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スキル『マンション』で異世界無双 〜不労所得で一生ダラダラします。  作者: 間宮芽衣


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46/61

【46】やってしまいました。


「──何故陛下が影武者であることを、見破った!?」

「一体どうなっている?!」


兵士達がザワザワと騒ぎ出した。どうやら俺達が『国王陛下が影武者である』という情報を握っているという事に驚いたらしい。


(このオッサン、影武者なのはわかるけど……誰なんだ?)


俺は戸惑いつつ、相手を煽ることにした。


「こんにちはー! こんな所からすみません。七日前に攻め込まれたアルカディアの領主、カワグチでーす! ──とりあえず、セイン様に何かあったら困るので念の為に安全なスペースを作らせて貰いました!」


隣ではペロも何故か一生懸命「ワシも! ワシもいるぞい!」とアピールしている。


「だから、攻めたのはうちではないと言っているじゃないですか! あまりいい加減なことを言うと、拘束させて頂きますぞ」


──この人は自分の保身の為に、アルカディアに残っているニッケルさん達を見捨てるつもりなのだろう。


叫ぶ宰相に俺は更に言い返す。

 

「では、ヴァラの国王陛下の服を着てそこにいらっしゃる方はどなたですか? この前、せっかくうちの領地でおもてなししたのに、ご本人じゃなかったなんて、悲しいなぁ」


俺はいつもの調子でヘラヘラ笑ってみせた。


イートインスペースではセインさんがゆったりとコーヒーを飲み始めた。もちろんわざとだ。


「カワグチ殿。あれは、セイワ共和国の外務大臣だ。『どなたですか』なんて失礼な事言っちゃダメだよ。それより、このコーヒーはなかなかレベルが高いね」


すると、兵士達はザワザワと騒めき出した。


「宰相っ!! 影武者がセイワ共和国の者、というのは本当ですか?!」


「あくまでも陛下の健康が戻るまで、国内の似た人間で誤魔化すというお話でしたよね?」


どうやら、内部でも情報に行き違いがあったようだ。


「うるさいっ!! いいから指示したように動け!」


宰相が目を血走らせながら叫んだ時だった。


「──やめろ」


サミュエル王太子殿下が我慢ならないとばかりに叫んだ。


 そして、コンビニの前に進み出て、頭を下げた。


「セイン・ラングスチア王太子殿下。──この度は我が国のゴタゴタに巻き込んで申し訳ありませんでした! 攻め込んだのは我が国で間違いないです」


すると、兵士達がザワザワと騒ぎ出す。


「どういうことだ?!」


「まさか、ニッケル様達が極秘任務で遠征に出たが…あれがそうだったのか?」


すると、サミュエル殿下が答えた。


「今までは国の一部のものしか知らなかったが、我が国は宰相殿によって、今セイワ共和国の言いなりになっている。──今回のラングスチアへの侵攻も彼の手によるものだ」


すると、兵士が再び驚いた声を上げた。


「なんだと?!」

「どういうことだ!!」


さらにサミュエル殿下は続ける。


「──皆の者。父上が伏せっているのは毒が盛られたせいだ! 権限を全て宰相に渡すと言う書類も偽造だった」


その瞬間、一斉にヴァラの兵達が武器を下ろし、宰相を睨みつける。


「っひ…!! 証拠は?! 証拠がないではないですか!」


宰相が叫ぶと、サミュエル王太子殿下が睨みつけた。


「ナーミャの高名な魔術師殿を探し当てた! 時間がかかったが、ようやくこの書類が偽物であると判明した! ──皆の者、宰相と影武者の男を捕えろ!」 


あっという間に兵達が宰相と影武者を押さえつけた。


(良かった…、とりあえずこれで、一件落着かな?)


──だがそう思った瞬間。


 影武者だったセイワ共和国の外務大臣が突然笑い出した。


「ははっ!!! 今だ! セイン王子を撃て!」


──その瞬間、けたたましく警報音が鳴り始めた。


ビー! ビー! ビー! ビー!


【管理人権限:テロリストの攻撃を検知。防犯レベル3作動。──緊急事態の為自動実行します】


 パアアアッ!!


「何だこの光は?!」


一瞬でコンビニの前にショッピングモールが攻め込まれた時と同じ膜が出現した。


パンパンパンパン!!!


