再会2
「ミリー……?」
八年ぶり。
少女から女性のトップとなった王妃ミレーチェだった。
「アニタ! アニタっ!」
「わ、わっ!?」
ミレーチェは興奮してアニタに抱きつく。
そしてそのままーー
べちゃり
二人は泥に倒れた。
「あ! ごめんなさい! 大丈夫、アニタ?」
「い、一応」
今度はミレーチェが手を差し伸べる番だった。
立ち上がるアニタ。
服からはぽたりぽたりと泥水。
「まあ! アニタ! 泥だらけじゃない!!」
「うんおかげさまでね」
本来なら怒るべきだろう。
だけどアニタはにっこり笑う。
「久しぶり、ミリー。でもよく分かったわね?」
「ええ! すぐに分かったわ! だってその愛しい人参頭はあなたしか知らないもの!」
「も、もう!」
人参色の髪を揶揄われたが、頭ごと愛しそうに抱き締められてしまったら怒るに怒れないアニタ。
「ああ、でもどうしよう! すぐにお風呂に連れて行ってあげたいんだけど今は無理なのよ」
「どうしたの?」
「実はーー」
「王妃様っ!?」
その叫びにミレーチェが肩を跳ねあげる。
アニタがミレーチェの背後を見るとぞろぞろと王国兵が駆けつけてくる。
その数はすぐに二十人以上。
私たちは逃げられないように囲まれる。
「やっと捕まえましたぞ!」
「さあ! ご覚悟を!」
まるで睨みようにまなじりをつりあげる兵士たち。
ぎゅっとミレーチェがアニタを抱き締める。
「ミリー、あなたは何をしたの?」
「何って。ちょっと散歩をしに来ただけだわ!」
「脱走でございます!」
兵士の一人が悲鳴のように叫ぶ。
「もう何度目でございますか! いい加減にしてなさってください!」
「あなたはこの王国の王妃なのです! 子供のように逃げ回らないでいただきたい!」
「ああもう! うるさいうるさい! ずっとお城でしきたりばっかりで嫌なのよ! つまらないし疲れるんだもの!」
そこでミレーチェの視線がアニタへ。
「アニタも何か言ってよ! 王妃だってたまには休みたいって!」
「え? ええっ! 私っ!?」
ミレーチェに集まっていた視線が一気にアニタへ。
お前は誰だ? とでも言いたげな視線だ。
それを受けてアニタは言葉を詰まらせてしまう。
「王妃様、その女は?」
「私の親友よ。皇国時代からのね! ねえ、アニタ?」
「は、はい」
緊張で声が上擦ってしまう。
それが逆に怪しまれてしまう。
「怪しいな。だったら皇国語を話してみろ」
疑いの言葉に、アニタはヒュッと息を呑む。
《しっかりしてよアニタ》
ミレーチェが皇国語でアニタの背中を押す。
《はい。王妃様とは皇国時代からの関係でございます兵士様》
半ば忘れかけていた生まれ育った言葉で兵士に返す。
それで兵士の表情が変わった。
「おい。今なんて言ったんだ?」
「俺に聞くなよ」
「誰か皇国語が分かるやつは居るか?」
なんと兵士たちの言葉はハッタリで誰も皇国語が分からなかったらしい。
だけどミレーチェにだけ伝わっていることに気付くと納得した。




