重なり
王妃ミレーチェの出産に国は活気づいたが、しかし産まれたのが王女だったため、手放しで喜んでくれなかった。
そこへ重なったのが新大陸で起こった独立戦争。
王国は大英国と対立していたため新大陸に暮らす合集国に多額の支援をしたのだった。
それもあって増税に増税。
国民の不満は募るばかり。
だというのにーー
「アニタ! 新作のカツラよ!」
「アニタ! 綺麗でしょ? 宝石よ!」
「アニタ! 今流行りはこのドレスらしいんだけど、どうかしら?」
王女を産んだミレーチェ。
だけど心はまだ母親よりも少女だった。
毎日のように商人や髪結師が来ては散財の始末。
しかし、アニタには止められませんでした。
それがミレーチェのストレス発散だと知っていたから。
ただ目に見えない金貨のやり取りに頭を悩ませていました。
ミレーチェは一応値段を確認しています。
ですが値段がいくらであろうとも気に入ればアニタにサインさせます。
たったそれだけ。
多額の金貨が動いてるのをアニタは見たことありません。
旦那である王から贈られた離宮で娘と着飾って過ごすミレーチェ。
派手で綺麗なはずなのに、アニタにはくすんで見えました。
毎日、楽しくお茶会で話すだけ。
時折、離宮を抜け出して兵士に怒られる。
そんな日々を楽しく思っていたアニタには今は楽しくなかったのかもしれません。
そしてそれはアニタだけではありませんでした。
ミレーチェ自身も肩を落とし始めます。
自分は皇国にいた少女ではない。
今ではこんなに綺麗で美しい王妃になったのに、アニタはちっとも喜んでくれないと。
「ねえ、アニタ」
そしてついに耐えられなくなったミレーチェ。
「どうして嬉しそうにしてくれないの? アニタが望めば私、何だってしてあげられるのよ?」
「……ねえ、ミリー」
不安げなミレーチェの手をアニタは取ります。
「この髪でどれだけの人が小麦を買えると思う?」
「この宝石でどれだけの子供が教育を受けられると思う?」
「このドレスでどれだけの赤ん坊が生きられると思う?」
思わずといった吐露でした。
産まれながらの高貴な存在だったミレーチェと町娘でしかなかったアニタの価値観の違い。
ミレーチェはそこでやっと気付いたのでした。
どんなに親しくても交わらないのだと。
「だったらどうすれば良いっていうの!」
ついには激昂。
もしかしたらミレーチェはアニタには初めて怒ったかもしれません。
対してアニタは冷静に受け止めます。
「毎日毎日辛いの……しきたりとか、契約とか。だから、私は……」
「分かってるわ。だから私はあなたの生き方を否定しない。そばにいるわ」
「でもそれではアニタは喜んでくれないんでしょ? 嫌よ、そんなの。私のたった一人の親友なのに」
グッとドレスの裾が握り潰されました。