──どうやらセイワ共和国の者が潜んでいたらしい。


 だが、全て膜に攻撃は吸い込まれていく。


バリアからは物凄い勢いで、触手が伸びていく。


 そして、あっという間にセイワ共和国の者を天井から三人ほど引き摺り出し、改めて影武者と宰相に巻きついていった。

 

(あ、天井壊しちゃったからあとで直さないと…)


すると、影武者が驚愕に目を見開く。


「何故! 何故暗殺者の場所がわかった!」


俺は敵が呆然としている隙を狙って、武器をマシュマロに変えた。


(クッキーだと、屑が落ちちゃうし、チョコばっかりだと飽きるからな)


「なんだこの白いネバネバしたものはぁあああ!!!」


敵が絶叫している。


「あ、大丈夫!! お菓子っす! 良かったら召し上がってください」


俺がヘラヘラしている間に電撃が加えられた。


「ギャアアアア!!!」


男達の悲痛な叫び声が鳴り響く。


 ──こうしてヴァラの乗っ取り事件は無事解決した。


◇◇


「…あーあ、しかし参ったな。──影武者がセイワ共和国の者、ということは、アルカディアの存在がセイワ共和国にバレているということか」


隣でセインさんが溜息を吐く。

 

「そうっすね…。 あ、とりあえず、戻ってきましたよ?!」


──戻ってきたサミュエル王太子は改めて頭を下げた。


「この度は申し訳ありませんでした!」


どうやら暗殺者と宰相、そして影武者が地下牢に入れられたらしい。また、庭園でお茶会をしていた王妃様とナディア様も捕えられたそうだ。


「うん、本当酷い目にあったよ。君達親子が無能なばかりに」


セイン様は笑顔で毒を吐いた。


 すると、サミュエル殿下は目を見開いたあと、力無い顔で頷いた。


「はい……」


「ねえ、どんな事情があったにしても、我が国への侵攻を止められなかったのは、君達の落ち度だ。……本来なら部下であるはずの宰相に国を乗っ取られるなんて何をしていたの? 君達はこの国の頂点に立っているんだろ」


俺は何となく気まずい気持ちで二人の王太子の会話を見守る。


 ……確かにもっとやりようはあったかもしれないけれど、サミュエル王子が気の毒といえば気の毒である。


「…はあ、とりあえず、本物の国王陛下の所に案内してもらっていい? 話はそれからだ」


──セイン様の言葉に、サミュエル王子が頷き部屋のある場所に促す。


「──こちらです。ご案内します」


そう言って陛下の寝込んでいるという部屋に通された。


「ううう…、これは、セイン様。こんな姿で申し訳ない」


そう言って土気色の顔で何とか身体を起こそうとした男性は影武者が変身した後の顔にそっくりだった。


 その姿を見て、セイン様は目を見開く。


「…こんなに容体が悪かったんだ」


「ええ。……私の命はもう長くはないでしょう」


国王陛下は力無く笑った。


(あー…これは。ラングスチアに連れて帰るのは無理かもね)


アルカディアにはセイン様が連れてきた医師が待機しているが、この様子では連れて行けるとは思えない。


(何とか治してあげられないかな)


俺がそう念じた時だった。頭の中に文字が思い浮かぶ。


【この男の壊れた細胞を、健康な細胞に変えますか?

 ──MPを100消費します】


はい、出たよ、出ましたよ…。こんな事まで出来るのか……。消費MPがやけに多い。人間だからか?


 俺はちらっとセイン様の方を見る。


「…なんだい? カワグチ殿。さっきから人の顔をチラチラと見て」


「先に言っておきます。──ごめんなさい」


次の瞬間、パアアアッとヴァラの国王陛下の身体が輝き出した。


 俺は迷った末に、YESを選択したのだ。


(はい、やっちゃいました…)


「……っ!! 急に身体が楽になったぞ?!」


そう言ってヴァラの国王陛下が勢い良く身体を起こした。


「これは……! どういうことだ?!」


サミュエル殿下があっけに取られた顔をした。


 すると、ガシッとセインさんに肩を掴まれた。


「……カワグチ殿? 今治したの、君だよね? どういうことだい?」


そこには口の端は上がっているのに、目は笑っていないセインさんがいた。

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