重なり2
「だったら私が小言を言うわ。心を鬼にして。私だって唯一の親友のミリーが大事だもの」
それがアニタの提案でした。
「小言?」
「そう」
「たとえば?」
「ミリー、買い過ぎよって」
ふふっと久しぶりかのようにアニタが微笑む。
「うん……うん!」
ミレーチェもアニタの手を取って頬をアニタの頬に擦り寄せます。
「ちょっと、ミリー?」
「やっぱりアニタは私の親友よ。誰もそんなこと言ってくれなかった」
それからというもの。
ミレーチェのそばにアニタは今までよりも引っ付くようになりました。
いいえ。
ミレーチェが手放さなくなったのです。
王との公開食事会でも、着替えのときでも、娘と遊ぶときも、秘密の仮面舞踏会のときも、ミレーチェはアニタを付き添わせました。
トイレやお風呂のときまでもです。
いつしかそれは宮殿のあり方を変えてしまいます。
本来は爵位にある家の夫人や娘がやる仕事もアニタがやってしまうのです。
彼女たちはそれはそれは面白くありません。
自分たちが王妃様に気に入られたいし、旦那や父親の政治のためには活躍しなければなりません。
しかし、アニタを排除しようにもそばにはいつもミレーチェが。
二人はまるで比翼の鳥でした。
そしてもっと面白くないのが髪結師や服飾師に商人たち。
ドレスにカツラ、宝石を買って欲しくて提案してもミレーチェがアニタに目線を走らせるのです。
甘えるように買って良い? かと。
だから商人たちはアニタに気に入られようと必死になります。
なぜなら売買の契約書にサインするのはいつもアニタだからです。
アニタはカツラやドレスのデザイン画に宝石のはめられたブレスレットやネックレスを一瞥すると、羽ペンを置いてしまいます。
今の王妃様には相応しくないと。
隣ではブーブーと文句を言うミレーチェですが、アニタには反対はしません。
ニコッと笑って商人たちを帰してしまうのです。
いつしか離宮ではミレーチェではなく、アニタにお伺いをたてる人間が増えました。
侍女たちも商人もそうです。
ミレーチェの気分をアニタに伺い、侍女たちは仕事を請け負い、商人たちはアニタが指示したものだけを運び入れるようになりました。
しかしそれでも散財は少ししか減りません。
なぜならアニタはミレーチェを思ってサインしてしまう甘さもあったのです。
ミレーチェに似合いそうなドレスや宝飾には渋々、筆を走らせます。
これが王の住まう宮殿では王妃のお気に入りの町娘風情が王妃を唆していると捉えられ始めていました。




