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海の落とし者と釣り竿  作者: うにまる
第十二章 庭園と小山のコラボとお洒落さん

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第六節 小島の土台は巨石で造成状況の報告

 メルカド伯爵邸マナーハウスの造成中の池に敷かれた砂浜はルクレイとヴィオナのダンスホールとなっていた。二人は笑顔でダンスを踊っていた。


『二人は体力がありすぎです。もう鐘一つは踊り続けてますよ。流石にヴィオナ様が疲労を見せ始めてますがルクレイ様は欠片も……あっ、終わりましたね』


 ユミナは拠点の椅子に座り二人のダンスを見ていた。二人はステップの速度を落とし緩やかにターンを繰り返していた。ダンスとしては終盤である。


 冷却保管箱から爽快の実で作った果実水を取り出しコップに注ぎ二人が戻る準備を始めた。果実水に果物も用意して水分の多いものを用意していく。


「もう……レイは相変わらず涼しい顔です」


 ヴィオナは底なしといえるルクレイの体力を指摘して抱っこを所望した。ルクレイは笑顔で横抱きにして拠点まで戻りヴィオナを席に座らせた。


「ヴィーは身体のバランスがとても良いからリードが凄くしやすかったよ。まるで熟練にでもなった気分だった。ターンもとても軽く回れたね」


「レイはリズムとタイミングが良くてバランスが保持できました。体勢が崩れないのでステップの繋ぎも楽でした。ターンが回りやすいのはこれが理由ですね」


 ルクレイとヴィオナのお互い賛美が始まった。ユミナは諦めて果実水と果実を二人の前に配膳した。賛美しながら二人は果物を摘んでいた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 しばらく雑談をするとヴィオナは先に身支度をするため拠点を離れ本館に向かった。ルクレイは忘れていた作業をするため池の中心に移動した。


