再会
アニタが王国で暮らし始めてから三年の歳月が経ちました。
彼女も王国での生活に慣れ、初めは揶揄われていた皇国訛りの言葉も今ではすっかり現地の王国民並みの発音が出来るようになり、すっかり馴染んでいます。
対して王国は沈んでいました。
先王が崩御してから財政は悪化するばかり。
そして国民の一番の不満はーー
「赤ちゃんがまだみたいね」
バーバラの息子であるフェルナンドと遊んでいたアニタ。
そのときにバーバラがため息を吐きました。
「あら? まさかもう三人目ですか?」
「そうじゃないわよ。王妃様の話! もう二十二よ。私はもうカナリーを産んで育てていた歳だもの」
「ま、まあ。そういうのは巡り合わせですもの。ねえ、フェルナンド〜?」
話題を逸らそうとするアニタ。
しかしバーバラは逃がさない。
「アニタ、あなたもよ? うちで働いてくれるのは嬉しいけど、そろそろ相手でも見つけたらどうかしら?」
「ううっ、そうですね〜」
アニタも二十一歳になっていた。
当時では行き遅れと言われてしまう年齢に片足を突っ込み始めている。
王妃であるミレーチェは国王という夫が居て行き遅れではなく、ただ子供が居ないだけ。
この差はかなり大きいものだ。
「知り合いを紹介しましょうか?」
「え? いえいえいえ! 今はまだ、そういう気分にはなれなくて」
ミレーチェと突然の別れからすでに八年。
王国に来れば会えると思っていたが、相手はすでに王妃様。
同じ国にいるというのに未だに会えないでいる。
「……そう。だったら強制は出来ないわね」
それでも、という瞳がアニタに突き刺さる。
「私は助かるけど、いつまでもここで働くわけにはいかないでしょ? 独り立ちしないと」
「あはは……」
バーバラからしたら善意なのだろうが、アニタからしたらお節介だ。
「ちょっと水を汲んできますね」
「あらそう? いってらっしゃい」
水甕にはまだ水があったが、逃げるためにアニタはバケツを手にして家を出た。
「はあ。気まずい。でも本当に結婚は考えてないんだもの」
もうすぐ日が暮れる時間帯。
人々は夜になる前に最後の一仕事として駆け回る。
「きゃ!」
目の前で誰かが泥に足を突っ込んで悲鳴をあげる。
上等な白いローブが泥はねで汚れた。
まるでミレーチェのようだ。
運命を感じたアニタはローブの人物に声をかける。
「今朝、大雨でしたからこの辺りはぬかるんでいますの」
手を貸して地面がぬかるんでいないところへ。
「これを使ってくださいな」
アニタはエプロンを外してローブやブーツの泥を落としていく。
水っぽい泥はねはすでに吸ってしまってるが、何もしないよりは良かった。
「……アニタ?」
名前を呼ばれて肩が跳ねあがるアニタ。
恐る恐る顔をあげた。




