第5話・思考の停止に激怒する ~思いもかけない障害~
第6章 絡み絡まれ
第5話・思考の停止に激怒する ~思いもかけない障害~
知らなかったことばかりが出てきて、インスの顔からも血の気が引いていく。
もちろん、あの授業の後、自分も訓練場で倒れて、長く意識が戻らなかったのだから、その間に起きていたことを知るには、知っている者からの情報提供が必要になる。
けれど、まさか怪我に残る魔力を使うのを拒んだ結果、傷口が開いてしまっていたり、直後に風邪をひいて寝込んでいたりしただなんて、思ってもみなかった。
(……どうして、その可能性に、気づけなかった……?)
アインが、無意識にか、無理をすることがあるのは、分かっていたのに……
長期の入院から退院してばかりで、怪我も治っていない中で、精神的にも極限まで追い詰めると理解った上での――授業。
傷口が開くような無茶をしていたことまでは気づけなかったとしても……それだって、気づくべきではあったが……体調を崩すことなど、わかりきっているというのに!!
自分がそれを主導しておいて、どうして今まで、可能性にすら気づけなかったのか? 思考を巡らすことすら、しなかったのか?
(……何が、『守る』ですか……むしろ、私が……)
この子を追い詰め、傷つけている張本人じゃないか!
「……ま? ……ンス……ま!」
「……っ!?」
不意に、身体を揺らされてハッとする。
「……インスさま? お疲れですか?」
「……ぁ……。いえ。大丈夫ですよ」
心配そうに見上げる深い紫色の瞳を、正面から受け止められない。
意識していつも通りに微笑んで答えたインスに、アインは一瞬、口を開きかけて……結局無言のままでこくりと頷いた。
「「……………」」
二人の間にぎこちない沈黙が落ち、アインは変わらずギュッと抱き着くのに、インスの方はどこかよそよそしい。
それまで半ば無意識に、思い出したように撫でていた手が完全に止まって、落とさない程度には腕に力を籠めてはいても、しっかりと抱きしめることができなくなっていた。
「……続けるぞ?」
様子に、ますます重い溜め息を吐いて、ウスニーが声をかければ、ハッとして二人も頷く。
「検証してみないと分からないが、アイン。お前が魔法を使おうとした時に、傷口に残る風の神剣の魔力が『反応した』ことは確かだろう」
確認されて、アインも頷く。
「だから、むしろ魔法を使う時に『その魔力』で構築すれば、残っている魔力を消化できる可能性が高いと我々は考えている」
「……ぇ……?」
思いがけない提案に、アインは目を丸くした。
「使う魔法は『風』の魔法になるだろう。神殿側の授業で使わせてもいいが、効果範囲や威力がどうなるかわからないから、皇宮側の授業で試した方が安全だろうと考えている」
「……っ……!?」
そこでシリウムが口を挟み、アインはパッと、インスを見上げた。
「……その調整を、先日アムス校長が皇宮医務殿にいらして下さった時に、お願いしてあります……」
「…………っ!」
ふわりと微笑んだインスに、アインは息を飲む。
けれど……
「……でも、この怪我は……お姫さまを傷つけた僕に、ファン様が残した罰、だから……治したら、ダメです……」
「「「……………は?」」」
俯いたアインの言葉に、音階の異なる、同じ音が三人の口から零れ落ちた。
第6章第5話をお読みいただきありがとうございます。
アインが授業で無理をした真相を知り、激しい自己嫌悪に陥るインス。
護りたかったはずなのに、自分が一番彼を追い詰め、傷つけていたのではないか……。
気づけなかった自分自身への怒りと絶望で、アインに触れることすら躊躇ってしまうインス。
しかし、事態は思わぬ方向へ。
大人たちが「怪我に残る魔力を利用すれば、この治らない腕も治せる!」と希望を見出した直後、アインの口から信じられない言葉が飛び出します。
「これは罰だから、治したらダメです」 その言葉に、絶句する大人たち。
果たしてアインは一体どうしてそんな風に思い込んでしまったのか!?
次回もお楽しみに!
【今後の連載スケジュールについて】
続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!
【ミニコラム掲載中!】
活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!
【読者の皆様へのお願い】
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また次回もどうぞよろしくお願いいたします!
【第6弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】
【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】
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ノリト&ミコト




