第2話・張り詰めた空気の理由は ~彼らの間の正しい認識~
第8章 己のすべてと……
第2話・張り詰めた空気の理由は ~彼らの間の正しい認識~
一時間ほど後、病室に一同が戻ると、なぜか空気が張り詰めていた。
どこか困ったような表情であることが分かるほどに困っているクロードと、張り詰めた頑なさを隠しもしないインスを目にして。
「……何で状況が悪化している……?」
本気で分からないと言いたげに呟いたのはウスニー。
「……けんか、してるの……?」
シリウムの腕に抱かれたままのアインが心配そうに、怯えた声で問いかけた。
「いいえ? していませんよ」
「……してない……」
にっこり笑って答えたインスと、困ったように答えたクロードの声が重なるが、誰がどう見ても『何事もない』状態ではない。
「……とりあえず、お前らの喧嘩は置いておく……」
はーっ。と重い溜め息を漏らして言ったシリウムに……
「してません」
「してない」
またも二人の声が重なって、重い溜め息と、困惑混じりの眼差しとが室内に交錯する。
「……そろそろ神殿に戻らないといけないからな。インス。アインと話があるなら、少し時間を取るが……」
「……そう、ですね……お願いできますか……? アイン君がよければ、ですけれど……」
話が進まないとばかりにシリウムが言えば、一瞬視線を彷徨わせたインスは、ややあって少し困ったように微笑む。
「……っ……! ……っ……!」
その、どこか距離のある空気感に、アインは言葉もなく一生懸命に頷いて、シリウムから「落ち着け! 落ちる!」と注意されていた。
「……取れて後、一時間が限界だ……修復しておけ」
「…………わかり、ました……」
「……しゅうふく……?」
インスの隣にアインを下ろして告げたシリウムに、インスは僅かに言葉に詰まり、アインは不思議そうに首を傾げる。
その、アインの頭を軽く撫でて、シリウムは「他は全員外に出ろ。」と退室を促す。
「「……………」」
二人きりで残された病室に、何とも言えない奇妙な沈黙が落ちた。
「……アイン君は……」
「……はい……」
ややあって、重い唇を開いたのはインスが先。
顔を上げ、隣に座るインスを見上げるアインの眼差しは真っ直ぐで、陰りも曇りも一切存在しない。
むしろ、その眼差しを受け止められないのはインスの方で、少しだけ、困ったように微笑んで、視線を前方の床に固定していた。
「……どうして、私を怖がらないのですか……?」
「…………ぇ……?」
言われた言葉の意味が分からない。
大きく目を見開き、パチパチと瞬きを繰り返すアインは、その、どこか自嘲気味な……あまり見たことのない微笑を目にして、こてりと首を傾げた。
怖がる? インス様を? どうして?
「……アイン君に、『無理はしないで。』と散々言っていたのに、無理をさせたでしょう? 怖いことも、嫌なことも、たくさん……してしまいましたから……」
「そ! ……んな……こと……」
でも、だって……! それは……!!
「……気づくべきだったんです……ちゃんと、私が……」
君を護ると決めていたのだから……
「……ぇ……」
囁くようなその言葉に、アインの思考が停止した。
第8章第2話をお読みいただきありがとうございます。
今回は、大人たちの気遣いによって用意された、インスとアインが「二人きりで向き合う時間」です。
が、その前に冒頭。
病室に戻ってきた大人たちを凍り付かせた「張り詰めた空気」。
アインも思わず「けんか、してるの?」と心配しますが、二人は息ぴったりに否定します。
それもそのはず。
この直前、クロードは「ジャンヌが会いたがっている」という本題の伝言を見事にインスに秒殺(「暇ではないので無理です」)されていただけなのです。
インスとクロードの間にあったのは喧嘩の空気ではなく、圧倒的な「塩対応」の残り香だったのですね(笑)。
そんな見事なアンジャッシュ(?)を経ていざアインと向き合ったインスが見せた、脆く痛々しい本音と深すぎる自責の念とは?
次回もお楽しみに!
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【第6弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】
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ノリト&ミコト




