新しい父親は台湾人
父の安達廉(仮名)は息子の安達勇気(仮名)の顔色を窺いながら、車を運転する。
「・・・・・父さんの言った通りだったろ。WBCの連覇は無いって。」
「・・・・・・・。」
今年、日本の連覇が期待されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)だったが、井端監督の統率力のなさが響き、日本は連覇を逃した。車内の沈黙に耐え兼ね、廉は息子にその話題を振った。
「そんなに嬉しい?」
勇気がボソリとだが呟いた事に、廉はホッとした。話の取っ掛かりが出来たからだ。
「嬉しいって言うか、言った通りだっただろ。」
「・・・・・・志那人は日本が負けると嬉しいもんね。」
「・・・・・・・。」
廉は勇気の皮肉に沈黙した。廉は在日帰化の台湾人である。それを勇気は皮肉ったのである。
「志那人て何で反日なのに日本に居るの?国に帰ればいいじゃん。」
「・・・・・・お父さんの国は日本だ。帰化して日本に忠誠を誓ってる。勇気は志那と台湾を同一視してるけど、全く別の国だよ。」
「・・・・・・・。」
「父さんは自分の事は日本人だと・・・・・。」
「だから、父さんって言わないでくれる。あんたは俺の父さんじゃないだろ。赤の他人だから。」
「・・・・・・・。」
勇気の辛辣な一言。廉は勇気の義父。勇気の母親が離婚した後に再婚して親子になったのだ。血の繋がりは無い。
「そんな言い方はないだろ。例え血の繋がりが無くても、法律的には親子になったんだ・・・・・・。」
「うっせえ!志那人。国帰れ!」
勇気は罵詈雑言を浴びせると、車を降りて、学校へ向かった。




