037_蛇くんの悪癖と月のない夜。
「悪癖ってひどい言い方だと思う」
乱れた敷布に片膝ついて、
軽く茶碗に注いだ水を飲んで、
流れた汗とかの失った水分を、
補給しつつ、
ちょっとぐったりとした、
白い肌の女性を撫でながら、
つぶやく蛇くんこと、ナギ少年です。
「ええと、結構、趣味は悪いというか、
悪い趣味だとは思うわよ?」
疲れ切って大きな声が出ない、
ちょっと大人?年上?
おんとし三十は言ってないような、
肉感的な魅力あふれる女性が、
掠れ声で答えます。
出会ったのは、ミカドの仕事場というか、
御殿です、
そのなんやかんやを取り仕切る、
奥女中のお方で、
そこそこ身持ちが堅いような、
ただまあ、未亡人ではある方でして、
なんやかんやありまして、
褥を共にすることに。
「年下とは思えない技術でしたわね」
うっとりと夜の運動を反芻するお方です。
「いえいえ、あなたもなかなかなで、
結構なお手前でしたよ?
あと、体力?
手加減しているとはいえ、
気絶しないのはすごいなと思いました」
こくんこくんと、水を飲んで言います、
あまり出ていない喉仏が、上下に動きます、
鎖骨あたりにあった汗が、ちろりと、
流れていくところが、なんともなんとも、
体臭が汗に混ざって、
隠微なというか、
「普通に媚的な匂いなんですけど?
そんな香とか炊いた覚えがないのですけど、
途中から意識飛んでたんですけど?
身体だけ反応させられて、結構すごかったわよ?」
ちょっとだけ経験豊富っぽい自意識があったのに、
若い男に良いようにやられて、
ちょっと自信喪失気味の女性です。
「まあ、人にしてはなかなか?
もしかすると、そこそこ血が関わっているかも?
匂いはその系統のものがするし?
あれ、もしかして、
やっちゃったかな?」
あまり性欲に制限をかけないようにしている蛇くんでありまして、
というか、喰そうなものは喰ってよしという性格と、
環境でありますから、
大体は、そうした後で、
面倒ごとが巻き起こったりするわけでありますが。
「一応、良い人はいないので、
遊ぶには問題ないわよ?
というか、ぜひまた誘ってほしいですね、
神様関係だと、孕む心配もしなくていいし、
病気も問題ないし」
むしろ、色々調子が良くなる気がしますし。
「あー調子が良くなるのは気のせいじゃないよ?
神術の無意識行使があるから、
いたしている途中に?
悪いところは根こそぎ治すし、
なんなら、若返りの効果もあるかも?
ただまあ、やりすぎると、疲労で死ぬけど」
さらりと述べる、ナギ少年です。
「死ぬのは嫌よね、
まあ、受け止められたら、ご利益しかないというのは、
まさに役得よねぇ、
でも、せっかく若い娘も用意できたのに、
私で良かったの?」
「据え膳とか気にしないけど、
おねーさん好みだったし、
こう、気配がよかったんだよね、
あと、結構割り切った関係でいけそうな、
勘が働いたし、
後ろから刺されるのは避けたいんだよねー」
にこやかに毒を吐くナギさんです。
「悪いおのこね……」
蛇くんの悪癖と月のない夜でございました。




