鑑定』『アイテムボックス』『通信』『物体移動』『公共物生成』『構成物変更』
レベル:4
スキルレベル:4
RC造マンション(テナント付)
スキルポイント:50
…………………………………
レベルが上がったおかげでスキルポイントの消費をせずにテナント付きマンションを建てられるようになった。
そして、『公共物生成』を選択するとこのように表示された。
…………………………………
Lv1:塀、柵、道路(石畳、コンクリート、れんが)、街灯、街路樹、エレベーター、看板、生垣、観葉植物、オブジェ、ベンチ、インテリアの変更
Lv2:橋、公園、噴水
Lv3:役場、図書館、病院、ギルド、兵舎
Lv4:学校
Lv5:保育園、老人ホーム(SP+5)
Lv6:???
Lv7:???
…………………………………
そう、俺達が作ろうとしてるのは学校と保育園だ。
前々からグレイスさんから要望があったのだ。
だが、今までスキルで保育園が作れなかった。だが、昨日レベルが上がっており、試しに見てみたらビンゴだった。
ショッピングモールの売上が入ったのが大きかったのかもしれない。
なんとなく体感では俺のレベルは建物を建ててお金が入ってくると上がっている気がする。
保育園と学校は隣り合わせで、役場の近くに一軒ずつ、そして少し離れたところにさらに一軒ずつ作ることにした。
本当はショッピングモールの近くに建てようか迷ったがやめた。
ショッピングモールの隣のホテルに国外からのお客様が泊まったり、兵舎が近くにありこれから犯罪を犯したものが収容されるので、子供が通う場所なので少しずらした方がよい、という話になったのだ。
「そのうちワシのトリミングできるところも作ってほしいのう」
ペロの言葉に俺は頷く。
「ああ。明日以降だな。──よし、それじゃ、ここに学校と保育園、作っちゃいますね」
そう言って、俺はタブレットを起動させて、天に両手を翳す。
すると、ゴオオオオオ!!!と地響きがして三階建ての可愛らしい保育園と、学校が出現した。
なんと、グラウンドや園庭までついている。遊具などもあり、子供が思いっきり身体を動かせそうな設備が揃っていた。
ペロは園庭を嬉しそうに早速走り回っている。
「おおっ! これはすごい」
グレイスさんが目を輝かせて喜んでいる。
中に入ると、保育園は一応階段の前にドアがついており、小さい子供は開けられないように配慮されていた。
「あ、見てください。ピアノや幼児用の小さい椅子なんかもありますよ」
俺の言葉にグレイさんがホッとした顔をした。
「良かったです。セイン様の方から王都の保育士を8人ほど、教師を5人ほど派遣して下さるとのことなので、お子様がいる家庭もこれで安心して働けますね」
(これくらいの人数なら、文官用のマンションの空き部屋で足りるな)
どんどん発展して行く街に俺はワクワクしてしまう。
メラノ村の人々が移住すふ一週間後にはいよいよ延期されていたショッピングモールのオープン日がやってくる。
観光する人達から色んな意見取り入れて、さらにいい街にしていきたい。
なんだかんだで俺はこの『アルカディア』という街に愛着が湧いてしまい始めたのだった。
◇◇
「セイン様、カワグチ様。今日は宜しくお願いします」
──五日後。予定通りヴァラからサミュエル殿下と国王陛下がやってきた。何人か護衛と実務にあたる文官も付いてきている。
俺たちは役場の中の一番立派な会議室で向かいあった。
ラングスチアからはセイン様とグレイスさんとグレインさんと俺。
そして──。
「──お父様っ!!」
会議室のドアが開きソフィア王女が入ってきてヴァラの国王陛下に抱きついた。
「おおっ、ソフィアか!」
嬉しそうに抱きしめる国王陛下にソフィア王女は泣きそうな顔をする。
「……お元気になられて本当に良かったですわ。もう金輪際おかしなものは食べないでくださいね」
すると、セイン様が声をかける。
「感動の再会中悪いけど、会議を始めさせてもらうよ。
では、まず属国になるにあたって我が国とヴァラが共同で運営するショッピングモールについてだ」
そう言ってセインさんが色々と条件を述べていく。
それをヴァラの三人が頷きながら聞いている。
ある程度今まで言っていた条件が出尽くした後だった。
「……では、これで全てですかな?」
そう言って国王陛下が契約書にサインをしようと羽ペンを持った時だった。
「いや。実はもう一つ、受け入れてほしい条件が出来た。だが、場合によっては受け入れがたい場合もあるだろう。その上で考えてほしい」
そう言われて、ヴァラの者達が不安そうな顔をした。
「──何ですか?」
ソフィア王女が訝しげに尋ねてきたのでセインさんが切り出す。
「王位を継ぐ人なんだけど──」
その言葉にヴァラ側に緊張が走る。警戒しているのが一目でわかった。
それはそうだろう。もしラングスチアの人間に継がせて欲しい、などと言われれば受け入れがたいだろう。
だが、気づかないようにセインさんが続ける。
「ヴァラは、サミュエル王子ではなくて、ソフィア王女に継がせたらどう?」
その言葉に部屋の中がザワザワと騒めく。
「なんていう事を……」
「サミュエル様! どうかお気を悪くなさらず」
気遣うような言葉が溢れる中、ソフィア王女は困惑した顔をし、サミュエル殿下は固まっていた。
──だが、やがてサミュエル殿下はふぅーっとゆっくりと息を吐きだした。
「……僕もそれがいいと思う」
その言葉に部屋がシーンと静まり返ったあと、家臣達が徐々にざわめき出した。
「我が国は、伝統的に男系継承ですぞ?!」
「なぜそんな事を仰るのですか!」
そんな家臣達を宥めながら、国王陛下が真剣な目でサミュエル殿下を見据える。
「サミュエル。今まで努力して王太子としての受けてきた教育が無駄になってしまうかもしれない。
──本当にいいのか?」
すると、彼は頷いた。
「僕は勉強をして覚えることは出来ても発展した考えを繋げていくのが苦手です。だが、それではきっと国民を守る事が出来ない。
認めたくはないが、僕にはあまり才能がないと思う。──その。妹と違ってすぐに人を信じてしまうし」
そう言って少し寂しそうに笑った。
「セイン様。僕としては受け入れたいと思います。もしソフィアが王位を継ぐ事になったら僕の扱いはどうなりますか?」
尋ねるサミュエル殿下の表情は真剣だった。




