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第116話 荒野の少年との遭遇

ドドドドドッ!


猪種の魔物たち数体が駆け抜けていく。


「エメルダ―ッ!そっちに行ったよ!」


ルノアが声を張り上げた。


「おぅ。任せろ!」


棍棒を振り上げ、逃げてきた魔物たちに襲い掛かるエメルダ。


グヒィーーーッ!


数体の魔物がなぎ倒されるも、一匹の魔物が北の方へ逃げていった。


「チッ!一匹、逃がしちまった」


エメルダが悔しそうに言うと、


「あぁ、一番大きくてボスっぽかったな」


ルノアが槍を立てて、逃げた魔物を目で追った。


「あなたたち……何も寝ていた群れにわざわざ攻撃しに行かなくたっていいじゃない。あの子たちだって生き物よ」


ミィナが二人を窘めると、ルクピーも


「ルク―ッ、ルクーッ」


とミィナの腕の中でピョンピョン飛び跳ねて抗議している様子だった。


だが、


「別に、いいじゃん。あいつら、放っておくと村とか襲うだろうし」

「そうだぞ。逃がした一匹だって、恐れをなして二度と村とかを襲わないはずだ!」


と、二人はまったく意に介さなかった。


そんな話をしながら歩いていると、これまでとは違い岩肌がむき出しになった広い荒地へ出た。


「なんか……急に雰囲気が変わったわね」


ルノアがぼそりと言うと、


「あぁ。大きな石ころだらけだ」


エメルダも同調する。


「でもさ。森林地帯より魔物がいなさそうだね」


リーファは、あたりを見回しながら言った。


ルダルは歩きながら、


「そうだな。昔、ゲンマから聞いたんだが、野生の魔物たちが棲みにくいように村の周りの森林地帯を開墾していったらしい」


と、リーファに応えると、


「なるほど。あたりの魔素が薄くなるからですね」


とジルクが感心したように言った。


「あぁ、そうだ」


ルダルが笑みをこぼすと、ルノアとエメルダは不思議そうに眺めていた。


「んー?なんでそんなことで魔物たちから村を守れるのよ」

「そもそも、やつらが襲って来たらぶん殴るだけだろ」


脳筋の二人にため息をつくミィナとリーファ。


ルダルもあきれ気味に


「ジルク、悪いがあいつらに説明してやってくれ……」


「はい。いいですか、ルノアさん、エメルダさん。野生の魔物は魔素を吸収して育つんです。我々だってそうですよね。魔素が満ちているところほど元気になる。この世界では魔素が恵みですから」


ジルクは淡々と説明する。


その説明を聞いた二人は


「へいへい。そういうことざんすか」

「秀才め……なんかむかつく」


と、どこか納得がいかない様子だった。


その時――


「ギャーッ!誰か、助けてくれーっ!」


という子供の悲鳴が広い荒れ地に響き渡った。


「なんだ?」

「ちょっと遠いな?」


ルノアとエメルダが身構えるが、それと同時にアマトが


「幻扉」


と言って、目の前から姿を消した。


「アマト様、早いなぁ」

「俺達の見せ場がなくなるな」


二人は笑みを浮かべつつも構えを解いた。


――


ソウタが必死に魔物から逃げている。


だが――


「しまった!」


ソウタは岩につまづき、前へ倒れ込んだ。


そこへ猪種の魔物が飛び掛かる。


ソウタは頭を抱え、身体を丸くする。


ガンッ!


何かが叩き落とされる音。


ソウタは恐る恐るそちらを見ると――


そこには、悠然と立つアマトの姿があった。


「大丈夫か?」


ソウタは、助けてくれた相手を見上げ、起き上がると、


「あ、ありがとうございます」


とお辞儀をした。


そしてしばらく、ソウタはあの巨大な魔物を一瞬で倒したアマトに見とれていた。


そこへ――


「アマト様ぁ!」

「お兄ちゃん!」


とルノアとリーファの声がした。


ソウタがその声に振り向くと、アマトの仲間たちが走ってきていた。


「なんだ、小僧じゃねぇか」


駆け寄って来たエメルダが笑みをこぼしながら言った。


「ミィナお姉ちゃん、血が出てるよ」


リーファがソウタの膝を指さすと、


「まぁ、大変」


と言って、ミィナがスライム姿になり、スキルを唱える。


「”軽癒”」


ソウタの膝の傷がみるみる消え、


「もう大丈夫」


と人間体に戻ったミィナがニッコリと笑いかける。


ソウタは、そんなミィナを見て真っ赤になってしまった。


(き、きれいなお姉さん……)


そう思いながらも、


「だ、大丈夫。ちょっと転んだだけだから」


と言って下を向く。


「こいつ、ませガキだな」


エメルダが笑い飛ばすと、ミィナがキッと睨みつける。


その殺気に気づき、


「……すみません」


エメルダがぼそりと呟く。


「この魔物、さっき逃げたやつじゃない?」


ルノアが倒れている魔物に目を向けると、ソウタも同じように目を向けた。


「いつもはこんなでっかい魔物いないし、そもそも猪種はおとなしいのに……なんでだろう……あいつ、気が立っていたみたいなんだ」


その言葉を聞いた瞬間、ミィナが鬼の形相でルノアとエメルダに振り返る。


「「うっ!」」


バツの悪そうな二人は、ごまかすように後ろを向いた。


「お前、オーガ村の者だな?」


ルダルがソウタに声をかけると、


「うん、そうだよ。おじさんたちは?」


ソウタが聞き返すと、


「私たちは、オーガ村を目指してやって来た」


とルダルが答えた。


「じゃぁ、おいら、案内するよ!」


笑顔でソウタが返すと、パッと起き上がって、村の方へ駆け出していった。


アマト達は、ソウタが走っていった方をゆっくりとついて行った。


しばらく行くと、村の入り口らしき門が出てきた。


「着いたよぉ!」


ソウタが振り返り大声で叫ぶ。


アマトは微笑んで、手を上げる。


「アマト様……」


とルダルが顔を向けると、


「あぁ、わかっている……」


アマトが頷いた。


「では、予定通り、まずは我々だけで話をしてきます」


そして、門をくぐっていくルダル達。


門の外には、アマトとミィナが立ち止まっていた。


「大丈夫でしょうか……」


ミィナがわずかに眉を寄せる。


アマトは答えず、門の向こうを見据えていた――。

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