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第279話 第一次湖東調査隊 その8

 四神として有名な玄武(げんぶ)が登場。

 そして次郎の配下に。

 いやぁ、驚いた。

 だって、異世界で中国の四神の一柱、玄武(げんぶ)と逢えたんだよ。

 しかも、仲間になるって言って。

 今回は、僕のスキルの妖(あやかし)召還無しでだからね。


 でも、よくよく話を聞いてみると、四神ってのは人が勝手に付けた称号らしい。

 玄武(げんぶ)は他の四神に会ったこと無いんだって。

 中国の神話では、玄武(げんぶ)は水神であり、北を治め、武神でもあるとされてるけど、どうやらちょっと違うみたい。

 玄武(げんぶ)は、水術だけでなく、火炎術、土術、風術等々まんべんなく使えるとのこと。

 ただ……。

「武神は目指したい目標ではあります」

 だってさ。

 うーん……。ウチで言うと、武神に一番近いのは前鬼(ぜんき)パパかなぁ?

 その昔、暴走した後鬼(ごき)ママを制圧したって言ってたし。

 ただし、暴走した後鬼(ごき)ママの話を聞きたいのに教えてくれないんだ。ちょっとくらい良いのにぃ。

 後鬼(ごき)ママは当然のことながら、前鬼(ぜんき)パパも口をへの字にして押し黙ったまま。

 いやまあ、後鬼(ごき)ママからすっごい威圧感が溢れまくってたから無理無いけど。



「さて、ご挨拶も終わったことであるし、続きと行こうか」

 まだやるんだ。

 そういうことならと、前に出る。

「おっと、鈴木次郎様ではありません。

貴方様相手では、本当に我(ウォ)が消滅し兼ねません。

そうではなく、せっかく強者がここまで揃っておるのです。闘ってみたいではありませんか。

どなたか、我(ウォ)に挑戦してみませぬか?」

 ああ、そういうことね。

「私はパスね。

サトリとアヤメ、そして……夜霧(よぎり)も控えなさい。

あとはお好きになさいな」

 後鬼(ごき)が微妙な選別をした。何かしら基準があるのだろう。

「もちろん、複数と対戦するのでも構わない。

誰から来る?」



 そんな話から、玄武(げんぶ)との模擬戦が始まった。

 最初に名乗り出たのは鳥人のブラン。恋人のナーガに良いところを見せたいみたい。

 でも、ブランが挑むと言うと、そのナーガも名乗り出ちゃった。そして、当然の流れなのか、フラウローネまで参戦することに。

 君たち、なんだかんだと仲良いよね。

 で、3対1の模擬戦の結果は……敢えなく敗退。

 三人も上手く連携を取ってたけど、自力の差が激しくて、どうしようもなかった。

 まあ、玄武(げんぶ)も異国とはいえ、妖(あやかし)だからね。

 あ、でも、ブランの必殺技がカッコ良かった。


 空中で呪文を唱え出したブランを見て、ナーガとフラウローネが玄武(げんぶ)を惹き付けるべく、激しく連続攻撃を開始。

 ただ、玄武(げんぶ)もわかってたようなのに、あえて放置してたと思う。だって、横目で呪文を詠唱してるブランを確認した後、彼の口角が上がってたもの。

「待たせたな、二人とも。

行くぞ、ウィンドブレイク!」

 ブランが煌めく風を纏い、高速飛行で玄武(げんぶ)を目指す。

「ブラン、お願い!」「行けぇ!」

 ナーガとフラウローネの声援を背にブランが玄武(げんぶ)に体当たりを仕掛ける。

 ゴオォォッ、ドンッ。

 凄い音が響き、ブランが玄武(げんぶ)の額辺りに衝突。

 だが、双方(・・)共に無事。

 ブランは風魔法の使い手だから、風の結界で自らを覆って防御しつつ、さらに飛行速度を上げたみたい。

 でも、玄武(げんぶ)は涼しい顔をしてる。

「ほほう、風術をそのように使うとは面白い。

だが、まだまだだな。

いや、のびしろがあると言った方が良いか」

 それから玄武(げんぶ)は、伸ばした右腕をふるって三人を一層。三人は多少のケガをしたが、軽傷で済んだ。

 玄武(げんぶ)って、首だけじゃなく手足も伸ばせるんだね。


「んじゃまあ、俺達も行くとするか!」

「私はあなたについていくだけ」

 次戦はライデン&スミレが挑むようだ。

「ほう? これは珍しい組み合わせですな。

少し気を引き締めた方が良いか」

 両者が戦闘体制に入る。

 あ、そうそう。樹海の三人組は転移で僕の目の前に引っ張って来て、ただいま治療中。

 うん。玄武(げんぶ)も手加減を知っているようだね。三人共、唸っている割には軽傷で済んでいる。


 先に仕掛けたのはライデン。玄武(げんぶ)に向かってダッシュする。

 おや? ライデンが接近戦なんて珍しいな。

 両者が接触する直前、ライデンが跳び上がる。

 両腕から魔力弾を射出しながらの攻撃だ。

 だが、玄武(げんぶ)は意にも介さない。そのまま被弾していくが、けろっとしている。

 いや、玄武(げんぶ)からも攻撃している。野球ボールサイズの火炎弾を吐き出した。

 宙に跳び上がったライデンは、90度直角に方向を変え、そのまま飛翔していく。

 地面と水平に飛びながら、ライデンは背に担いだ弓を構えて、今度は弓魔法の体制だ。

 ドンッ、ドンッ、ドンッ。

 サァァ、ヒュッヒュッヒュッ。

 両者の術が交差していく。

 ピキッ。

 ライデンと玄武(げんぶ)の攻撃が両者に到達する前に、玄武(げんぶ)の足元に巨大な氷が出現した。

「ぬおっ! いつの間に。

…………そちらの女史か!?

