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第311話 西砦平原の戦場 終着 後編

 大妖達と式神達の闘いが始まった。

 その内、式神玄武の撃破に成功。

 続くは……。

ーーー 三人称です ーーー


 ヒューン、バシィッ。

 空中で高速ですれ違う二羽の鳥獣達。


「こうしてすれ違いざまのやり取りも飽きてきたなぁ。

おや?」

 八咫烏(やたがらす)が呟いていると、他方の朱雀(すざく)が空中に静止している。

 ボッ、ゴオオォォッ。

 その朱雀の全身が燃え盛る。まるで火の鳥のようだ。

「ああ、"それ"ね。

ウチのフライで見飽きてるんだけど」

 燃え盛る朱雀が突っ込んでくる。

「うーん、どうしようか?

嵐を呼ぶのも良いけど、このまま体当たりしても良いし……。

そうだ、ちょっとひねってみようか」

 八咫烏(やたがらす)は自分も空中に静止した状態にし、前面に風術で風の塊をいくつも生じさせる。

 キュルキュルキュル。

 その風の塊を十個ほど作り上げると、

「よし、行け!」

 ヒュ、ヒュヒュヒュヒュヒュッ。

 朱雀に向かって射出する。

 パァンッ。パン、パン、パシィッ。

 その風弾が朱雀に触れると炸裂し、炎と身を削っていく。

「クエエェッ!」

 朱雀が悲鳴と共に墜落していく。


「えっ!? うそーん。

これで落ちちゃうの?」

 八咫烏(やたがらす)は、様子見で炸裂風弾を放ったつもりだったのかもしれないが、それにしては威力が有りすぎた。

 朱雀の被弾した箇所は大きく抉られ、片翼と片足が千切れ飛び、到底飛び続けては要られない。

 ズズンッ。

 パアァッ。

 地上に落下した朱雀はそのまま白光を光らせ、散っていった。

「ふーん。

式神って、防御に難がある存在なんだね」

 白光を見つめながら呟く八咫烏(やたがらす)。

「まあ、いっか。

これでボクも見学組に回れるし」

 一鳴きした八咫烏(やたがらす)は、その場を去る。


◇◆◇


 キラッ。シュン、シュン、シュンッ。

 こちらでは、馬頭(めず)と白虎(びゃっこ)が戦っていた。


 白虎が産み出した氷槍が馬頭(めず)を襲う。

 ヒュッ、ヒュヒュ、シュンッ。

 馬頭(めず)は慌てること無く、全ての氷槍を躱していく。

 だけでなく、次の瞬間には白虎の眼前に立っていた馬頭(めず)。

 ヒュッ。 ザクッ。

 すぐさま白虎も後方へ飛び退る。

「ほう?

なかなか速いでありますな。

ちと浅かったか」

 両手に短剣を構えた馬頭(めず)が斬り払いを仕掛けていた。一刀は斬りつけたが、もう一刀は避けられたようだ。

 ボッ、ジュウゥッ。

「グオオッ!」

 白虎の胸元に斬り傷があったが、今頃になってその傷口から炎が吹き出す。その痛みに白虎も悶える。

 馬頭(めず)の剣技は、斬りつけてから遅れて炎が生じる珍しい技だ。また、その炎がなかなか消えない。地獄の炎とでも言うのか?


