012_蛙ちゃんの五年目
ベロンと、舌が伸びます、
ペタリと、人形に張り付き、
ぐるりんと、それを手繰り寄せます。
「無精ですよ?」
お付きの侍女が指摘します。
「使い方の練習をしてるのです、
舌術とか滑舌術とか、まあ、そんな感じの、
武道の一つに通じる、らしいですよ?」
五歳児くらいの大きさの蛙です、
綺麗なおべべを着ています、
色とりどりの帯が巻き付いているような感じです、
五色にくらいのそれでしょうか?
「またまた、そんな適当な?」
侍女は肩をすくめて、大袈裟にやれやれと、
呆れた感じを演出します、
ちょっと若めの、まあ、可愛らしい感じの女性です、
ざっくばらんではありますが、
二人きりであるといつもそんな感じであるようです、
「堅苦しいのは嫌いなのですよ、
あと、私見た目が蛙なのよ?
傅かれると、なんだか、可笑しい気分になるわね」
そう言って、そのような対応を許しています、
「祖霊のお姿ですから、敬われても不思議はないのですが?」
小首を傾げて言う侍女さんです。
「蛙の祖霊はそもそも、滑稽な仕草で、
場を和ませる種族?分類?なのだそうよ?
道化とまでは言わないけれど、
こう、崇め奉られる感じではない気がするわ」
こちらも肩をすくめて、答えるナダ姫様です。
肩はどこにあるのでしょう?
「ええと、それじゃあ逆に?」
細めの指を顎に当てて、何か考えるように、侍女が言います、
「逆に?」
続きを促す姫様です。
「その姿かたちで崇め奉られた方が、
滑稽に見えて、笑いを誘うのではないでしょうか?」
にこやかに、晴れやかに、毒を吐く侍女です。
「それは確かにそうですけど、
面と向かって言われると、
ちょっとムカつくわね?」
眉を顰める蛙姫、
いや、どこにあるのです?眉?
「そうですか?」
とぼける侍女さん。
「話は変わるけど、この、滑舌術、
相手の武装を剥ぎ取る技もあってね」
ペロリ、グルリ、とピンク色の舌を、
口から出して回す姫様、
「はあ?」
気の抜けた声の侍女さんです。
「これをね、こうして、こうじゃ!」
すっぽんと、油断した侍女さんの服を、
剥ぎ取ってしまう姫様です。
ちょと色々と小ぶりな、彼女の肢体が、陽の中で露わになります、
一瞬キョトンとした表情をしたのちに、
悲鳴をあげて、
しゃがみ込んでその身体を隠す侍女さんです。
「は、破廉恥です、姫様」
涙目になる侍女さんに、
溜飲を下げて、
ゲコゲコと笑う、蛙ちゃんこと、ナダ姫ちゃんでございました、
「やあ、意外と芸として楽しいですね、
定番にしましょうか?」
侍女にちろりと視線をやる姫様です。
「勘弁してください、姫様」
赤くなったり青くなったりする、侍女さんです。
蛙ちゃんの五年目はこんな感じでございました。