「楽しすぎて小島の土台を埋め込むの忘れてた。といっても穴を開けて土台になる岩を置くだけなんだけどね。材質はヴィーの好きな花崗岩にしておこう」


 ルクレイは土台の選択を花崗岩とした。頭の中では玄武岩にした時の膨れるヴィオナも見たいと考えたが出した物は仕舞えないので余計な事は封印した。


「小島は水面で直径は5mぐらいの感じだよね。予定だと地面の位置は水面から15cm程度高い位置になる。計算が面倒だから3m四方で高さは2mにしよう」


 ルクレイの雑さが表に出てきた。頭の中はダンスを踊っている時のヴィオナの表情が一杯に詰まっていた。常識的なサイズという概念が消えていた。


「よし、きっちり詰めるのは難しいから……魔力くん、350cm四方で深さは200cmで掘削するよ。イメージはできたよね……掘削!」


 地面がモコモコと波打ち「ドバン!」と土が吹き出した。流石に2mもの深さの土を掘削で吐き出すのは用意ではなかったようだった。


「深いと土の排出が難しいのか。まぁ、排出できたから良しとしよう。後はいつもの小石だけど50gにして10cmほど敷き詰めるよ……造石!」


 掘った穴の中に小石を敷き詰め砂も投入した。ルクレイの感覚ではこれで岩を置く準備が完了となった。


「最後に小島の土台の岩を作るよー。大きさは300cm四方で高さは200cmね。材質は玄武岩。注意点は上面はへこんで土を埋め込めるようにするからね」


 ルクレイは岩の中に土を入れて木の土台にしようとしていた。さらに転生礎石を収納できる場所は玄武岩で魔力くんにお願いした。


 頭の中のイメージはアニメで見た神秘的な岩と木である。木の根が岩を包み込むような物をイメージしていた。現実にあればドン引き確定の景色である。


「造石!」「ドゴォーーーーーン!!」


 巨大な岩が目の前に出現し穴の中に落ちていった。作られた花崗岩の巨石は推定でも40tを超える物体である。穴の底まで3m近く落下した。


「思ったより大きいというか重そうだ……。そんな事より……確かに玄武岩で転生礎石を仕舞える場所を頼んだけど……花崗岩から生えてる?」


 地上から5cmほど花崗岩が出ていた。その花崗岩から漆黒の玄武岩が突き出していた。転生礎石を三枚ほどはめ込める玄武岩は違和感しかなかった。


「これヴィーに怒られる奴だ。まずいまずい……でも隠せないし……諦めて怒られるか。ぷんぷん怒るヴィーは可愛いから神妙な顔しないと」


 ぷんぷん怒るヴィオナを想像したルクレイはニヘラと笑みをこぼした。


 怒られる事は確定事項なので玄武岩は見なかった事にした。イメージが貧弱だったからこうなったとルクレイは考える事にして本館に向かって歩き始めた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 身支度が終わりイヤーカフでヴィオナに声をかけた。夕食まで少し時間がありラウンジで寛いでいたのでルクレイはラウンジに向かった。


 ルクレイはラウンジの扉をノックして「ルクレイ」と伝えいつもの茶番劇場を始めた。扉の向こう側から「どうぞ」とヴィオナの入室を許可する声が聞こえた。


「さっき結構大きな音がして少し揺れたよ?」


 ヴィオナが入室してきたルクレイに首を傾げて尋ねた。


「ん?……あっ、小島の土台で岩を出した時かな。思っていたより大きな岩が出てきて落ちたんだよね。その時に大きな音と振動がしたから本館まで届いた?」


「最初はちょっとざわついたのよ? でもレイがまだ池の方で作業中って情報が伝わったらざわつきはなくなったの。やっぱりレイが原因だったのね」


 ルクレイの言い訳にヴィオナがくすくすと笑った。


 ルクレイはヴィオナが本館に向かった後の行動を話した。小島の土台を置くために穴を掘削して岩を造石で出したと説明し穴の分だけ落下した件も伝えた。


 話の流れで明日はヴィオナを連れて行きたい場所があると伝えた。


「池の取水場所が結構良い場所だったんだ。手が入る前にヴィーに見せたいから早朝の時間帯に行かない?」


 ルクレイのお誘いに「行く!」とヴィオナは答えた。


「それなら早朝に迎えに行くから準備が終わったらイヤーカフで教えて」


 ヴィオナのドレス風乗馬服がもし完成していたら確実に最初に見れるようルクレイは手を打った。お迎えの言葉に「分かった」とヴィオナは微笑んだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 夕食の時間になりルクレイはヴィオナをエスコートして食堂に向かった。食堂に入ると伯爵夫妻と前伯爵夫人は既に席に着いていた。


