第4話・口を変えて言葉を変えて ~客観視点の平等な~
第7章 心を縛るは神の罰
第4話・口を変えて言葉を変えて ~客観視点の平等な~
クロードにはすべてを伝えて、その上で、アインの認識を正す手伝いを頼み……
シリウムに付いている護衛官に対しては、神殿側の教育を前面に出して説明をした結果――
「ファン卿は確かに厳格な方ではありますが、私的にそのようなことを行うことはありませんね。もちろん、所属が違いますので、トレーニア護衛官ほど存じ上げているわけではありませんが」
シリウムたちが言葉を尽くすよりも、よほど真っ直ぐにアインは受け止めているようだった。
「……でも、僕は、ファン様に怒られるようなこと、してしまいました……」
「それならそれで、ファン卿は規律通りに叱責なさるだけでしょう」
罰則に照らし合わせて必要と判断すれば、きちんとした処罰を下す。
間違っても、私的制裁をするような人物ではない。
「ましてや、偶然掠めた結果だというのなら、それを罰の代わりとして、残すことを望まれることはありません」
「……………」
シリウムに付いている護衛官が、思いのほか有能だった。
「……アイン君……」
切れ長の瞳で真っ直ぐにアインを見て伝えた護衛官の言葉に、何も言えなくなったアインを、そっとインスが後ろから抱きしめる。
「アイン君は、ファン卿が……そうですね。例えば……気に入らないからと、その人の不幸を望む人だと思いますか?」
「っ!? ファン様は、そんな方じゃ……!!」
ゆっくりと、噛んで含ませるように問いかけたインスの言葉に驚く。
思わず振り返って、インスの顔を見上げた。
「そうですよね?」
ふわりと微笑みながら、アインの反論に頷いたインスは、では……と話を続ける。
「アイン君に、偶然で怪我をさせてしまって、その怪我の治りが遅いことを、喜ぶような方ですか?」
「そ、んなこと……は……」
ファンが、そんなことを思うような人物ではないことは、ほとんど知らないアインでもわかる。
会った回数は数える程度で、そのたびに、なぜか嫌われているような様子ではあるけれど……
嫌いであることと、その相手に対してどう考えるかは全く違う。
言うならば、『ファン卿ディアス』という人物はちゃんと筋を通す人。
だから……
「……アイン君に、ファン卿が罰を望んで、その通りに、罰が与えられることに……なったのだとしたら……」
言いながら、インスの手が微かに震えて、抱きしめる腕に力が入る。
ファンが、現にアインに対して厳罰を望んだことを知っているから。
だから……『これ』は、あったかもしれない、可能性。
「……むしろ、きちんと罰を受けられる状態であることを、望まれるでしょうね……」
血を吐くような思いで、けれどそれを見せないように、感じさせないように、意識していつも通りの声色を保つ。
「……インス、さま……?」
アインが、少し不思議そうに呼びかけて、そっと、右手を伸ばす。
「……っ……」
冷たい指先がインスの頬に触れて、ピクリと一瞬、身体が震えた。
「もう一つ」
様子に、シリウムが口を挟む。
全員の視線がそちらに動き、インスはこっそりと安堵の息を吐いた。
「人の世に、神が直接的に『罰』を下すことはまれだ。もちろん、絶対にないわけではないのも事実だが、人の世においては人の法が存在する以上、そこに介入する必要性はほとんどない……」
だから、誰かが『お前のそれは神から与えられた罰だ』などと言ったとしたら、それはむしろ『神の名をかたる不届き者』ということ。
「流石にエルマーニ校長が意図的にそんな教えを授けたとは思えないが……」
それでもアインが、自分の『治らない怪我』を『神から与えられた罰だ』と思い込んでいるのだとすれば、それはそう思考を誘導しただけということ。
「……さて、アイン? お前はどっちだ……?」
「……っ……!!??」
ニヤリと、人の悪い笑みを浮かべたシリウムの問いかけに、アインは息を飲んで絶句した。
第7章第4話をお読みいただきありがとうございます。
アインの「怪我を治してはいけない」という思い込みを解くために、大人たちが総力戦で説得にあたります。
第三者である護衛官の客観的で真っ当な意見から始まり、後ろから抱きしめるインスの優しくも理路整然とした問いかけ。
そして、シリウムの「神が直接罰を下すことは稀だ」という神職トップ層としての断言。
誰もがアインを想うからこそ、逃げ場のないほどに言葉を尽くして語りかけます。
最後にシリウムから突きつけられた「お前はどっちだ(何を信じるんだ)?」という究極の問いに、息を呑んで絶句してしまったアイン。
信じていたものが揺らぎ、絶句してしまった彼は、果たしてこの問いにどう答えるのか?
次回もお楽しみに!
【今後の連載スケジュールについて】
続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!
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活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!
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【第6弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】
【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】
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ノリト&ミコト




