第1話・混乱し過ぎて混乱し ~追い詰められて昏倒し~
第7章 心を縛るは神の罰
第1話・混乱し過ぎて混乱し ~追い詰められて昏倒し~
この子は、一体『何を』言っているのだろう?
二か月半もの間、治る様子を見せない怪我を抱えていて、それが、漸く治せる見込みが立ったというのに……
「……アイン君は、誰かに『罰だと』言われたのですか?」
ややあって、最初に衝撃から立ち直ったのはインス。
いや。立ち直ってはいなかったが、確認するべきことがあるのでそれを問いかける。
「…………ぇ……と……。でも、神さまの剣で、できた怪我だから……」
「明確に、ファン卿ご自身から、その怪我は治してはいけない罰だ。と言われたのですか? あの事件以降、どこでファン卿とお会いしたのです?」
しどろもどろと答えるアインに、問い詰める勢いで言葉を重ねる。
インスは気づいていなかったが、表情が完全に消えていた。
アインが見たこともないような、どんな感情も、優しさも、厳しさも……怒りなのか心配なのか……何一つ分からない完全なる『無』に、流石にタジタジになっている。
その上、声音はそれまでと変わらない柔らかさなのだから、その差があまりにも大きすぎて戸惑う。
「……ファ、ファン様とは、お会いしてません……。ファン様にそんな風に、言われたわけじゃ……」
「では、誰に、何を、言われたから、そう思うようになったんですか?」
(……インスさま! 何だか怖い……っ!!)
ぎゅううっと、抱きしめられ……というより、腕の中に閉じ込められて……真っ直ぐに見つめるインスに、答えながらもアインは内心で悲鳴を上げる。
こんなインスを見るのは、こんな風にインスに扱われるのは、本当に初めてで……
「……か、神さまから、与えられたものは、全部意味があって、正しいからって……っ!!」
校長先生が仰ってましたっ!!
アインのその、半ば悲鳴のような回答に、室温が極寒にまで下がり切った。
「…………っ……」
「「「……………………ほぉう?」」」
漸く腕の力を緩めて貰えて、ぜーはーと息を吐くアインの背を撫でて、薄く、口元にだけ笑みを浮かべるインスと、何だか凶悪な黒い笑みを浮かべる医呪神官の二人とに震え上がる。
「……アイン……」
「ひっ! は、はいっ!!」
シリウムに呼び掛けられて、思わず悲鳴を飲み込んだアインがびくりと肩を跳ね上げ、大きな声で返す。
「「「……………」」」
そこで漸く三人は震え上がって顔色をなくしているアインに気づき、一気に慌てた。
「ああ! すみません! アイン君には怒っていませんよ」
「悪い。驚かせたな……心配するな。落とし前は付けてやる」
「その前に、お前の誤解も解くがな」
インスが宥め、黒い笑みでシリウムが決着を宣言し、ウスニーがニヤリと笑ってアインを見据える。
「~~~っ!!??」
ビクンっ! と一度身を跳ねさせたアインは……
「アイン君!?」
「アイン!?」
「えっ!? おいっ!!」
くたっと体から力が抜けて、意識を失ってしまった。
第7章第1話をお読みいただきありがとうございます。
アインが自身の怪我を「ファン様からの罰だから治してはいけない」と思い込んでしまった、その《《原因》》が判明しましたが……。
「神様から与えられたものは全部意味があって正しいから」という、純粋すぎるがゆえの歪んだ認識。
それが誰の言葉(教育)によるものかを知った瞬間、インスと大人たちの怒りが頂点に達してしまいます。
アインには怒っていないとフォローしつつも、隠しきれない大人たちの凶悪な気迫に、極限状態だったアインはついに気絶してしまいました。
大人たちが「落とし前をつける」と誓う中、意識を失ってしまったアイン。
果たしてこの波乱だらけの状況は落ち着くのか?
次回もお楽しみに!
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ノリト&ミコト