「リオとリクはリューウェンに向かう事になった。魔道具の効果は出てるというのもあるが工房との付き合いだな。顔を見せておけば次に繋がっていく」


 夕食も始まりバルテア伯爵はルクレイとヴィオナに話を振った。


「予定だとどれぐらいあちらに?」


「滞在は五日を予定している。ルクレイの義理の弟として顔見せすればリューウェンの受けが良いというリドルくんの推しもあったぞ」


 バルテア伯爵はニヤリと笑みを見せた。


 ヴィオナはそれを聞き「確実です」とうんうんと頷きイゼルダ前伯爵夫人は目を細め「ククク」と笑った。


 ルクレイは苦笑いを浮かべ「そうですね」と答えた。


「そういえば夕方に大きな音と振動があったんだがルクレイが何かしたんだろ?」


 ふと思い出したようにバルテア伯爵はルクレイに顔を向けて尋ねた。


「すみません。池に小島を作るために土台として岩を造石しました。それが思ったよりも大きくて地面に落ちた時に結構大きな音と振動が起きました」


 ルクレイは苦笑いを浮かべ頭を掻いて事情を説明した。


「ん?……造石で岩? それも音が響くほどに大きいのか? 造石って石を作る魔法のはずなんだが……なんで岩が出てくるんだか……分からん」


 バルテア伯爵は岩が作れる意味が分からず首を傾げた。


「くくく、ルクレイは土や砂や石が作れるんだ。岩ぐらい作れても不思議はなかろう。まぁ、岩も石がでかくなっただけだから報告は不要じゃな」


 イゼルダ前伯爵夫人は面白そうに『ルクレイだから』を強調して放置した。


「池の方は取水と排水の確認は終わりました。取水場所が良い場所だったので早朝にヴィーを案内して水路を掘ります。排水路も問題ありません」


 話の流れを報告にするためルクレイが池の状況を説明した。


「小山は周囲を水路で囲む構造にします。流れ込んでいる小川は水路で流れを調整して下流に流します。現状は排水側だけ水路を繋げました」


 並行して作業している小山に関する状況も説明し始めた。


「小川の流れを整えたら小山の造成に入ります。で、少し確認したい事があるので明日にでも騎士団長の時間が欲しいのでお義父さんから伝えてください」


「ん? 騎士団長なら鍛錬場にいる事が多いから時間は大丈夫だろう。後で声を掛けておくが何時頃が良いんだ?」


 ルクレイのお願いにバルテア伯爵は了承しつつ時間を確認した。


「午前中は小山の方で作業を行う予定です。周囲を囲む水路を繋いで小川を切らないと土を入れ難いので。なので小山の方に顔を出してもらえると助かります」


 ルクレイの返答に「分かった」とバルテア伯爵は頷いた。


「そういえばレベナに関する情報で何かありましたか? 魔道具が上手い具合だと糸の生産も軌道に乗りますよね?」


 ルクレイは話の方向をレベナの状況確認に移した。


「あー、そっちは大丈夫だ。厄介草の在庫量の確認は終わったからレベナへの輸送は再開している。ただ外皮を剥がす工程はリガレアに移すかもしれん」


「大型の乾燥魔道具を送れば集積所で作業するのは合理的だと思います。嵩が随分と減りますから輸送の負担もかなり減ると思います」


 バルテア伯爵の話を聞きルクレイは想定される効果に触れた。


「その辺りが一番負担の大きい作業だったんだがな。改善案を王宮に上げたから動いてくれるだろう。製糸法がルクレイの考える方向に変わると良いな」


「はい。苦渋の選択で押し付ける形になったと確信してます。そこが改善されれば厄介草の厄介さはだいぶ減ります。この後の改善も三人から出ると思います」


 ルクレイはバルテア伯爵の言葉に大きく頷き双子とリドルの活動が次の段階に入るとバルテア伯爵に伝えた。


「あっ、色染めは少しだけ経験した侍女がいました。侍女にレジンの色染めを試してもらっています。その侍女にも造成地の拠点に入って貰う予定です」


 レベナから発想が飛んだヴィオナが色染めの報告をルクレイにした。


「帆布の仕立てもありますし負担が増えそうですね。その辺りって大丈夫なのですか? 従僕たちも侍女たちも結構忙しい状況な気がします」


「そこは大丈夫だ。希望は聞いているしお手当の加算もあるから本人が判断する事だ。騎士団の方も妙にやる気な連中が増えているのは確かだな」


 バルテア伯爵の話によると騎士団は希望三位の「森林探索」を推していた騎士たちが『爽快の実』の収穫にも行っている事を教えてくれた。


 希望者で森に入りたい騎士が中心に収穫しながらディアを狩り探索していた。


 これを見た第二位の「水練希望」を推していた騎士たちが彼らなりに選定した場所の周辺を掃除したり道を作っているとの事だった。


「どうやら希望だけでなく行動すれば作れると考えたみたいだ。掃除にしろ道を作るにしろ困る話ではないから許可は出した」


 バルテア伯爵は道作りの流れで石碑広場に向かう道も作られ始めているとルクレイに知らせた。果樹園が近い事から近隣の村人も参加しているとの事だった。


「何ていうかあちこちが動いてたんですね」


 ルクレイは気が付かないうちに周囲はどんどんと活発に動き始めていた。レベナも代官が中心になって大きく動き始めていた。


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