よもや、予備動作無しに術を発動させるとは!」

 さすがの玄武(げんぶ)も驚きを隠せない。

 亀脚の四脚共氷漬けにされ、身動きが取れず、ライデンの魔法矢が被弾していく。

「やむを得ん」

 魔法矢が二、三発命中したが、すぐに結界を張ったようだ。

「その不思議な術は思ったより効くな。

いや、それよりもこの氷術の方が厄介か」

 どうだい? この異世界ならではの弓魔法の味は?

 それと、中国には雪女なんて居ないだろうし。

「そうか。

そちらの女史は、倭国の雪女(シュエ・ニュ)か!?」

 あら、ご存知で。

 雪女は、元は中国の幽霊から日本で誤って伝承されたとされているが、実は紛うことなき純日本の妖(あやかし)。

 大気の性が女性の気を孕んでいることから、人の女性の呪詛や想いと融合して変化(へんげ)するらしい。

 中には、椿(つばき)ちゃんみたいに純粋な天候の精が様々なものと結合して誕生し

た者も居る。雪ん子の多くがそうなんだって。


 玄武(げんぶ)が身動き出来ない今がチャンスか?

 あ、いや、そうでもないみたい。

 玄武(げんぶ)の四脚が伸びた!

 右腕も伸ばせたから、これも当然か。

 そして、玄武(げんぶ)はライデンに向かって体当たりを仕掛けていく。

 ライデンは、飛翔魔法で避けながら弓魔法で応戦していく。

 玄武(げんぶ)は身体の周りに風の塊を創出して、それを撃ち出してきた。

「くっ」

 ヒュッヒュッ、チッ。パシュッ、パシュッ。

 ライデンも大半を避けていくが、何発か被弾した。


 そんな両者の闘いの最中、玄武(げんぶ)の首だけが方向を変え、急速に伸びる。

 狙いはスミレだ。

 術者の危険度が高いスミレを先に潰す作戦のようだ。

 玄武(げんぶ)が大口を開けてスミレに接近。

 噛みつく寸前、玄武(げんぶ)の前に氷の壁が出現。

 ゴオォォン。

 玄武(げんぶ)の頭突きが当たるがびくともしない。

 それを見た玄武(げんぶ)は、今度は火炎ブレスを吐き出した。

 案の定、氷の壁がみるみる内に融け出す。

 が、スミレは氷の壁を次々に出現させて防いでいる。


「こんの野郎ぉ!」

 ガシィィィンッ。

 ライデンが高速で玄武(げんぶ)の頭部に体当たりしてた。

 ものすごい速さだった。

 あ、ライデンが墜落していく。

 パキッ、パキッ、パキパキパキィン。

 おお、スミレが薄い氷を張って衝撃を緩めたみたい。最後はしっかりとライデンを受け止めたようだ。

「もう、無茶をして!」

「いや、一応、結界は張ったんだが……さすがに効いたなぁ」

 ライデンがスミレに支えられながら立つも、ふらついている。

 当たり前だ。

 結界で外傷は無くとも、その衝撃の度合いはモロに全身に来る。


「ふむ。

ここまで、と言うことで如何であろうか?」

 玄武(げんぶ)の提案だ。

 スミレがキッと玄武(げんぶ)を睨んだ後、ライデンに視線を移す。

「まあ、こんなもんだろう。引き分けで手を打とう」

「ふぅ、あなたに従うわ」

 ライデンとスミレの同意を得て、引き分けで終了。

「済まぬが、これを溶かしてくれぬか。

我(ウォ)の炎では溶かすことが上手く出来んのだ」

 パキィン。

 僕がライデンの治療中に、スミレが手を振ると氷が一瞬にして霧散していた。

「いや、助かった」

 玄武(げんぶ)が礼を言ってる傍らで、スミレが「面倒くさいやつ」とこぼしてたのが聞き取れたよ。

 自分の彼氏が痛い目に逢わされた相手だからわからなくもないけど、抑えてね、スミレ。


「では、お次はどなたかな?」

 まだやるんかーい。

 玄武(げんぶ)のヤツ、どんだけ体力があるんだか。


「ん。

行くよ、お爺」

「仕方ないのぉ。お嬢ちゃんに言われてはなぁ」

 おいおい、椿(つばき)ちゃんが行くのはわかるが、雲外鏡(うんがいきょう)もか?

「これは珍しいな。

雲外鏡(うんがいきょう)が参戦するとは」

「ホッホッホ。

これでも過去の大戦を幾度も潜り抜けておるからのぅ。

玄武(げんぶ)も油断しておると痛い目を喰うぞ」

 そうか。雲外鏡(うんがいきょう)も旧い存在だったな。何度も戦争を味わったことだろう。

 "天候の申し子"雪娘の椿(つばき)と"逃げの付喪神(つくもがみ)"雲外鏡(うんがいきょう)対中国大陸の大妖玄武(げんぶ)の対戦。

 はてさて、どうなることやら。

 やっぱり大妖は戦闘好きですね。

 そして、雪娘の椿(つばき)ちゃんと雲外鏡(うんがいきょう)のコンビが玄武(げんぶ)との模擬戦に挑む。その結果は果たして?


 さて、次話は、その彼らの闘いの模様をお届けします。

 お楽しみに。

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