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そのメール、代筆いたします  作者: 蒼井スカイ
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19/24

14.初めてのショッピング(前)

本日は2本立てでお届けいたします。ぜひ最後までお楽しみください。

「理桜、せっかくだからお揃いのパジャマにする?」

「えっ?」

「お揃いって、恋人っぽくないか?」

「あぁ~、確かにそうかもしれませんねっ」


 公園から車で15分のショッピングモールに到着し、私たちはさっそくパジャマやお泊りセットを買うことにした。インテリア雑貨のお店の前を通った時に、カップル向けのお揃いのデザインのパジャマがハンガーにかけられていたのに気づき、どちらともなく足を止めた。


「理桜はどんなデザインのパジャマがいい?」

「そうですね~、これからの時期は暑いですから、肌触りがサラッとしてて、涼しそうなものがいいですね」

「そうだな、これから夏だしな。半袖に短パンってとこかな?」

「あ~、あれ可愛い……」


 思わず歩み寄ってしまったのはサテン生地のキャミソールと短パンのセットアップのパジャマに目を奪われたからだ。その隣にはお揃いのデザインのメンズ用半袖・半ズボンもハンガーにかけられていた。


――ついデザインが可愛くて手にとっちゃった。実際に着る訳でもないのにはしゃいじゃって恥ずかしい……。


「いいんじゃないかな? 理桜に似合うと思うよ。デザインもシンプルだし、この生地、接触冷感でひんやりしてるみたいだからこれからの時期にぴったりだな。じゃあ、俺は同じデザインのこれにしようかな」

「私が決めちゃってもいいんですか?」

「もちろん」



 結局、パジャマだけでなく、替えの着替え一式や下着まで購入してもらうことになってしまった。


――まさか、替えの下着まで買うなんて……。樹さんに下着のサイズ、バレたかも……。はぁ~、何だか本当に同棲する準備をしてるみたい……。


「さて、メイク道具とかも必要だよね?」

「えっ、でも、さすがにそこまでは――!」

「理桜、中身もしっかり作り込む必要があるって言ったろ?」

「そうでした……じゃあ、次は化粧品売り場でお願いします」




「お客様、完成しましたよ。ぜひ、ご覧になってみてください」

「――えっ、これが私っ?」


――嘘っ、まるで別人みたい……。私じゃないみたいだ……。肌に透明感があって、厚塗りしてないから、肌の表面もサラッとしてる。


「理桜、普段の理桜も可愛いけど、とっても綺麗だよ」

「――樹、さん……」

「こちらのシリーズは添加物を使用していないので、お肌にもやさしくて、メイクしたまま寝てしまっても大丈夫なんですよ」

「えっ、そうなんですか?」

「はい、どの商品にも天然の保湿成分を配合していますので、お肌への負担が少なく、むしろスキンケアをしているのと変わらない効果が期待できるんです」

「理桜、どう? 気に入った?」

「――はいっ、メイクしてると思えないほど肌表面も軽くって、付け心地がとてもいいです」

「じゃあ、今使用したメイク一式とスキンケア一式ももらえるかな」

「はいっ、承知いたしました。只今、準備して参ります。こちらでおかけになってお待ちください」

「あぁ、ありがとう」

「お客様、素敵な彼氏さんですね」

「――あ、はい……」


 美容スタッフはぼそりと耳打ちした後、購入商品を準備しにその場を離れた。


「樹さん、仮とはいえ、こんな高価なものを揃えてもらってもいいんでしょうか……」

「あぁ、もちろん。けれど、使わずに置きっぱなしになるのはもったいないな……」

「……」




「お待たせいたしました。こちら商品になります。よろしければ、こちら当ブランドの新色の口紅です。お客様にお似合いになりそうなお色を選びましたので、ぜひデートの時にでもお試しくださいね」

「あっ、えっと……」

「ありがとうございます。彼女が気に入ったら、また買いに来ます」

「はいっ、ぜひ、お待ちしております」



「理桜、ここにはベッドの実物は置いてないみたいだ。大型家具店に行った方がいいものが見つかるかもしれないな。一旦、移動しようか」

「そうですね」





 ショッピングモールから車でさらに10分程の場所に大型家具の展示販売をしている家具店に着いた。ベッドは2階のフロアにあるそうで、エスカレーターで上の階に向かった。


「わぁ~、ベッドだらけだ……」

「本当だな、俺のもそろそろ買い替えようかな」

「樹さん、今お住まいのマンションは長いんですか?」

「あぁ、就職と同時に引っ越したからな、9年位になるかな」

「マットレスってどれくらいで買い替えるんでしょうね?」

「最近、寝返りを打つ度にきしむ音がするから、替え時かもしれない」

「あ~、確かに、それは気になりますね」

「せっかくだから、理桜、俺のマットレスも一緒に探してもらおうかな」

「はい、でも、私、寝心地のいいマットレスがどうかなんて分からないですよ?」

「うん、まぁ、1回横になったところじゃ分からないよな。それでも、比較した中で良さそうなものを選べばいい」

「そうですね。樹さんの睡眠の質が上がるようなマットレスを一緒に探しましょう」

「――あぁ、頼むよ」


――誰かと一緒に買い物をするって、こんなに楽しいんだ。そういえば、男性と買い物するのはこれが初めてだ。

 前職で付き合うことになった先輩とは恋人らしいデートもせずに浮気相手だと知らされたからな……。あー、止めやめ! また嫌なこと思い出しちゃった。今は樹さんと買い物を楽しんでいるところなんだから。


