第5話・無くしたよすがに呼吸も止めて ~求めていたのは純粋な~
第7章 心を縛るは神の罰
第5話・無くしたよすがに呼吸も止めて ~求めていたのは純粋な~
自分の信じていたものが……否。信じたかったものが、すべて形を失い、崩れ去っていく。
「……………」
真っ青になって絶句するアインは、何も答えることができない。
どころか、完全に体の動きが止まって、ピクリとも反応しなくなってしまった。
「……? ……アイン?」
瞬きすらしていないことに気づいて、声をかけたのはクロード。
少しだけ躊躇って、けれど、ゆっくりと歩を進め、ベッドに座るインスが膝に乗せ、背中側から抱いているアインの前に歩み寄り、視線を合わせるように膝を着いた。
「……アイン。ちゃんと、息、しろ……」
「「「「えっ!?」」」」
そっと伸ばした右手でアインの頬に触れて、促したクロードの言葉に驚いたのは他の面々。
ギョッとして、視線がアインに集まり、インスが慌ててアインの体を揺らす。
「……っ……! っは……っ……」
びくっと体を跳ねさせて、呼吸を再開させたアインは激しく咳き込みながら、乾ききった瞳の痛みに涙を滲ませ、瞬きを繰り返す。
少し不思議そうに、目の前にいるクロードの、金色にも見える檸檬色の瞳を見つめ返した。
「……アイン。無理に、分かる必要は、ない……」
「……クロー、ド……?」
低い、不器用な声が、それでもアインを思いやって言葉を紡ぐ。
「……選べないなら、選ばなくて、いい……」
クロードの言葉に、誰も口を挟まない。
実際、クロード言う通りだということをアイン以外の全員が理解しているのだから、大人たちが口を挟むことはないし、アインも戸惑って何も言えなくなっている。
「……今、大事なのは、アインが、怪我を治すこと……」
それを受け入れられるかどうかだけ。
だから、シリウムが選択を迫ったように、誰を、何を信じるのかを、無理に選ぶ必要はない。
「……でも……」
「……アインは、何が、不安……?」
それでも、視線を彷徨わせるアインに、ズバッとクロードが問いかける。
「っ! ……そ、れは……」
びくっと、身を震わせて、真っ直ぐな視線から逃れるように俯くアインの頬に、クロードはもう片方の手も添えた。
ゆっくりと、無理強いはしないまでも、少し強引に顔を上げさせる。
表情筋が全く動かないように見えるクロードの、それでも心配そうな眼差しを、真正面から見せられた。
「……怪我、治さないと、みんな、心配する……」
「……っ……!?」
目を丸くするアインに、具体的な名前を上げていく。
神剣の契約者である、あの事件の関係者の名前。
「……ジャンヌも、リオンも……ファンも……」
それから、クロードの目がちらっとインスを見て、室内の他の面々も視線で示す。
「……俺も、ここに居る人たちも、ここにはいない、アインを知っている、他の人たちも……」
「……クロード……」
だから、どうするのか。どうしたいのかだけを決めろ。と促す。
アインの頬を、涙が伝う。
それを、優しくふき取って、もう一度、クロードは問いかけた。
「……どうしたい……?」
「……ぉ……」
しゃくりあげたアインが、何かを伝えようと声を絞り出す。
クロードは慌てることなく、ちょっと首を傾げて待つ。
「……ぉ、こっ……て……」
「誰も、怒ってない」
ようよう絞り出された言葉に、きっぱりと答えると。
「……っ……。クロード……っ!!」
手を伸ばしたアインを抱き止め、クロードは静かに涙を流すアインの頭をぎこちなく撫でる。
「治す?」
「……っ……」
再三の問いかけに、声もなくアインは頷いた。
第7章第5話をお読みいただきありがとうございます。
自分の信じてきた歪んだ教えが崩れ去り、パニックで呼吸すら止めてしまったアイン。
論理的な説得で逃げ場をなくしてしまった大人たちに代わり、アインの前に膝をついたのは、彼を一番最初に保護した恩人であるクロード。
「無理に選ばなくていい」「誰も怒っていない」という、不器用だけれど真っ直ぐで温かい言葉が、アインの強張った心をゆっくりと解きほぐしていきます。
理屈ではなく、ただアイン自身が「どうしたいのか」。
言葉は少なくとも、その行動のすべてから伝わる深い愛情。
クロードの大きくて優しい手に包まれながら、涙を流すアインが出した答えとは?。
次回もお楽しみに!
【今後の連載スケジュールについて】
続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!
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活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!
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【第6弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】
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ノリト&ミコト




