第3話・立ち直るよりも問い詰めて ~原因探って冷ややかに~
第7章 心を縛るは神の罰
第3話・立ち直るよりも問い詰めて ~原因探って冷ややかに~
事前に、何を、どこまでアインに伝えておくか。
何より、どうやってアインの認識を正すかを話し合っている間に、結構な時間が経過していた。
「……一旦、休憩だな……」
昼になり、結論の出ない、堂々巡りの話し合いを中断させたのはウスニーのこの言葉。
「そう言えば、今日は何時ごろまで皇宮医務殿に居られるのですか?」
「夕方の礼拝前には主神殿に戻る必要がある……一応、今日は一日課外授業という形で、外出許可を出させているが、以前のように早朝から深夜までとはいかないからな……」
ふと思い出して尋ねたインスに、眉間を揉みながら応じたシリウムはサラリと答えて……
「……どうして、早朝から深夜までがまかり通っていたんでしょうね……?」
よくよく考えるまでもなく、五歳ごろの子供のスケジュールとしてはおかしすぎる。
「「……………」」
インスに言われて「確かに?」と首を傾げるシリウムとウスニーも、明確な答えを持ち合わせない。
「……何だったかな……。私も、学校の方との関わりはあまりないから、詳しくは知らないが……確か、最初はあまりにも何も知らなかったから、意思疎通を可能にするための……そう。神殿孤児院の子供たちに教えているような内容から始まっていたはずだ……」
神官長という、各専門分野の呪師のトップの一人とは言え、教育に携わっているわけではないシリウムも詳しい経緯は知らない。
そうは言っても、神殿の最上層部の一人ではあるので、「何が、どうして、どうなった。」程度の報告は受けている。
だから直接的に関わりがなかったウスニーや、教育担当の一人として指導を任されただけのインスよりは詳しい。
けれど、そのシリウムの話では説明のつかない過酷なスケジュールで、ひたすらに詰め込み教育を施されたアインは、そのすべてを保護されてから一か月と経たずに終えている。
「……ぁ……」
首を傾げて考え込んでいたシリウムが何事かに気づいたのか、ハッとして顔を顰めた。
「何か心当たりでも?」
穏やかに問い詰めるインスの笑顔が怖い。
「……エルマーニ校長とペンティス呪師長が競ったんだ……」
舌打ちして応じたシリウムの言葉に、ピシリと何かが割れる幻聴がする。
「…………へぇ~」
「「………………」」
目を眇めたインスの声に、「もう一人。」と言う別の声が重なって聞こえたのは気のせいか?
「とりあえず、アインも起こして、昼にするぞ……」
若干顔を引きつらせて、無理やりそう切り替えたウスニーの言葉で、昼食となった。
起こす前に、と事前に決めておいた確認事項を示し合わせ、目を覚ましたアインには、できる限りそれ以上の心理的負荷を与えないように気を付けて昼食を終え、再び病室に集まった四人。
それと、今回は護衛官の二人にも事前に別の場所で説明をして室内に通した。
「……ファンは、多分。知らない……それに、そう言うことを、言い出すこともない……」
その理由は、クロードにファンのことを説明させるため。
神殿護衛官でありながら、ジャンヌ専属護衛騎士団の一員でもあるクロードは、当然騎士団長であるファン卿ディアスの為人も知っている。
更に、先の事件の現場で、地の神剣の誓約者として当事者であったクロードなら、間違いなく客観的な事実を知っている。
少なくとも、その瞬間、その場にいた者の証言や話の方が、事実に基づいた説得が可能となるだろう……
という、積極的なのか消極的なのかは分からないが、別の語り口としての有用性を望んだ結果の人選だった。
ちなみに、シリウムに付いている護衛官の方は、完全に何も知らない第三者としての率直な意見や証言を期待してのもの。
だから、各種国家機密に関わる話はできない状況ではあった。
第7章第3話をお読みいただきありがとうございます。
子供に対する常軌を逸した詰め込み教育。
それが「エルマーニ校長とペンティス呪師長の張り合い」という、トップ二人の身勝手な理由だったと知った瞬間……インスから「ピシリ」と何かが割れる音がしましたね(笑)。
静かに目を眇めて「へぇ~」と笑うインスの恐ろしさに、シリウムやウスニーが慌てて話題を変えるほどの恐ろしい気迫でした。
そして午後からは、いよいよアインの「歪んだ認識」を正すための本格的な説得が始まります。
クロードたち護衛官も巻き込んだ作戦はうまくいくのか?
次回もお楽しみに!
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ノリト&ミコト




