新生活4
バーバラの娘であるカナリーはどうやら女の子らしい愛らしい顔をしながら背も高く男勝りらしかった。
彼女の教育にバーバラはほとほとに困っているという。
家のことも手伝わず、食事のとき以外は木剣を振ったり、街の男の子と遊んだり。
性格や行動は女の子らしくないとか。
「はあ。あの子もアニタのように家事がなんでも出来れば将来困らないんだけどね」
「でもあれだけ元気なのは良いことだと思いますよ?」
先ほどのことを思い出して微笑むアニタ。
「でももう十歳よ? それなのに未だに剣を振り回して遊んでばかり」
「十歳! だいぶ背が高いんですね!」
そこで編み物をしていたバーバラの表情が優しく変わる。
「ふふっ。そうなのよ。背はお父さん似なの。私の旦那も背が高くてね」
「へえ。そういえば旦那様はどちらに?」
ふと男性が誰もいないことに気づくアニタ。
働きに出かけているのかと思っていたが、日が暮れて夕食が終わっても帰って来ない。
「王国軍の兵士よ。あと半年は帰って来ないんじゃないかしら」
「まあ! 名誉な職ではありませんか!」
「名誉じゃないわよ。おかげで娘がパパと同じ王国軍の兵士になるんだって聞かないんだから」
当時から王国軍の兵士は男の務め。
女性がなるものではなかったが、それでもカナリーは諦めずに毎日運動をしているらしい。
「今は良いけど、戦争になんかになったら戦場に行くのよ? 夫までじゃなくカナリーまで行かせたくないの。これっておかしいかしら?」
「いえいえ! そんなまさか! おかしくなんてありませんわ! それこそ母親の心ですもの」
アニタの言葉にバーバラはフッと息を漏らす。
「あなたにそう言ってもらえて良かったわ。夫が帰って来たら一度三人で話してみる。この子も居るしね」
そう言ってバーバラは自分の膨らんだお腹を撫でる。
そこにはカナリーの弟か妹になる予定の新しい命が授かっている。
確かにこの子のためには心配させたくないという心はアニタも感じる。
「でも大丈夫ですよ。皇国と王国が仲良しになるために皇国から王妃様がいらしたのでしょう? きっと良い国を作ってくれますよ」
「うーん。そうかしらね。私たちの住む都市ではまだ平気だけど農村とかの地方は貧困が酷いって聞くわ。また小麦の値段があがったみたいだし」
「まあ! そうなのですね! 小麦があがっては困りますもの。今年は不作だったのかしら」
このときの二人はまだ小麦の価格上昇は一時的なものだろうと思っていた。
崩御された先代国王が政治を間違えていた。
だから新しく即位した現国王がきっと良い政治をしいてくれると信じていた。




