不幸と別れ
それから二年後のことでした。
皇国からの急使が王国のミレーチェの元へ。
やっとストレスや散財から立ち直ったミレーチェに知らされた報。
それはーー
皇国の女皇であるミレーチェの母の病死でした。
「あ、あ、ああああああああっ!」
手紙を受け取ったミレーチェは崩れ折れました。
隣には一緒に遊んでいた娘の王女。
娘がそばにいるというのに幼子のように泣きじゃくりました。
アニタはその背中に触れて悲しみが消えるまで涙を流させるように促すしかありませんでした。
それからのミレーチェは悲しみのあまり部屋に引きこもってしまいました。
しかもアニタさえ部屋に入れてくれません。
その間に、侍女たちはアニタの悪い噂を流し続けました。
元々、爵位や位のないアニタはどんどん追い詰められ、側仕えの地位を追い落とされることに。
そうです。
アニタは役職がなかったのです。
ただただ王が愛妾を囲うように、ミレーチェがお気に入りのアニタを囲っていただけ。
そしてついにアニタは離宮だけではなく、宮殿からも居場所を失いました。
そこでアニタは再び仕事を探すことにしました。
初めはバーバラの元に戻ろうとも思ったアニタでしたが、一度出ていったのに迷惑はかけられないとマダム・ルジェの紹介で首都に向かいました。
そこで教師の仕事を募集していたのです。
高等教育を受けたことのないアニタでしたが、文字の読み書きや算術が出来ることで重宝されました。
そこでアニタは一人の少女と出会います。
その少女はアニタの授業をよく聞いてくれましたし、成績も良い子でした。
ただひとつの問題が、他の生徒に忌み嫌われていること。
実は少女の実家はムッシュ。
王国が定めた専属の処刑人の家系でした。
それもあって不幸の象徴として石を投げられることもあったそうです。
アニタは何度も他の生徒を注意し、少女の怪我を治療してあげました。
少女の名前はシャルティア。
後に処刑人を受け継ぐ子でした。
ですがアニタは気にしませんでした。
処刑人という職業は恐ろしかったですが、シャルティア自身には恐怖など感じずに親しくしました。
シャルティアも珍しく自分に優しく接してくれるアニタに心を奪われていきます。
そしていつしかアニタはシャルティアの実家で暮らし始めます。
それは奇しくもアニタが追い出されて一年が経過した頃で、国中が王太子誕生で賑わっていたときだったのでした。




