第二話 執行
その後、法廷に警備員が入り、ソフィアは連れて行かれた。
おそらくこうなる事を予想していたマルクスが、あらかじめ待機させていたのだろう。
ーーー数日後ーーー
法廷で暴れたことに対する罪を問われたソフィアは、禁錮2年を言い渡された。
そして、父の死刑執行日が通知された。
1ヶ月後王都の中央広場にて、「魂封印」の刑に処されるそうだ。
「魂封印」はこの世界における最も重い系の一つだ。
この世界では、人が亡くなっても魂は世界を廻り続け、
いずれはまた新しい生命として、この世界に命を宿すことができる。
だが、「魂封印」は廻り続ける魂を、
魔法で繋ぎ止め、永久に魂として過ごし続ける刑だ。
母は、一晩中泣き続けていた。それはこの世界に対する絶望なのか、はたまたマルクスに対する強い憎しみなのか…
ーーー1ヶ月後ーーー
王都中央広場にて、断頭台の上に跪く父の周りには、三人の魔術師が父を取り囲むように鎮座していた。
王国議会書記長という肩書きを背負うものの、死刑執行という事実を聞きつけた、大衆が集まる中、母と僕は2人後方にて、立っていた。
「ただいまから、アンノエル・ラトリアを国家転覆罪にて「魂封印」の刑に処す!!」
その後数秒も経たぬうちに、鎮座していた三人の魔術師が詠唱を始めた。
『悠久の時を見届けし、天の理よ。
星々を巡らせ、万象を織りなす創世の鎖よ。
我が声たちを聞き届け、その眠れる力を今ここに示せ!
光は闇を裂き、闇は光を抱き、始まりと終わりは一つの輪廻となる!
古の契約に従い、天地に刻まれし封印の刻印よ、滅びることなき檻となれ!
我が魔力を贄とし、我が魂を証とする。
天は蓋となり、大地は礎となり、四方を司る精霊よ、
その力を我が陣へ集え、炎は熱を失い、水は流れを止め、風は翼を折り、雷は牙を収めよ、
逃れる道はなく、抗う術はなく、未来はまた存在しない。
永劫の鎖よ、その身に絡め。
静寂の檻よ、その魂を包め。
世界の境界よ、今ここに閉ざされよ。
万象よ、沈黙せよ。
運命よ、凍てつけ。
永遠よ、その扉を閉ざせ。
創世の理を継ぐものとして命ずる。
ーーー<第七層 ディバイン・ソウルシール>ーーー
三人の魔術師が、永遠のように感じられるほどの長い詠唱を完了し、断頭台に一柱の光がさす。
その後、父の頭上に大きな檻が出現し、父は、檻の中へ転送された。
そして母と僕は、啜り泣きながら、父の様子を見届けていた。
いきろ
最後に父は、僕たちを見つけ、そう口を動かしていた。
その後父は、亜空間へ檻ごと連れて行かれた。
それが僕が父を目にした最後の日だった。
(マルクスは絶対にこの手で復讐する。父の無念、そして母の悲しみを背負い、いつか必ず…..!!!)
ーーー1ヶ月後ーーー
執行直後は、国家反逆罪の家族として、罪に関わっていないとしても、屋敷に落書きをされたり、物を投げつけたりする人間は多数いた。
だが1ヶ月も過ぎると、外出などはできるようになっていた。
僕は小さい頃から屋敷で過ごすことが多く、一部の人間しかラトレア家の長男である事を知らず、あまりそのような仕打ちを受けることはなかった。
だが有名な歌手である母は、名も顔も知られており、屋敷の外へ出ることはなかなか叶う状況ではなかった。
母によると、生前の父の計らいで王立魔律学園へは、そこで講師をやっている父の親友の後押しにより、入学できることが決まっていた。
だから、ソフィアが帰ってくる2年後までに、力をつけて必ず奴に復讐する力を手に入れると決めた。
10歳まで、冒険者として、生きることを決めた瞬間だった。