「理桜? どうかした?」

「あっ、えっと、その……」

「ん?」

「それが……誰かと一緒に買い物をするのは楽しいんだなって思ったんです。そんなことを考えてたら、私、男性と一緒に買い物をするのって、今日が初めてだってことに気づきまして……」

「そうなの?」

「はい……」

「――俺が初めて……何かその響き、いいな」

「えっ? 樹さん、今何て?」

「いや、何でもないよ。ほら、まずは理桜のベッドから探しに行こうか」


 彼は何故かうれしそうだった。その理由までは分からなかったが、ベッドを探しているうちにその小さな疑問はすっかり消えていた。


 彼と一緒にマットレスの寝心地を確かめたり、仮の私室に置くベッドフレームを探したりするのはとても楽しかった。


「じゃあ、理桜のベッドフレームはこれで、マットレスはさっきのセミダブルでいいんだよな?」

「はい、あのマットレスなら、ゲストルームとして大人の男性が寝ても安心なので大丈夫だと思いますよ」

「――理桜、そこまで考えて探してたのか?」

「はい、実際に私が使うことはないですから。樹さんのご友人がいらした時に使える方がいいですし」

「――そうだな……次は俺のマットレスか……」


――ん? 今の間は何だったんだろう? 樹さんの表情が少し硬かったような……。気のせいかな? 私、別に変なこと言ってなかったよね……?





「樹さん、いいマットレスが見つかって良かったですね」

「あぁ、理桜にも寝心地を確認してもらったから安心だな」

「マットレスとベッド、寝具は明日配送してもらえるんですよね?」

「あぁ、そう言ってたな」

「何だか新しい家具が来るのって、ワクワクしますよね」

「俺は別に何とも思わないんだけど、女性は普通、そういうものなの?」

「どうでしょう? あくまでも私個人の感じ方にすぎませんが。もしかしたら私が変わり者ってだけなのかも」

「ははは、前向きなところが理桜らしいな」


――あぁ、良かった。いつもの樹さんだ。さっきまで雰囲気がいつもと違ったから心配だったけど、いつも通りの樹さんのやさしい笑顔だ。さっきのは私の気のせい? 考えすぎだったかな?


「理桜、他に必要なものはある?」

「パジャマと替えの着替え、メイク道具にスキンケア……これだけあれば十分ではないでしょうか? あっ」

「ん? どうした? 何か買い忘れた物でもあった?」

「あの、先に車に戻っていてもらってもいいですか?」

「買い忘れがあるなら俺も一緒に行くよ」

「いえ、これは私が欲しいものなので、樹さんは車で待っててください」

「――分かったよ。先に戻ってる。車の場所は分かる?」

「はい、確か、Cの……」

「4階のCだよ。車が見つからない時は俺に連絡して」

「はいっ、そうします。じゃあ、行ってきます」




 私が向かったのはインテリア雑貨がある1階のフロア。お目当てのものはすぐに見つかった。


「これも可愛いなぁ。1組あればいいよね……あっ、でも、念のため、それぞれの家に置いておいた方がいいよね。どうしよう、こっちも可愛いけど、このシンプルなデザインのもおしゃれでいいなぁ」


 結局、その場であーでもない、こーでもないと1人で呟いて、どのデザインにしようか悩むこと15分。


「いけないっ、もうこんなに時間が経ってる! 樹さんを待たせてるんだった。早く買って駐車場に戻らないとっ」





「樹さんっ、お待たせてしまってすみませんっ。どれにしようか悩んでたら、あっという間に時間が過ぎてて……」

「いや、それはいいんだけど。欲しいものは買えた?」

「はいっ、お陰様で買えましたっ」

「そう、それならいいけど……じゃあ、理桜のお泊りセットは全部揃ったし、物を置きついでに俺のマンションの部屋も案内するよ」

「――あっ、はい……」


――そうだった。誰かに聞かれても慌てず答えられるように、樹さんのマンションの間取りを頭に入れておく必要があるんだった。しっかり忘れないように覚えておかないと。




「そろそろいい時間だね。今日は理桜にお昼をご馳走になったから、夜は俺が腕を振るうよ」

「――えぇ! 樹さん、お料理するんですか?」

「うん、まぁ1人暮らしも長いからね。といっても簡単なものしか作れないけどね」


――樹さんの手料理っ! 食べてみたいなぁ。


「理桜、『俺の手料理食べてみたい』って感情、顔に出てる」

「えっ!」

「本当に、理桜は分かりやすいな」


 彼はそう言うと、自分の手を私の頭に置いて、やさしく撫でた。


 その瞬間、胸の鼓動がドクンと大きく高鳴った。


――この胸を締めつける感じ、何だろう……。脈も心なしか速くなってる気がするし……。どこか悪いのかな。





「理桜、パスタでもいいかな?」

「はいっ、何でも大丈夫ですっ」

「えーっと、内臓系と甲殻類、貝類と、後は確か……あぁ、ナッツ類、豆類だよな? 理桜の苦手なものって」

「えっ、樹さん、私の苦手なもの、全部覚えてたんですか?」

「記憶したって言ったろ。それに、また食事に付き合ってもらうつもりだからね」

「……!」

「ふっ……俺が作ってる間に、理桜は今日買った物を部屋にしまっておいで。部屋の中にあるものは全部自由に使っていいから」

「はい、分かりました」

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