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第294話 二面作戦の部隊編成

 大樹の森国の重鎮達が屋敷の会議室に勢揃いした。

 あーあー、テステス。

 本日は晴天なり。

 …………。

 うん。大丈夫そうだ。


 皆さん、おはようございます♪

 お久しぶりの次郎です。

 いやぁ~、参りましたよ。

 樹海の住民を助ける為にクリムト帝国軍と軽くドンパチやった後に、新領地の穀倉地帯、グラナリー領に攻め込んで来るんだもん。

 クリムト帝国って、ホント腹立つわぁ。

 まあ、樹海紛争があったおかげで、クリムト帝国軍の動きは注視出来たんだけれどね。


 真神(まがみ)や八咫烏(やたがらす)、烏天狗(からすてんぐ)を始めとした天狗達の監視業務によって、クリムト帝国軍の狙いが判明。

 クリムト帝国軍の一個師団の北上とそのルートから、ここの穀倉地帯が目標地点であることが一つ。

 また、西砦に駐留している第二師団の気運が高まったことが一つ。

(天狗って凄いね。

彼らの目からすると、兵士達の戦意が日々高まっていく様が見えるそうだ)

 ゴドー王国軍の兵数が激減した情報をクリムト帝国が把握したとするならば、ここグラナリー領が元ゴドー王国の領地であったことを鑑みれば、自ずと見えてくる。

 二点同時侵攻による兵数削減。ゴドー王国軍のね。

 まだ本格的な侵攻ではないと思う。

 如何にクリムト帝国軍が軍事強国であっても、現時点ではゴドー王国軍には敵わない。

 それだけゴドー王国は大国なんだ。


「まず、グラナリー領に防衛線を引きましょう」

「うむ。

銀狼師団を中心とした軍勢で迎え撃とうぞ」

 将軍の正義(まさよし)の言葉を受けて、総司令の前鬼(ぜんき)も賛成のようだ。

 ここで僕も発言する。

「クリムト帝国軍の目的はゴドー王国軍の兵数削減なんだよね?」

「ああ、クリムト帝国軍の今の戦力では、まだゴドー王国軍には届かないだろう」

 僕の確認に前鬼(ぜんき)が答える。

「二面作戦という策で削るのでしょう」

 さらに正義(まさよし)が口を挟む。

「んじゃ、こっちも二面作戦でいくのはどうかな?」

「こっちもか?」「こちらもですか?」

 ガヤガヤ。

 会議室が少しざわめく。

 ここには軍関係者が揃っている。他には、宰相の後鬼(ごき)も居るし、各種族のリーダー達に行政庁のヤクトとカイも同席してもらっている。


「ははーん。

鈴木次郎様は、この機会にクリムト帝国軍の兵数も削減してしまおうって訳ね」

 弁天の頭は回転が早いね。

「となると、狙いは……」

「西砦に駐留している第二師団で御座ろうな」

 前鬼(ぜんき)の言葉を遮り、烏天狗(からすてんぐ)が口を挟む。

「その通り。

クリムト帝国軍の中で最も優れた戦力を持つ第二師団がターゲットだ」

 正義(まさよし)がなにやら難しい顔をしているが、無視することにする。

「こちらの西砦平原には正義(まさよし)を中心とした部隊を展開する」

 第二師団と一度対戦したことのある正義(まさよし)に部隊を動かしてもらうのが良策だろう。

 スッと手を挙げる正義(まさよし)。

 正義(まさよし)の方を見て、顎で了承する。

「その第二師団はどの程度削れば宜しいでしょうか?」

「良いじゃない? 潰しちゃえば」

 正義(まさよし)の質問に、弁天が少し怒り気味に発言する。

「いや、敵兵を削るのと殲滅するのでは、軍の運用が変わってくるぞ」

「なによっ。あの女が気になって仕掛けられないの!?」

「そんなことはない!」

 もぉ~、夫婦喧嘩は別のところでやってくれないかなぁ。


「紅葉(もみじ)の存在が問題ね……」

 それまで黙っていた後鬼(ごき)が呟く。

 クリムト帝国軍第二師団長、紅葉(もみじ)。

 正義(まさよし)達が西砦紛争から帰ってきた際にもたらされた情報が、僕らに衝撃を与えた。

 敵の大将に鬼が居る。オーガではない妖(あやかし)が。

 これには、直接接した正義(まさよし)の言だけでなく、同行していた八岐大蛇(やまたのおろち)や弁才天もその妖気を感じ取っていたのだ。

 決定的だったのは、妖(あやかし)の正体を見破る能力を持った雲外鏡(うんがいきょう)がこう述べたのだ。

「紛う方無き(まごうことなき)鬼女でしたなぁ」

 それからと言うもの、紅葉(もみじ)の監視業務に力を注いだのだ。


 紅葉伝説。

 古くから長野県に伝わる鬼女の伝承がある。

