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悪『役』令嬢  作者: mask


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再会3

「ですが脱走は脱走です!」

 兵士は再び声をあげる。

「だったらアニタを城に呼んでちょうだい」

「また私っ!?」

「なーに? 嫌なの?」

 ニコッとミレーチェが笑いかける。

 そう言われるとアニタは何も言えない。

 だって彼女を追って皇国から王国に来たんだから。

「馬車の準備が出来ました」

 別の兵士が輪に合流する。

「行きましょう、アニタ!」

「み、ミリー!」

 強く、アニタには抗えないほど強く手が引かれる。

 石畳を踏み、泥を蹴飛ばし、服を汚してもミレーチェは楽しそうだ。

 アニタも混乱していたが、次第に八年前を思い出して笑みを漏らす。

「もう。今度は王国の人を困らせているのね?」

「だって宮殿は窮屈なんですもの!」

 騒ぎながら用意された馬車に乗り込む。

 そこでぎゅっとミレーチェがアニタを抱き締める。

「本当に……来てくれたのね」

 先ほどまでと変わって、しおらしい声。

 横柄な態度が幼くなっていく。

「追いかけて来ちゃった。迷惑じゃない?」

「迷惑じゃないわ!」

 ガバッと顔をあげて頬を赤くする。

「だって、本当は一緒に来て欲しかったの! でも、そこまでしたらあなたの、アニタの人生も変えてしまいそうでーー」

 ミレーチェの言葉を奪うように、今度はアニタがミレーチェを抱き締める。

「もう、あのときに変えられちゃったよ。私はミリーが居なくなって、すごく寂しかったんだよ」

「アニタ……」

 ミレーチェもアニタを抱き締め返す。

 こうして二人は再会した。


 

 それからというもの、何かある度にミレーチェはアニタを宮殿に呼びつけるようになっていた。


 そしてーー


「お世話になりました、バーバラさん」

「ええ。しっかりやりなさいよ」

 ミレーチェと再会して一年後。

 アニタは宮殿勤めが決まった。

 ミレーチェの周辺の世話をする、とても位が高い仕事。

 本来なら爵位のある家の夫人や娘の仕事だが、ミレーチェが全ての候補を拒絶してアニタを据えた。

「また会える?」

 今にも涙を溢しそうなカナリー。

 すっかり背も伸び切って大人顔負けだが、それでも愛らしい顔だった。

「ええきっと」

 アニタはカナリーを抱き締める。

「私、立派な兵士になって宮殿に行くから!」

「うん!」

 ハグをやめてカナリーの涙を指で拭うアニタ。

「行っちゃや〜!」

 もっと大変なのは喋れるようになったフェルナンドだった。

 今まで、うー、やーだったのに、今ではすっかり母親のバーバラよりもアニタに甘えるようになってしまっていた。

「よいしょっと」

 最後にアニタは重くなったフェルナンドを抱きあげる。

 もう両腕でも辛い。

 だけど四年も面倒を見て来たのだ。

 自分の子供じゃなくても愛着が湧いてしまう。

「愛してるわ、フェルナンド。二人をよろしくね」

 両頬にキスをする。

「じゃあ行って来ます!」


 この年。

 ミレーチェに初めてのお姫様が誕生する。


 しかし、財政は悪化が止まらなくなった。

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