第2話・我に返って落ち込んで ~難攻不落の絶壁じみた~
第7章 心を縛るは神の罰
第2話・我に返って落ち込んで ~難攻不落の絶壁じみた~
やってしまった……
気絶してしまったアインを腕に抱いたまま、沈み込むように俯くインス同様、シリウムとウスニーも苦い顔で頭を抱える。
「……アイン君を、怖がらせてしまいました……」
「……そうだな……アインにかけるべき負担ではなかったな……」
「私の言い方も悪かった……」
カビかキノコが生えそうな声音のインスに、シリウムもウスニーも反省の意を述べて、一度溜め息を漏らしたシリウムがアインの容態を見た。
「……ふむ。脈も呼吸も正常……相変わらず貧血は酷いようで、今日の授業の影響か疲労は濃そうだが、大丈夫そうだな……」
インスが抱いていたアインをベッドに横たえ、体調を見たシリウムは一つ頷く。
診察結果に、ほっと一安心し、静かに眠るアインを、慈しみの籠った眼差しが見つめる。
顔色が悪いのは極度の緊張と、疲労と、貧血が重なったからだろう。
(……いえ。その時点で大問題では……?)
納得しかかって、そうじゃないと気が付いた。
なぜ、ほんの五歳ほどの……もしかするとそれよりも幼いかもしれない子供が、極度の緊張やら疲労やらに苛まれ、貧血で血の気の失せた顔色をしていなければいけないのか?
「……それで? どう『落とし前』を付けるおつもりですか?」
にこりと、全く笑っていない目でシリウムを見たインスの質問に、微かに顔を引きつらせたシリウムは一度溜め息を吐く。
「当然、『神前裁判』に決まっているだろう」
神官を、否、人の法で裁けない相手の善悪を判別する白魔法が『審判』という魔法。
神に、対象者の『行い』が正しいことかどうかの審判を仰ぎ、裁きを下して貰う。
この裁判にかけられること自体は、むしろ名誉とされる。
なぜなら、自らの潔白や、正しさを神に認めてもらえる可能性もあるから。
当然、後ろめたいものは拒絶するので、その場合は人の法での裁きが下される。
逆に、自らの潔白や正しさを信じて神前裁判に臨み、裁きを下されることはもっとも不名誉とされる。
なぜなら、己の私欲を神に突き付けられ、自らが信じていたものが根底から覆されることになるのだから。
「…………へぇ?」
返答に、何やら含みのありそうな反応を示したインスは、だがそれ以上は何も言わず、薄く口元に笑みを這わせる。
「……とりあえず、一旦そちらは置いておけ。それよりも、アインの認識を正す方が重要だろう?」
口を挟んで宥めたのはウスニー。
確かにと頷いたインスとシリウムもウスニーと顔を見合わせ……
「「「………………」」」
同時にアインを見つめた。
(((……認識を、正す……?)))
それが、一番難易度が高いことを薄々感じ取って、どんよりとした重い苦みが胸の奥に広がっていく。
「……とりあえずは、言葉を尽くすしかないな……」
「……それでダメなら、その時はその時だな……」
シリウムが溜め息を漏らし、ウスニーが肩を落とす。
「……………」
眠るアインの頭を撫でて、サラリとした柔らかな髪を指で梳いたインスは無言のまま。
けれど、その眼差しが……案じるような痛みを宿して伏せられる。
そっと、唇が、音もなく何かを刻んで……
「「……………っ!?」」
突然、ゾワリとした悪寒を感じたシリウムとウスニーが思わず腕をさすって周囲を見回し
第7章第2話をお読みいただきありがとうございます。
アインを気絶させてしまったことを猛省するインスたち。
極度の緊張と疲労、そして治らない傷による貧血……
アインのボロボロの体調を改めて確認し、なぜこの幼い子供がこんな状態にならなければいけないのかと、静かな怒りを燃やします。
元凶に「神前裁判」という名の落とし前をつけると息巻くシリウムたち。
ですが、一番の問題は、アインに深く根付いてしまった「神様からの罰だから」という歪んだ思い込みをどうやって解くかということ。
難攻不落の絶壁のような難題に肩を落とすシリウムとウスニー。
しかし、無言でアインを見つめるインスだけは、音もなく何かを呟いて……。
大人たちすら震え上がらせたインスの決意とは?
次回もお楽しみに!
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【第6弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】
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ノリト&ミコト




