第4話・危うき二人に戦慄す ~甘やかだけれど恐ろしい~
第8章 己のすべてと……
第4話・危うき二人に戦慄す ~甘やかだけれど恐ろしい~
な・ん・で! 状況が悪化しているんだっ!!
一時間ほど経過して、病室に戻ってきたシリウムとウスニーは、心の中で同時にそう怒鳴りつける。
実際に口に出さないのは、あまりにも幸せそうにインスに頬を摺り寄せて甘えているアインと、そのアインを慈愛に満ちた眼差しで見守りながらそっと撫でているインスの……
まるで邪魔をするなと言わんばかりの極寒の眼差しが入ってきた四人を一瞬だけ薙いだから。
そう。まともに見ようともせず、ちらっと一瞬だけ視線で薙ぎ切って行った。
だから、正確には文句が口に出せないだ。
「……あ~。悪いが、そろそろ時間だ……」
しかし、そうは言っても規則は規則。
アインとシリウムは主神殿に戻らなければならない。
だから、何というか……腹を空かせた狼の前に出るような心境でシリウムはそう告げる。
「……そうですね……アイン君。神殿に戻れますか……?」
「……もう、時間ですか……?」
ところが、思ったよりも落ち着いた声音で、冷静にインスは返してきて、少し名残惜しそうにしながらも、アインも素直にそう言う。
「……時間だな。次はインスが退院してからの、皇宮側での授業になるだろう……」
内心でホッと胸を撫で下ろしたシリウムが頷き、次の可能性を口にすれば、アインはもう一度ぎゅううっとインスに体を押し付けるようにして抱き着く。
それを、少しの苦笑で受け入れて、よしよしと頭を撫でるインスが、アインを抱いたまま立ち上がると、唖然として二人を見ているクロードに歩み寄る。
「お願いしますね?」
「……っ……!?」
小さく首を傾げてアインを差し出してきたインスの……笑っているのに笑っていない気配に、微かに目を見開いたクロードは無言で頷いて、慎重にアインを引き取った。
素直にクロードの腕に移ったアインは、名残惜しそうにインスに手を伸ばして、二人の指先が少しの間絡む。
「「「「……………」」」」
その様子に、シリウムもウスニーも……クロードも、シリウムに付いている護衛官も絶句して、信じられないと言いたげにインスを凝視した。
「……いや。まて! お前ら、何かおかしいぞ!!」
「どこがです?」
「どうしてですか?」
思わずウスニーが絶叫すると、インスもアインも同時に首を傾げてそう返す。
インスの方は確信的に、アインの方は本当に分かっていないように。
「インスは一体何をしたっ!!」
「アイン君が、とても大切だと伝えただけですよ?」
胸ぐらを掴んで怒鳴り散らすウスニーの手を振り払って、極上の笑顔で言ってのけたインスに……
「「「「…………っ!!」」」」
声にならない叫びと、こくこくと頷くアインとが入り混じって混沌とした状況。
「ですから……」
言葉を続けたインスがシリウムを見た。
「後片付けはきちんと、お願いしますね……?」
ちゃんとやらないなら、分かっていますね?
にこりとして告げたインスの、その笑顔の裏の声なき声を聞きとって……
「……心得ておく……」
顔を引きつらせながらシリウムはそう応じることしかできない。
こいつは一体、何なんだっ!!
声なき声の叫びがシリウムとウスニーから放たれて……
「……世の中には、知らない方が幸せなことも、あるのですよ……?」
クスリと笑ったインスの、その異常なほどの余裕に、ゾッとするほどの悪寒を感じたのは大人達だけ。
「……インス様。早く……お元気になって、下さい……」
少し心配そうにそう告げるアインに、インスも頷いて……
「早く、この不快感が完全に消えてくれることを、アイン君も祈って下さい」
チラリと、ウスニーを見てからアインに向けて言う。
「……不快感……?」
「ウスニーさんに飲まされた劇物の副作用ですよ……元気なのに、気持ち悪いです……」
きょとりと首を傾げたアインに、溜め息混じりにそう応えれば……
「「……ああ……」」
アインだけではなくシリウムも、納得したように頷いた。
第8章第4話をお読みいただきありがとうございます。
前話で「二人だけの世界」を完成させてしまった病室へ、他の大人たちが戻ってきました。
が、彼らを待ち受けていたのは、幸せそうに甘えるアインと、その時間を邪魔されたくないインスが放つ「極寒の眼差し」(笑)。
帰る時間が迫って、アインをクロードに託し、シリウムたちに言葉をかけるインス。
しかしその極上の笑顔の裏には、大人たちだけが察知できる「恐ろしいほどの圧(要求)」が込められていて?
完全にインスに囲い込まれてしまったアインの無邪気さと、インスの底知れぬ狂気(余裕)に震え上がる大人たちの明日もどっちだ!?
次回もお楽しみに!
【今後の連載スケジュールについて】
続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!
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【第6弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】
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ノリト&ミコト




