第三王女は無駄なく使います。
次の日、
私はハシとフォーク、そしてサラと共に、森に向かう。
「ところで、なんで森に向かってるの?」
私は尋ねた。
「ディッシュちゃん忘れたか。木の皮を剥ぎにきたんだよ」
「木の皮」
「あぁ、そうだ。木の皮はタンニン染めの原料になるからな」
「へぇ。じゃあ木こりさんの所に行けば?」
「木こりに切って貰うのか?」
「いえ。木こりさんって皮を使わないでしょ」
「そうじゃな。それを分けてもらうのか?」
「もちろん。なにかお礼をして」
「そうか。じゃあ、少し行ったところに、木こりがおる。行ってみよう」
しばらく行くと、一軒の家があった。
「おぉ。ひさしぶりじゃな。元気か?」
ハシが手をふる。
「あぁ。どうした?お前さんが珍しい」
「いや実はな。タンニン染めをするので、木の皮がいるのじゃが、このディッシュちゃんが、それだったら、木こりさんの所に行ったらと言うのでな。来てみた」
「何の木が良いんだ?」
「オーク系、クリ、シラカバ辺り」
「あぁ、それなら向こうにあるよ。行こう」
「おぉ。皆行こう」
そこには、いろんな木の皮が、捨てられていた。
「好きなだけ持っていっていいぞ」
木こりさんは言った。
「あのお礼がしたいのだけど」
「お礼なんぞ良い」
「麦とかは買ってるの?」
「まぁ麦は買ってるが」
「じゃあ後で麦を持ってくるわ」
「まぁ好きにしてくれ。ところでディッシュちゃんだったかな?あの最近引っ越してきた」
「うん。私がディッシュ。こっちはサラで、この子がフォーク」
「ワシはプレートじゃ。なぜ木こりに話を聞こうと思った?」
「だって木の皮を剥ぐと、木が枯れちゃうでしょ。中身を使う気のない私達が、皮だけ取るのは道理に反してるわ。しかも猪の皮の利用のためだもの」
「あんた。賢いな」
「へへ」
「この通り、ワシらにとって、木の皮は不要品だ。麦と交換してくれるならウレシイ。じゃが、それでも多量に余る。何か使い道はないか?」
「使い道ね。皆何かある?」
「あの。燻製という方法があります。たしか、オーク系やブナ、カエデなどが使えたかと」
サラは言った。
「僕、前に薪がない時に、使ってました。ただよく乾燥させないとダメですけど」
フォークは手を上げた。
「たしか、染料とか防虫剤にも使えたと思う」
「いろいろ使えるんだな。
どうだ。うちの木の皮をそっちで引き取ってくれないか?
ワシは木を切るのは得意だが、計算が苦手でな。商人とかはどうも……、そっちの野菜とか麦とかとの物々交換でいいから」
「ディッシュ様、それは面倒ですよ。やめておきましょう」
「うん。わかった。じゃあ引き取るわ」
「ディッシュ様、だから面倒ですよって、言ってるじゃないですか」
「そうよね。たしかに面倒だけど、こう考えなさい。私達の手数が増えると」
「手数?どういう意味ですか?」
「わからないの?」
「はい」
「私もわからないわ。なんとなくよ」
「なんか迷惑かな?」
「いえ。ただスグに全量は難しいと思います。今日はとりあえずタンニン用のモノを引き取って、他のは後日。用途が決まりしだいでも構いませんか?」
「それはもちろん。長い取引がしたいからな」
「それは私もです」
私達は木の皮を引き取り、
農場に戻った。
お礼の麦をフォークに運んでもらい、
私達は皮の鞣し作業に入った。
皮は内側の脂を丁寧にナイフなどで取り除き、洗い、
木の皮を茹でてできた汁に漬けこむようだ。
「まずこれくらいの薄い汁に漬けこむ。そして数日待って、今度はもっと濃い汁に漬けこむ。それを何度か繰り返す」
「どれくらいかかるの?」
「牛などなら一年くらいはかかるな」
「そんなにかかるの?」
「かかるが、汁の中に漬けこむだけだからな。漬物と大して変わらんわ」
ハシは笑った。
日が暮れ、
私達は晩御飯を食べる事にした。
昔の食卓を考えれば、ずいぶん賑やかになったものだ。
あの頃は皆忙しく、一人で食事をとることが多かった。
豪華な食事も一人では寂しいもの。
質素な食事も大勢なら楽しい。
そう思う。
「ところで、あの木の皮の件だけど、どうするのが効率良いかな?」
「沢山使うなら、燃料がいいが、タンニン染めとかにも使えるしな」
ハシは腕を組む。
「あの?タンニン染めで使った後の木の皮なら燃料にしても良いのでは?」
フォークは手をあげる。
「それはいいな。乾燥させれば、ちゃんと使える。フォークお前賢いな」
ハシは笑顔を見せる。
フォークは照れ臭そうだ。
「燻製に使うには、燻製にするものがいりますね。猪を狩りましょうか?」
サラの目は輝いている。
「狩りまくるのも問題でしょ。村に危害を加える獣だけにしましょ」
「……はい」
サラは肩を落とす。
「猪狩るの楽しかったの?」
「はい。たぎりました」
サラの目は輝いている。
「ほかに燻製できるものはないかな?」
「チーズやゆで卵なんかもできるぞ。あと川魚とか」
ハシは言った。
「それなら色々試せるわね。いろんなモノの燻製を作ってみましょ」
それから、
色んな燻製を試した。
チーズ、ゆで卵、川魚。
皮の種類で味が変わることも知った。
「ディッシュ様。これは備蓄の役に立ちますよね」
「そうね。日常的に燻製を作っておけば、いざという時の練習にもなるし、そのままより日持ちするし、美味しいし」
猪を討伐してから、
三月が過ぎるころには、小作人の数が十人にまで増えていた。
「ディッシュ様。急速に増えましたので、一度ここらへんで募集を止めてみては?」
サラが言ったので、募集を止める事にした。
それから三日後。
サラと共に農場を視察していると、
「あの農場の募集を聞いて来たのですが」
大柄な男が声をかけてきた。
どこかで見た顔だ。
「申し訳ございません。現在募集を止めております」
サラは言った。
「あなた!農民じゃないわね」
男の視線は止まる。
「ディッシュ様。この男は危険です」
サラは短刀に手を伸ばす。




