第299話 戦場の舞い
オーガに襲いかかる大樹の森国軍。
グラナリー平原が赤く染まっていく。
ーーー 三人称です ーーー
グラナリー平原の戦場。
「ほらそこっ!」
蛇人間のナーガが鎌首をもたげた状態の高い位置から、オーガ目掛けて槍を突く。
ガキィィンッ。
オーガが鉈でその槍先を弾く。
体重の乗った高さのある位置からのその槍突きも、りょ力のあるオーガに掛かれば弾くことが出来るようだ。
「しかし、背後がおろそかだな」
ドスッ。
ナーガの槍を弾いた瞬間、背中に鳥人ブランの槍が急襲。見事、オーガの肺を貫くことに成功する。
ブランは、上空から高速接近して勢い良く槍を突いたようだ。また、槍先に風魔法を纏わせ、鋭さを増しての突き。
「ぶほっ……グオォォッ」
痛みに吠えるオーガ。
「うっさいぞ、おまえ」
オーガの傍らを高速で走り抜ける者が居た。
ヒュッ。ザクッ…………ドン。
オーガの武器を持つ手が飛んだ。
蜘蛛人間のフラウローネの技だ。
そのフラウローネがUターンしてくる。
ヒュンッ。ポーン…………ドン。
オーガの反対側の腕も切り飛ばされた。
(ひゅ~♪
ドワーフ工房の剣ってのは凄い切れ味だな。
今のなんて、感触良かった)
フラウローネは、剣の切れ味に感動していた。
「フラウ。
ダメよ、気を抜いては」
「トドメを刺すまではな。
……ウィンドトルネード」
ナーガとブランがフラウローネを嗜め、ブランは槍を刺したまま風魔法を唱える。
ギュル、ギュルギュルギュル。
「アガッ、アガガガガッ」
肺まで通過した槍から極小の竜巻が発生し、オーガを苦しめる。
「せいっ」
ナーガがオーガの喉を突く。
ドスッ。
「ゴボッ」
そして、槍に持ち替えたフラウローネがオーガの胸を穿つ。
その攻めは心臓を貫いたようで、オーガの目から生気が失われていく。
ザシュ。ぐいっ、ズボ。ブシュウ。
バタンッ。
三人が槍を引き抜くと、さすがのオーガも地に倒れ伏す。
「よしっ。討伐成功♪」
「うむ。訓練の成果が出ているな」
「でも、フラウ。
切り飛ばすなら、腕よりも脚の方が機動力を殺せるじゃない」
「でも、あの太もも見てよ。
頑丈なオーガの脚を切り飛ばせるなんて思えないじゃん」
「ドワーフ工房の武器なのよ。同じよ」
ナーガはそう言いつつも、実は手にしている武器の威力に、内心少なからず驚いている。
「大樹の森は、何もかもが飛び抜けて優れているな」
ブランは素直に感嘆している。
そのブランは、槍以外に腰に剣を履いている。さらに、飛翔時に羽と干渉しないように左腕に折り畳み式短弓を備え付けてある。戦争用のフル装備である。
さらに凄いのは、ナーガとフラウローネだ。
彼女達は、人体の背後に巨大な蛇や蜘蛛の身体が融合している為、その背に武器をいくらでも積める。
「ナーガ、ちょっと武器積みすぎじゃない?
