濃いメンツ
フォークは小作人になることになった。
「ねぇサラ。さっきの私、趣味とか言う必要があったの?
なんかお見合いみたいじゃなかった?」
「クス」
「あなたワザとやったでしょ」
「そりゃそうですよ。
だって面白いじゃないですか。
フォークも目が丸くなってましたよ。
私、笑いをこらえるのが大変で」
サラは腹を抱えている。
「あっでも。結局食事中にテントウムシが、ご飯の中に入ってこないかどうか確認してなかったわね」
「あっ。フォークです。フォークこっち来なさい」
サラは大きな声を出す。
「はい」
「それでフォーク。食事中にテントウムシがご飯の中に入ってきたりするの?」
サラは尋ねる。
「テントウムシは普段は畑でアブラムシを食べてます。ついてくるのは畑に出かける時と、遠くへ移動する時です」
「それは食事の時は大丈夫ってこと?」
私は尋ねた。
「はい」
「そもそも、なんでテントウムシがついてくるの?」
私は不思議だった。
「昔にテントウムシに、俺の近くにいたらアブラムシ沢山食べれるぞって言ったんです」
「それで?」
「たぶん」
「なるほど理屈は正しいわね」
「ディッシュちゃん!いるかね」
村長の声が聞こえる。
「いますよ。伺います」
私達は村長の元に向かった。
「あぁ。ディッシュちゃん。お前さんところ。農業指導者とかいらんかね」
「農業指導者。農業の先生ってことですか?」
「あぁ。一人腕の良い指導者がいるんだが……」
「それは、ぜひ!」
私は言った。
「ディッシュ様。少しお待ちください。村長。何か問題のある方なのですか?」
「あぁ。ワシの師匠でもある方なんで、腕は良いんだが、厳しいというか、口が悪いというか、性格が悪いというか、ひん曲がっているというか……」
「性格に難ありってことですか?」
私は尋ねた。
「ディッシュ様。性格に難があるのは……」
「わかりました。お願いします」
「ちょちょっと。ディッシュ様。性格に難があるのは……」
サラは戸惑う。
「大丈夫。慣れてるから」
「慣れておいで?あぁ姉君とか、兄君、父上様も、たしかに……」
「はは……、お給料は?」
「食う所と寝る所、そして可愛い女の子がいれば、それで十分だと思います」
「私は何もしないわよ」
「もちろんです。師匠は基本、シャイですので、遠くから眺めたりするだけで満足します」
「そうなの。わかった。じゃあお願いします」
三時間後。
村長が老人を一人連れてやってきた。
「こちらが師匠のハシです」
「初めまして。ディッシュです」
私は笑顔を浮かべる。
ハシは横目で見ている。
照れくさそうだ。
挨拶も何もしない。
この爺さん。本当にシャイなのか……。
「ハシさんは、農業の達人だそうで」
「そ、それほどでもない。ワシなんかまだまだじゃ」
「またまた御謙遜なさって。あの、私、農業が初めてなもので」
「初めて?」
「はい。初めてなのです」
「そ、そうなのか。初めてなのか……」
「だから、優しく教えてください」
「ほ、ほう。うんうん。優しく教えてやるわ」
「ディッシュ様。ご老体には刺激が強すぎるお言葉です」
「しっ、黙ってなさい。それでハシさん。農地がずいぶん広くって、ハシさんなら、どんな風に使いますか?」
ハシの表情が明らかに変わる。
とてもダンディな爺さんになった。
サラも驚いている。
「そうだな。まず方針を決めねば、例えば換金収益優先、食料自給率を上げる、バランス型など……あるが」
「もちろん収益優先……」
「ディッシュ様、食料自給率はある程度以上、確保しておかねばなりません。いざという時に、困ったことになりかねません」
「備蓄はどれくらい分?」
「使用人三年分の食料は欲しいですね」
「ハシさん。使用人三年分の食料を確保した上で、換金収益優先にとかできます?」
「もちろんだ。しかし使用人三年分となると、長期保存がいるからな。なんでもいいわけではない。まず主食になるものを決めたほうが……」
「どんなものが?」
「小麦、大麦、ライ麦、そば、豆類、乾燥トウモロコシ辺りじゃな」
「どれにしましょうか?」
「いや……、どれか一つには決められない」
「ディッシュ様。ハシさんは、ハーレム展開がお好きなのでは?」
「ちょっと待ってくれ。あなたは誤解しておる。ワシはハーレム展開とかは好きではない。ほらこの通りジジイだ。可愛い子を眺めるのが好きなだけだ」
「ディッシュ様をそのような目で、汚らわしい」
「ちょっと待ってくれ。さすがにディッシュさんは、若すぎる。ワシの好みは、サラさん。あんたじゃ」
サラは顔を真っ赤にして固まっている。
皆笑いをこらえるのに必死だ。
「そ、それで。なぜ一つにきめりゃれないのれすか?」
サラの言動が明らかにおかしい。
「虫じゃよ。虫にやられたら、一発で全滅じゃ。だから分散させて安全策を取ったほうが良い」
ハシは目を伏せた。
「師匠はな。昔、農業指導をしていた村が、虫の被害で壊滅しかけたんだ。ずっと師匠は、単一は拙いと言っておったのだが、効率化の圧が強くてな」
村長はハシの背中を撫でた。
「麦を食う虫が豆まで食うとは限らん。病にも天候にも向き不向きがある。全部同じにする必要はない。それだけじゃ」
「ほう。なるほど。じゃあ。その作物全部作りましょ」
私は言った。
「しかし、効率は落ちるぞ、換金性も低くなる」
「それは私達が食べる三年分なだけで、ほかで換金性の高い作物にすればいいのでは?」
「まぁそうだが……、いいのか?ワシの案を真に受けて」
「ハシさんの案は、素人の私が聞いても合理的よ。たしかに目先のお金は減るかもしれない。しかし私のご飯とか、使用人のご飯が食べれなくなる可能性があるわけだし。それはハシさんの案しかありえないわ」
「そうか……、ありがとうな。嬢ちゃん」
ハシさんは目を伏せた。




