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皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞⑥ ~陰りの闇が刻む痕跡《あと》~  作者: norito&mikoto
第8章 己のすべてと……

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第3話・君を縛るは己のためで ~それでも決して失くしたくないもの~

第8章 己のすべてと……



   第3話・君を縛るは己のためで ~それでも決して失くしたくないもの~



『……ぼくの、ぜんぶを、あなたの、ために……』




 アインがインスの耳元でそう囁いたのは十日ほど前のこと。




 いずれ()()なるように、積極的に誘導みちびいた部分もあるインスが驚くほど速く、アインはその狂気にも似た情念おもいに至った。至ってしまっていた。




「……アイン君を、護りたいのは、私の私欲(エゴ)です……それに、アイン君が、何かを()()必要も、()()()()必要も……なかった……」




 そこに至る前で、方向転換させるつもりだったのに……




「……インス、さまは……」




 ぽつりと、アインの唇から、おとが零れて床に落ちる。




「……私になんか……捧げてはダメなんですよ……」




 それに気づきながらも、薄く口元に笑みを這わせたまま。



 アインを見ることができないままで、インスは言葉を続ける。




「……こんな……()()個人の私欲(エゴ)に……差し出していいものじゃ、ありません……」




 君はきれいな存在だから……




「……っ……!?」




 インスの視線はいまだに床に固定したままなのに、その、慈しみに満ちた眼差しを感じて、アインは息を飲む。




「……この世界の、すべてが君を祝福するでしょう……何者にも、穢すことなど許されない……()()()()の存在ですから……」




 むしろ、穢そうとする(そんな)者がいたら、全力で殲滅しようと考えるほどに、インスはアインを……想っている。




「……だから、逆じゃないと、ダメなんです……」


「……逆……?」




 そこで、漸くインスは顔を上げ、アインの方を向いた。




 どこか、消えてしまいそうな儚さを感じて、不安で胸が潰れそうになりながら、アインはその言葉を繰り返す。




 首を傾げたアインに、そっと、恐れるように手を伸ばし、ほんの少しだけ躊躇ってから、インスはアインを抱き寄せた。




「……っ……!?」




 びくっと震えたアインの様子に、インスの腕も震えて、抱擁を解きそうになる。



 けれど、敏感に察したアインがインスの服の胸元をぎゅっと掴んで、インスもまた、強張る腕に力を込めて堪える。




「……私の、すべてで、君を護りましょう……君の幸福(しあわせ)を、何よりも、切望(ねがって)います……」


「……っ……。ィ……ンス……さま……?」




 私のすべてと引き換えて。


 それで願いが叶うなら、この()()のすべてを賭けよう。




 誰にも、何にも、邪魔などさせない……




 たとえ()()()が滅んでも。


 ()()敵に回しても。




 恐れるものなど、何もない……




 うっすらと、口元に笑みを浮かべるインスの……その瞳が、怜悧な光を宿したことにアインは気づかない。




 思いもしなかった言葉に硬直し、呼吸すらも止めて、半ば意識が飛び掛かる。




「……諦めて下さい。アイン君……どうやら、私はもう……君を逃がして、上げられそうにありません……」




 そんなアインの様子に苦笑して、ふわりと微笑んだインスは……




「…………っ!?」




 そっと、アインの額に軽く口づけて、驚いたアインはパッと顔を上げ、目を丸くしてインスを見つめる。




 驚きすぎて、心臓が早鐘のように鼓動を刻み、喘ぐように呼吸を再開させた。




「……謝罪はしません……私の自己満足を、君に許して貰おうとは思いませんから……」




 パクパクと、言葉にならない言葉を刻むように口を開けたり閉じたりするアインに、極上の笑みを向ける。



 こつん、とアインの額に、額で触れて……インスの赤みを帯びた紫色の、やさしさとあたたかさを宿した眼差し(ひかり)にアインは見蕩れて息を飲む。




「……君のすべては、私のものです……」




 それは、恐ろしいほどの独占欲を滲ませる宣言で、一瞬、触れ合う額が熱くなる。




「……………っ!!」




 びくっと微かに跳ねたアインから額を離して続ける。




「……そして……私のすべては、君のものです……」




 言いながら、掠めるようにアインの唇を自分の額に触れさせたインスに……




「……………ぁ」




 恐怖よりも喜びを感じてしまったアインは、くたりと体から力が抜けて、インスの胸にもたれかかった。


第8章第3話をお読みいただきありがとうございます。


今回は、二人きりになった病室で、インスがずっと胸の内に秘めていた「本当の想い」をアインに伝えました。


アインを追い詰め、傷つけてしまったことへの深い自責の念。


そして、それ以上に彼が抱いていた、アインに対する「個人的な私欲エゴ」。


いつも完璧で余裕のあるインスが、初めてアインの前で見せた脆さと、その奥に隠された底知れぬ愛情の深さ……。


二人の関係性が決定的なものへと変わる、静かで、美しく、そしてどこか恐ろしいほどに純粋な「誓い」の瞬間……。


インスからのとんでもなく甘くて激重なセリフ(と行動!)が飛び出して、「えっ、これってもしかして、そっち系の展開!?」とドキドキされた方。


この二人の間に、いわゆる「恋愛感情」は1ミリも存在しません(笑)


それとは全く別のベクトルで限界突破してしまった二人の明日はどっちだ!?


次回もお楽しみに!


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第6弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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