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悪『役』令嬢  作者: mask


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革命の始まり

 王国で随一の監獄が首都の民衆たちによって襲撃されていた頃。

 アニタとシャルティアたちも首都に居ました。

 外では民衆の抑えきれなくなった怒りが暴走して農具や銃を持っています。

 アニタはシャルティア一家と肩を抱き合いながら襲撃が終わるのを待ちました。

 王国監獄では司令官や兵士が民衆によって虐殺され酷い有様。

 王様が首都に訪れてやっと襲撃事件は幕を閉じたのです。


 しかし秋になった頃。


「ええ!? 今度は宮殿にですか!?」

「そうだよ、アニタ」


 シャルティアの父が頭を悩ませます。

 外では民衆の、それも女性たちもが再び農具や斧を持って宮殿に向かっているというのでした。

 シャルティアの父はアニタがかつて宮殿で働いていたことをアニタから聞いていたので教えてくれたのです。


 アニタは急いで身支度をしました。

 今度こそミレーチェが殺されてしまうかもしれない。

 そう思ったからです。


「アニタっ! どこに行くの?」

「宮殿へ戻るのよ、シャルティア」

「宮殿って。今は危ないよ! 襲撃に巻き込まれちゃう!」

「だからこそよ」


 アニタはシャルティアの頬にキスします。

 

「未来のムッシュ。これからはあなたが旦那様たちを支えるのよ」

「アニタっ!?」


 アニタは首都を飛び出して走りました。

 襲撃の行進は荷車や武器を持っていたので走れば追い越せる可能性があったからです。


 土砂降りの雨の中、スカートの裾を摘み上げて走り続けました。

 何度も転びそうになり、数えきれないほど泥が跳ねても走り続けました。


 そして襲撃の行進よりも先に宮殿に辿り着いたのです。


「アニタ!」

 

 宮殿へ入れてもらおうとしたときに声をかけられます。

 なんと王国兵士になったカナリーでした。

 今夜は宮殿の門を守っていたのです。


「ああ! 大きくなったわね! カナリー!」

「うん! それよりもどうして宮殿からいなくなってしまったのさ!」

「そんなことよりも首都の民衆が向かって来てる! 私を中に入れて! ミレーチェに伝えないと!」

「民衆が? っ!?」


 遠くで雷のような民衆の怒号。

 アニタたちは雨の寒さ以上に青褪めます。


「早く中に入って! みんな! 門の守りを固くするんだ!」


 カナリーに中に入れてもらい、アニタは宮殿へ再び走ります。

 何度も兵士に遭遇しますが、血相を変えたアニタを見てみんなが一大事だと察したのです。

 すぐに宮殿に入れてもらえました。


「ミリー! ミリーはどこ!」


「アニタ?」


 臣下に案内されたアニタは叫びます。

 そしてすぐに降りて来たのはミレーチェでした。


「ミリー! ああ! やっと会えた!?」

「アニタっ!」


 二人は久しぶりの再会でハグをします。

 もう二度と離れないように強く強く。


「それにしてもどうしたのアニタ? こんな夜遅くに」

「首都の民衆がすぐそこまで来てるのよ! 身を守って!」

「そんな!?」


 ミレーチェにもアニタの焦りが伝わりました。

 その頃にはミレーチェの旦那である国王も子供たちも目を覚まして震えます。


 そしてついに宮殿の門が破られてしまいました。

 傷ついた兵士たちが宮殿へ流れ込んできます。


「陛下! 王妃様! すぐにお逃げください!」


 逃げる兵士を民衆は襲います。


 国王はバルコニーに出て民衆の怒りを抑えようと必死でした。

 しかし、民衆の要求はただひとつ。

 

「王妃を出せ!」


 これにミレーチェは凍えたような表情で反対します。


「民衆は銃も持っているじゃないの! 殺されてしまうわ!」


 いやいや、飛び出して子供のように駄々をこねるミレーチェ。

 周りもどうすれば良いのか悩むばかり。


 バルコニーの国王も時間稼ぎになってしまいます。


「王妃様のカツラをください」


 そこで言葉を発したのはアニタでした

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