187.他愛もない話
いつもの事ですけどね
「おはよう柚!」
「うんおはよう」
放課後。例の場所。
柚が来たからボケたのに、いつもの微笑とともにスルーされて撃沈した。
「あのさぁ……」
「ん? 何かな?」
「ボケたらちゃんとツッコんでよ」
「い・や♪」
「ひどい」
そんな嬉しそうに言わなくても良いじゃん。僕泣くよ? それでも良いの?
「うん、良いよ」
「読心!?」
「キミはそろそろ声に出してる事を自覚すべき」
「え? 出てるの?」
「出てないよ」
「どっちなんだよぅ!!」
「ふふっ♪」
「せめて何か言って!?」
笑ってるだけじゃ何も伝わらないよ!
「まぁ良いじゃないか」
「良くない!」
「ボクは別に良いと思ってる」
「僕が良くないんだよ!」
「知ってるよ?」
「質悪いなぁ!」
「今太刀は関係ないだろう!」
「ええええ!?」
なんで身を乗り出してキレるの!? 訳が分からない!
「……ふん。まぁ良い」
「良いんだ……いや僕としてはあんまり良くないんだけど」
「そこは気にしない方向で」
「えぇー……」
「ういーっす」
槙が猫をかかえて歩いてきた。袖をまくっていて、腕に赤い筋が数本。
「やあ槙、よく来たね。待ってたよ弾き語りしながら」
「弾いてなかったろ」
「待って槙語ってもないから」
「で、その腕は何があったのさ?」
「これか?」
「そうそれ。絶賛流血中のそれ」
「止血しなよ……」
せめて水で洗うくらいしなよ。ていうか見た感じグロい。
「まぁお察しの通りだ。コイツ捕獲しようとして思いっきりひっかかれた」
「なんか夏頃にもそんな事なかった?」
「あったな。これ結構頻繁にあるぞ」
「あるんだ……」
「そりゃあるだら。コイツもいつでも懐いてくる訳じゃねえだし」
「あぁ……」
おとなしく抱えられてる猫を撫でつつそんな事を言う槙。まったく説得力がない。
「でも槙はそうそうひっかかれる事なんてないでしょ?」
「そうでもねえぞ。遊んでやってると脛やら腿やら手の甲やらにどんどん生傷できる」
「そうなの?」
「最近だと……これか」
槙が右手の親指を見せてくる。親指だけで三本かさぶたがあった。……多くない? しかもまだ赤っぽいよ。
「エノコログサで遊んでたら指を狩られた」
「狩られたって……」
「右手全体で見ると11ヶ所怪我してんな」
「多いね」
「おう」
「にゃー」
……猫の相手って大変なんだなぁ。




