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011_蛇くんの五年目

 手洗いをして、

 白い衣服を見に纏い、

 髪の毛をまとめ、口には清潔な布の覆い、

 目の前の台には、人の遺体、

 病死した、身寄りのない女性、

 刃物で皮膚を切り裂き、

 脂肪を避けていきます、

 肋骨を外して、胸を開いていき、

 肺のあたりを見えやすくします、

 明かりは、精霊の人だまのようなものと、

 手元をさらに照らすようにした、真言術式のものと、

 併用です、

 新鮮な死体ですので、腐敗臭は少なめ、

 

 蛇くんとこナギくん、体格は十歳前半くらいの大きさ、

 腑分け台で作業がしやすいように、踏み台に乗っています、

 迷いなく、切り分けて、内臓を確認していきます、


 遺体の頭側では、もう一人、

 ゆったりとした、施術着ながら、女性らしさが隠せていない、

 大人の体格の人が、物言わぬものの頭髪を、剃り落としていきます、

 肌が見えるようになった頭蓋に、刃物を回し入れ、

 ひふを剥がし、髑髏の頭頂部、目の上あたりから上を露出させ、

 鋸にもちかえ、削り切り始めます、


「肺が真っ黒ですね、聖女様」


 布漉しのくぐもった声で少年が指摘します、


「そうね、煙草の吸いすぎでしょうね、

 この辺り、こぶ、ができているでしょう?

 これが、呼吸を妨げていたのでしょうね、

 炎症も結構広範囲に広がっていますね、

 片肺、動いてなかったんじゃないかしらね?」


 一緒に観察した結果を述べる、聖女様と呼ばれた女性です、


「あと、脳に血栓の跡があるわね、

 血管が弱くなっていた証拠ね、あと、

 全体的にちょっと、萎縮している感じだわよ」


 脳みそを取り出して、作業台に置いて、観察させる、

 聖女様。


「あー、本当ですね、これは、薬かなぁ?」


 ヒョイとずるりと首のあたりまで伸びている、

 神経のたばとかを避けて、観察する、ナギくんです。


「そんな感じね、阿片とか芥子とか、くさの薬かしらね?

 最後の方はもう何もわからなくなっていたのじゃないかしらね?」


 繋がって溢れてきた眼球を傍へ避けながら、答える聖女様です。


「煙草どこが美味しいのか分からないですね」


 わずかに見える目の当たり、眉を寄せるナギくんです。


「好きな人は好きなのですよ、まあ、習慣性がある快楽というか、

 悪習慣ではありますけど、ある程度は精神を安定させる、

 役割もありますわね、

 まあ、血筋的に、少年は苦手でしょうね、ヤニは」


 蛇神様の血筋的にはタバコが苦手でしょうね、と、

 口にする聖女様です。


「あー、胃のほうもすごい荒れようですね、

 というか、あまり働いていたような感じがしません、

 腸とかも結構、腐っている?感じですね、

 あと、肝臓にも、コブがありますね、腫瘍です?

 というか、蜘蛛の巣のように、内にいろいろ蔓延ってますね」

 

 下腹部まで切り開いて、観察するナギくんです。


「あまりにも手遅れと言う事例のお手本のような感じですね、

 まあ、これでも生きていたら、治せたのですが」


 ため息を一つつく聖女さんです。


「治癒術ってすごいのですねー」


 感心するナギ少年です、

 かのように、人体の構造を調べつつ、

 神域の聖女、母親の友人です、に、実地で学ぶ日々なのでした。


 蛇くんの五年目はこんな感じでございます。

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