「フゥー、フゥー。

ガオォンッ」

 痛みに耐えながら、白虎が吠える。

 すると、白虎の前から氷柱が生え出し、まるで氷の道を作っていくように馬頭(めず)を目指す。

 ドスッ、ドスッ、ズザザザザッ。

「いかんなぁ。

オヌシの攻撃は直線的過ぎるでありますよ。

ネコ科の存在は、もっとしなやかであったと思うでありますですはい」

 呆れたように首を振る馬頭(めず)であったが、一息ついた後、おもむろに白虎に向かってダッシュする。

 白虎の手前十メートルほどで右へ左へと身体を移動させながら、接近して来る。

 ゴバアァァッ。

 それを見た白虎は大口を開け、氷雪のブレスを吐く。馬頭(めず)がどちらに移動しようが、捉えようと横に広く展開したブレスで迎え撃つ。

「甘い、であります」

 すでに白虎の背後に移動していた馬頭(めず)。そのまま白虎の両脇に短剣を突き刺していた。

 ズブブッ。

 そして、短剣を刺したまま後方へ下がっていく。

「ガオアッ!」

 ボタ、ボタ。

 白虎の切り裂かれた傷口から臓物が溢れ落ちてくる。

 ボンッ、ボオォッ。

 そして、こちらも炎に包まれていく。


 白虎はのたうち回りながら、淡く光り始める。

 パアァッ。

 そして、白光の輝きと共に散っていった。

「ふん。

これでおしまいでありますか。

所詮、式神は模造品に過ぎぬということでありますな」

 馬頭(めず)は、ため息混じりに仲間の方へと歩み寄っていく。


◇◆◇


 空中に巨大な水槽が漂っている。

 弁才天が産み出した水槽だ。

 一辺が20メートルもある水槽が、地上30メートルほどの高さを揺蕩っている。


「グポッ……ァァァ……ゴボゴボ」

 水槽の中に式神の青龍(せいりゅう)が閉じ込められている。

 青龍は先ほどから何かを叫んでいるが、水中に居る為に上手く聞き取れない。

 その青龍をよく見てみれば、全身のあちらこちらに氷槍が貫いており、悲鳴の叫び声だったのかもしれない。


「うげっ。

嬲り殺しじゃん……」

「うむ。

妖(あやかし)らしい所業ではあるな」

 弁才天と青龍の戦いぶりを見学していた八咫烏(やたがらす)のセリフに、同じく見学組である前鬼(ぜんき)が答える。

「我らの中では、弁才天が一番妖(あやかし)らしいでありますですはい」

 馬頭(めず)も合流したようだ。

「将軍の正義(まさよし)は豪胆な男だよね。

彼女を奥さんに迎えるんだもの」

「言い得て妙、でありますな」

「そうか?

妻とは皆ああいう者ではないか」

 前鬼(ぜんき)の言葉に、少しの戦(おのの)きと敬いの視線を送る八咫烏(やたがらす)と馬頭(めず)。


 パアァッ。

 ほどなくして、白光を放ち消え逝く青龍。

「ふん。

消化不良だわ」

 捨て台詞と共に歩み寄ってくる弁才天。

「まあまあ。次の機会もあるよ、弁天」

「そうでありますよ。

少なくともここに居る我らは、紅葉(もみじ)は弁才天の獲物だと思っているでありますですはい」

「なら良いけど」

「……次郎が許せばな」

 前鬼(ぜんき)をキッと睨む弁才天。

「帰ったら、直ぐに謁見を申し入れるわ!」



 クリムト帝国軍第二師団は、その総数を一割ほどを減らしながらも、西砦に帰還することに成功する。

 対してゴドー王国軍第6師団は二割の減。被害は彼らの方が多かったようだ。

 そして、大樹の森国軍は、誰一人として欠けること無く、煙のように消え去っていった。


 ここに、西砦平原における三軍の戦いは、一旦幕を閉じることとなったのである。


 ピーヒョロロ。

 時折、空高く舞う鳶(とび)を見かける偵察兵は優秀である。

 式神の撃破は成功したが敵将の紅葉(もみじ)は逃がしてしまった大妖達。奥歯を噛み締める弁才天。

 それでも、ここに西砦平原戦が終わりを告げた。

 八咫烏(やたがらす)は戦後の上空を経過観察飛行を続ける。


 それにしても、大樹の森国軍はゲリラ戦が得意なようですね。

 ようやく戦闘シーンが終わって、作者もホッとしてます。


 さて、次話は、戦後の次郎の語りから始まります。

 おや? 厨房で調理もするようですね。

 お楽しみに。

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