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勇気の悪知恵
その瞬間、廉は怒りのあまり我を忘れ、車を飛び出し勇気を追った。
「勇気!」
だが、勇気は立ち止まらない。
「勇気、待ちなさい。」
廉は肩を掴んで、こちらを向かせる。
「触んな。何なんだよ。」
「勇気、謝りなさい。」
「何を?」
「志那人、国に帰れと言った事だ。」
「馬鹿じゃねえの?」
カッとなった廉は怒りのあまり、勇気の腹を殴った。
「いい加減にしなさい。」
「いつもさ。気に入らないことがあると暴力を振るってさ。」
勇気は声を荒げて、周りに聞こえるように喚きちらす。
「・・・・・・いつも?暴力ってなんだ?」
「だから、いつも気に入らないことがあると、僕を殴って来るじゃないかよ!」
なんだ?何を言っている?確かに今、おなかを一発殴ったが、今まで殴ったことはなかった。どういう事だ?困惑する廉に勇気は耳打ちする。
「良いのかよ?皆見てるぜ。子供に対するDVで告発してやろうか?」
廉が周りを見渡すと、正面に止められた車内から子供を送ってきたらしい母親がジッとこちらを見ている。
「とっとと帰れよ志那人。永住権取り消しになるぞ。」
「・・・・・・・。」
廉は恐るべき悪知恵を巡らす、勇気に対して恐怖感を覚えた。
「分かった。行きなさい。」
廉が折れたのを見て、勇気は笑いながら学校に向かった。それを廉は黙って見送った。