 平安時代、平維茂(たいらのこれもち)によって退治されたとされる鬼女伝説ではあるが、同時に人々に様々な文化を与え、もてはやされたという二面性を持つ。

 第二師団長の紅葉(もみじ)がその紅葉伝説の鬼女と同一人物かはわからないけど、問題は彼女が日本の妖(あやかし)であること。

 彼女の目からしたら、こちらの妖(あやかし)達の能力がだいたいわかってしまうことだ。

 正義(まさよし)の報告によれば、彼女は軍略家であるとのこと。頭も切れるらしい。

 伝承では多才であったとされているからね。

 彼女も誰かに召還されたのか、はたまた転移事故で異世界(こちら)に来てしまったのか、現状ではわからないが、今は敵であることははっきりしている。


「なので、西砦平原に出陣する部隊には大妖を配置する」

「まあ、それが宜しいかと自分も思いまする」

 八岐大蛇(やまたのおろち)以外の大妖達も頷いている。

「僕はグラナリー領の防衛戦に赴こうと思う」


 そして、部隊を二つに分けて編成していくことにした。

 まずはグラナリー領防衛戦。

 僕と護衛役に後鬼(ごき)。アヤメとタマモもこちらに就くと言う。

 ヒルコもそろそろ戦争の空気を体験させようと同行させるつもり。

 さらに、真神(まがみ)。防衛部隊である銀狼師団の象徴だからね。

 天狗の半数を率いての烏天狗(からすてんぐ)。

 鬼部隊の半数を率いるのは牛頭(ごず)。

 ハヤテ含めた獣人隊。(奥さんの橋姫(はしひめ)もこっち)

 樹海の三種族もこちらだ。


 一方、西砦平原には、前鬼(ぜんき)と正義(まさよし)。

 距離に関係なく念話で僕と繋がれる八咫烏(やたがらす)。

 正義(まさよし)の奥さんの弁才天も河童隊を率いてもらう。

 鬼の残る半数を馬頭(めず)が率いる。

 天狗の残り半数は、太郎坊が統率することに。

 ユキを筆頭とする雪女隊は、雪娘の椿(つばき)を除き、西砦平原に配置する。椿(つばき)は、僕の護衛を兼ねて僕の側に置く。

 隠形鬼(おんぎょうき)の連中はどうしようかと悩んだが、おそらく紅葉(もみじ)率いる第二師団の方が厄介そうなので、西砦平原に派遣することにした。

 ナターシャ率いるエルフ隊は、空軍の天狗隊の補助と弓矢及び魔法の遠距離射撃を担う。

 竜隊と戦車隊は、どちらもケインが率いているので、やはり西砦平原に。今回は、フライとティラノも参戦させる。フライはラプトルと翼竜達の統率も出来るので、ケインの負担を少しでも減らすことを期待している。

 ちなみに、戦車隊と竜隊にはドラド族が編成されているので、彼らも自動的にこちらだ。


 あとは、転移能力を持った雲外鏡(うんがいきょう)は、僕の居ない西砦平原だ。

 そして、連絡役のサトリ。

 たぶん、彼女が一番大変かと。

 彼女は、一度取り憑いたことのある人物の脳を、距離に関係なく行き来出来るんだ。

 新加入の玄武(げんぶ)は、昔馴染みの雲外鏡(うんがいきょう)と同じ西砦平原だ。


「うむ、戦(いくさ)であるな。

我(ウォ)の武をお見せしようぞ」

「これ、玄武(げんぶ)よ。

決して独りで突っ走るなよ。

戦(いくさ)は集団戦じゃ。

身勝手な振る舞いは慎むのじゃぞ」

「ふん。それぐらいわかっておるわい。

相変わらず、オヌシの言うことはジジ臭いのぅ」

「なっ……貴様こそ、ババ臭いクセして」

「なにをっ!」「なんじゃぁっ!」

 あらら、太古の大陸の大妖同士が言い争いを始めちゃったよ。

「お爺。

お婆を虐めない。

戦場(いくさば)で喧嘩したら、椿(つばき)、怒るよ」

「じ、嬢ちゃん。

ワシは虐めとらんよ。

ワシが虐められとる方じゃ」

「良いから、仲良くするの。

お婆もね」

「「はーい」」

 へぇ。

 雲外鏡(うんがいきょう)は以前からだったけど、玄武(げんぶ)も椿(つばき)ちゃんには弱いようだ。

 さあ、次郎達がクリムト帝国軍に対し、攻勢に出るようですよ。

 そこには複雑な想いも絡み合っているようですが、次郎は決断していきます。

 それにしても、いつの間にか、椿(つばき)ちゃんは中華の大妖、雲外鏡(うんがいきょう)と玄武(げんぶ)の愛孫のポジションを手に入れたようです。


 さて、次話は、ちょっと休憩話を挟みます。視点を変えて、行政庁職員のソフィアとポーラ姉妹の登場です。現在の大樹の森の都をリポートしてもらいましょう。

 お楽しみに。

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