24 あふれる思い
連休明けの朝、マイケルと微笑みを交わすとエメリーは侍女として仕事を始めた。
(何をおいても、まず、エレノア姫にお礼を言わねば…)
コンコンコンとエレノア姫の部屋のドアをノックをすると、返事の前にガバっとドアが開いて、エレノア姫が顔を出した。
エメリーが深々とお辞儀をして顔を上げると、エレノア姫が、うわっ!と小さな声をあげ、二、三歩後退りをした。
「エ、エメリー…。えっ。え〜っと…」
どうされたのですか?私の顔に何か?とエメリーが尋ねると、エレノア姫はエメリーの手を取り、ぶんぶんぶんと振った。
「エメリー、すごくすごく綺麗。びっくりしちゃったの。前からエメリーって可愛いな、って思ってたけど、今、と〜っても綺麗。輝いてる!
マイケルと楽しく過ごせたんだね。幸せそう。よかった!よかったね」
エレノア姫に抱き付かんばかりに喜ばれてしまい、真っ赤な顔でしどろもどろに髪飾りのお礼を言って、お土産のクッキーを渡すと早々に部屋を後にした。
(私の代わりに連休中はずっとお屋敷にいてくださったロレイン様にご挨拶をしておこう。ネックレスとピアスのお礼も言わなくては…)
ロレインの部屋のドアをコンコンコンとノックして、よろしいですかと声をかけようとすると、ドアがさっと開いてロレインが顔を出した。
「エメリーちゃん!お帰りなさい。まぁまぁまぁ…。楽しく過ごせたのね。よかった。ほんとによかったわ」
涙ながらにロレインは言って、エメリーをそっと抱きしめた。
「あの子はあんなだから…心配してたの。
あの子は優しくしてあげたのかしら…」
ロレインにそう言われてしまい、真っ赤な顔でしどろもどろにネックレスとピアスのお礼を言い、お土産の花の香りの石鹸を渡して部屋を後にした。
(そうだ、アレックス隊長は今この御屋敷にいるはずだから、戻ったと報告をしておこう)
急いでアレックス爺の所に行くと、にやりと笑われた。
「楽しかったか?顔に '幸せ' と書いてある。
わかってる。何も言うな」
エメリーは真っ赤になり、また、しどろもどろになってしまった。
結局、皆に2人揃ってすごく心配されていたのだとわかり、やたらと恥ずかしくなってしまった。
午後になり、エメリーはノア副司令長官に従って自衛軍にやって来た。
サイモンが書類を持ってやって来たので、ちょっと話があると2人で小部屋に入った。
「サイモン、色々とありがとう。
これ、ミミちゃんにお土産。2人で食べてね」
…とクッキーを渡したエメリーは小さな声で尋ねた。
「ねぇ、サイモン。
1つ聞きたい事があるのだけど、いい?」
なんでしょう、と小首を傾げるサイモンにエメリーは一歩近づいた。
「ねぇ…。
サイモンもミミちゃんとホテルにお泊まりした次の朝は、朝食をルームサービスにして、ミミちゃんを膝抱っこして、あ〜ん、ってするの?
皆そうするものなのだって言われたけど、それって本当なの?
サイモンならホントのこと、知ってるでしょう?
ねぇ、サイモン。教えて」
目の前にいるエメリーがものすごく綺麗で輝いていて、サイモンは狼狽えた。
「えっ?は、はいぃ〜っ?」
狼狽えるサイモンの態度をエメリーは肯定と受け止めた。
「ほ…本当なんだ。知らなかった。
だって、誰もそんなこと言ってなかったし、本にも載ってなかったから。
マイケルを疑っちゃった。
私が疑ってたって、マイケルには内緒にしてね。
サイモン、ありがとう」
そう言って、跳ねる様に職務に戻るエメリーの後ろ姿を、サイモンはニコッとして見送った。
(マイケル司令官、やりましたね!
私も微力ながらお助けした甲斐があると言うものです。
エメリー大佐が、あんなに綺麗で、輝いていて。
私までドキドキしてしまいました!
しかし…ですよ!
冗談で言ったルームサービス、膝抱っこ!
マジでやるとは…
これから先、どうなるのか、
…わたしは知りませんよ)
エメリーは辺りに幸せオーラを振り撒きながら、その日の仕事を終えたのだった。
御屋敷に戻ったエメリーは自室で窓辺に腰掛けていた。窓から見る夜空には赤い月と青い月が変わらずに輝いて、エメリーを照らしていた。
エメリーは窓の外を眺めて、月の姫君に話しかけた。
(月の姫君さま、
マイケルがそばにいないと、どうしてすぐ、こんなに寂しくなってしまうのでしょう?私はこのままでいいのでしょうか?
もっと自分を信じる事ができたらいいのに…。
もっと強い心を持てたらいいのに…。
もっとマイケルに相応しい私になりたいです。
月の姫君様、私に、弱い私に力を与えてください)
エメリーはマイケルを思いながら二つの月を眺めた。
月はエメリーを照らしつづけた。
すぐそこに試練が待っている事を、エメリーはまだ知らない。