そんなんじゃ、重くて素早く動けないじゃん」
「あら、そうでもないわよ。
普通に動けるわ」
「うむ。
最近のナーガは重量感が増して安定している。
突撃の威力も増しているからな。良いことだ」
「なっ!?」
「ぷぷぷっ。
ブランは重みのある女の方が好みなのね」
「フラウ!」
ナーガは二人を激しく睨む。
乙女に体重のことは触れてはならない。
「ったく、あいつらは」
「なんか、バカなことやってるみたいだけど、放っておいて良いの? 夜霧姉?」
絡新婦の徹夜と夜露が夜霧にもの申す。
「好きにさせておきなさい。
戦の空気に触れていながら、いつもの調子を維持しているのだもの」
夜霧も三種族の戦い振りを横目で確認しながら、薄く微笑んでいる。
「確かに。
連携も以前よりも上手くやっているようです」
「さすが、異世界のテイマーの施しね」
姉弟も、三種族の連携には感心している。
「ほらほら、動いて。私達も自分の仕事をする」
「「はい」」
夜霧の促しに、二人も改めてオーガに対峙する。
彼女達は、本来の姿を晒している。妖怪絡新婦の姿を。
「なんだ? 蜘蛛人間か?」
「おおう。噂通り、イイ女じゃないか」
オーガ達は下卑た笑いを顔に貼り付けている。
「だが、雄も居るのだな。
綺麗な顔をしているから、俺はどちらでも構わんぞ。クックック」
ゾゾゾッ。
「じょ、冗談じゃない!
ボクに男と抱き合う趣味は無い!」
夜露が腹を抱えて笑い転げている。
「あっはっは。
ヒーヒー…………。徹夜は男女問わずモテるのね」
「姉さん!」
「でもね。
大事な弟を簡単には渡さないわよ。
どれ、私が吟味してあげましょう」
夜露が、徹夜を見て舌舐りしているオーガの前に立つ。
「ふん。姉弟なのか。
では二人とも順番に犯してやろう」
夜露とオーガが武器を構える。
だが、一対一とはならないようだ。
「俺もこの姉ちゃんの相手が良い」「おお、どんな体位なら出来るのか、興味が尽きん」「蜘蛛の部分は固そうだが、ヒトの方は柔らかそうだ。美味に違いない」
「ガッハッハ」「ゲヘヘヘ」「グフフ」
周りのオーガ達が好きにものを言い、大いに笑うが、夜露が気にした様子は無い。
いや、夜露の口の端が少し釣り上がる。
ゴバッ、ゴオオオォォォッ。
その夜露の口から火炎が吐かれる。
とっさに結界を張り、難を逃れたオーガも居たが、何体かのオーガが業火に焼かれ、悶え苦しんでいた。
最強種族のオーガにとっても耐えられないほどの猛火のようだ。
ドスッ。ブスッ。ザシュ。
そして、焼かれているオーガを順番に槍で突き刺していく夜露。
「汚ならしいオーガも焼かれた臭いは人肉と変わらないねえ。
けど、一切の食欲がわかない。
生理的に無理ね」
絡新婦の妖怪としての所業が垣間見れるセリフだ。
「夜露姉さんは派手だなぁ。
それに比べて、ボクの方はなんとも地味になってしまう」
徹夜は、槍を振るいながら呟く。
ザシュ、ズガガガガッ。
徹夜の槍で突かれると、被弾した箇所は一ヶ所のはずなのに、その周りに数多の傷が発生して傷口が大きく抉れていく。
すでに三体のオーガをその技で屠っており、今もまた新たなオーガを突き刺したところである。
ズガッ。バァンッ。
そのオーガは顔面に槍を受け、頭部が弾けた。
「オーガもこの程度だと、夜霧姉さんに先を越され兼ねないな」
飛び散る脳漿を浴びながら、徹夜は数十メートル先を眺める。自分達の姉であり親でもある愛しい同族の姿を追って。
その視線の先に、美しい女性が妖艶な舞いを舞っている。
戦場に舞い降りたその天女は、二本の腕と八つ足を奮って全身で喜びを表現しているように見える。
オーガの血潮に塗れながら。
訓練を経て、攻撃に鋭さが増した樹海の三種族。
そのすぐそばで見守ってる絡新婦の三人は、面倒見が良いですね。
と思っていた矢先、夜霧がどんどん奥へ進んで行きましたね。
さて、次話は、息抜きにグルメ話を挟みます。
戦闘シーンばかり続くと、作者の心が疲弊しちゃいます。悪しからず。
では、お楽しみに。




