第3話・神秘の瞳を開くのは ~ありのままに受け入れる~
第5章 積み重なった様々な
第3話・神秘の瞳を開くのは ~ありのままに受け入れる~
話が長くなったが、今日、皇宮医務殿にアインが派遣されたのは、インスの精神体の状態を……十日前にアインが見た時との違いを確認させるため。
それだけは確かなので、ウスニーは「頼めるか?」とアインに問いかける。
「無理にやれ。とは言わない。お前自身がどうしたいかを選べ。どっちにしろ、分かったからと言ってできる対処法はそう変わらない」
そういったウスニーの言う通り、仮に精神体の損傷が原因だと分かったところで……その『精神体の癒し方』なんてものは分からないのだから、できる『処置』自体は変わらない。
「……見たところで、お前がつらくなるだけかもしれないからな……」
ぼそりと口を挟んだシリウムの言う通り、見るのも、見えるのもアインだけなのだから、アインだけが『正しく』状態を認識する。
この場にいる誰も……張本人であるインスでさえも、その心にかかる負担を一緒に背負うことはできない。
「っ。……いえ……」
インスの腕の中で……その胸に顔を押し付けるようにして泣いていたアインは、けれど首を横に振る。
ゆっくりと顔を上げて、まだ涙の残る眼差しが、真っ直ぐにインスを見つめて……
「……見ます。……見て、いい……ですか……?」
はっきりと言い切り、直後に不安そうにインスの目を見つめる。
ふわりと、極上の笑みを浮かべたインスは……
「ええ。もちろん。……お願いしますね。アイン君……」
僅かなためらいも恐れもなく、ごくあっさりと頷く。
「……っ……」
一瞬、また泣きそうになって、けれどぐっとこらえて、アインも微かに笑みを浮かべる。
「……お願いします……」
それから、そう告げると、その腕から離れて、ベッドの上に座った。
「私も起き上がった方がいいですか?」
「いえ。そのままで……あ、でも……もしかしたら、途中で少し、向きを変えて頂くかもしれません……」
ちょっと首を傾げて問いかけたインスに、首を横に振って答えたアインは、ハッと気づいてそう付け加える。
「分かりました。その時は、教えて下さいね?」
「……はい……」
穏やかに、何の気負いもなく言うインスに、アインもホッとして頷く。
それから、アインはゆっくりと目を閉じて、深く、息をする。
「……はじめます……」
深呼吸を数回。
そう断ってから、ゆっくりと目を開く。
黒にも見える深い紫色の、神秘的な瞳に……魔力が満ちた。
「「「…………っ……」」」
ざわりと、風もないのに空気が揺れる気配。
莫大な量の魔力が、アインの瞳に集中し、ゆっくりとインスを『視た』。
頭の先から、足の先、指の先へと……とてつもない密度の魔力が軽く撫でるように全身を滑る感覚に、インスは不思議な心地を覚える。
これだけ濃密な他人の魔力にさらされれば、普通は違和感や、嫌悪感を覚えたり……時に恐怖で我を忘れることもあるはずなのに……
(……厚い……なのに、軽い……?)
その密度とは真逆の軽やかさに少し困惑して……気づく。
アインの顔色が悪くなっていることに。
うっすらと、額に浮かぶ汗を目にして、アイン自身が、インスに負担をかけないように懸命に制御しているのだと。
「…………っ」
思わず声をかけようとして、堪える。
アイン自身が、精一杯頑張っているのに、それを邪魔するのは違う。
どれだけ、心配でも、無理をさせたくないと思っていても……アイン自身の意志を、否定することはしたくない。
じっと注視するように、隅々までゆっくりと視ていくアインが、時折苦しそうに顔を顰める。
それでも、目を見開いたまま、真っ直ぐにインスを見つめ続けた。
第5章第3話をお読みいただきありがとうございます。
ウスニーたちからの問いかけに対し、アインがインスのために「見者の目」を開く決断をします。
見ることで辛くなるかもしれないと言われても、真っ直ぐにインスを見つめて「見ます」と告げるアイン。
そしてついに発動した神秘の瞳。
部屋を満たすほどの圧倒的な魔力を放ちながらも、インスに負担をかけまいと必死に制御して冷や汗を流すアイン。
そんなアインを心配しつつも、彼の「頑張りたい」という意志を尊重してぐっと見守るインス。
お互いを大切に想うからこその、優しくて静かな緊張感。
果たして、アインの目には一体何が映るのか?
次回もお楽しみに!
【今後の連載スケジュールについて】
続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!
【ミニコラム掲載中!】
活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!
【読者の皆様へのお願い】
「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします!
【第6弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】
【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】
――――――
ノリト&ミコト




