新生活3
バーバラの話が終わり、アニタは与えられた部屋に荷物を置く。
「ふう。さて!」
鞄からエプロンを取り出す。
「あらもう働くの?」
「ええ。何か不味かったでしょうか?」
「ううん! やる気があって良いわね! だけど、汚れるかもしれないし、着替えた方が良いわ。その〜、高そうな衣装」
「え? ああ! そうですね!」
バーバラには一度部屋を出てもらってアニタは奮発した一張羅から汚れても良い普段着へと早着替え。
「お待たせしましたバーバラさん。ああいえ、奥様とお呼びした方が良いですか?」
「奥様だなんて良いのよ。旦那が少し稼いでるだけで貴族じゃないんだから。バーバラで良いわ!」
「分かりました。バーバラ。まずは何をしましょうか?」
そのあとは酒場での経験が活きて難なく家事をこなしていくアニタ。
そこに騒がしい声。
「まあ! カナリー! また泥だらけになって! そんな格好で家に入らないでちょうだい!?」
もうすぐ夕暮れ時。
夕食の準備をしていたアニタにも叫ぶようなバーバラの声が聞こえてきて思わず台所から顔を出す。
玄関で腰に手を当てて叱るバーバラ。
叱られていたのはバーバラと同じくらいの背丈の子。
小柄なバーバラと並ぶと歳の離れた姉妹のようで、可愛らしい表情をした女の子だった。
「ママン! 私また男の子に勝ったのよ! 凄いでしょ?」
「また喧嘩したのね! もう! 女の子は喧嘩なんてするもんじゃないってあれほど……」
呆れ返るバーバラ。
それでも女の子は嬉しそうに喧嘩の出来事をバーバラに語る。
「えと。何事もないということでしょうか?」
流石に気まずかったのでバーバラに声をかけるアニタ。
それに気づいてバーバラは苦笑する。
「ごめんなさいね。これがうちの子よ。娘のカナリー。カナリー、今日から家の仕事をしてくれるアニタ」
「ふーん?」
カナリーはアニタの目の前に立つと、一度見上げて、足先まで見て、また見上げる。
「今度の人は大丈夫なの? またお金を盗まれない?」
「まあ! なんてことを言うの! カナリー!?」
「だってそうじゃない! おばちゃんの代わりに来た人は家のお金に手を出して私が追い払ったんだよ?」
「え? え?」
突然の話にアニタは追いつけなくなる。
「あんな人と一緒にしないの! アニタは優秀なんだから! ね? アニタ?」
「は、はあ。優秀ではないと思いますが」
「本人はこう言ってるけど?」
「そんなことないわ! だってあなたは簡単な計算も出来ないじゃない! お金を出して学校にまで通わせているのに!」
「だ、だって! 面白くないんだもん! それに女の子は裁縫とかがほとんどだし! 私だって男の子みたいに木剣で訓練したい! あいたっ!?」
まさかの女の子に脳天拳骨。
それを見たアニタもヒュッと息を呑んだ。




