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海の落とし者と釣り竿  作者: うにまる
第九章 メルカド領に戻ったルクレイとヴィオナの浜焼き

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第三節 浜焼き場の検証デートと海底散歩の検証

『やべぇ……目が痛い! 海水は目が痛いの忘れてた!』


 ルクレイは海中に入り目を開けた瞬間に目を押さえた。ルクレイとして海に入るのは初めてではないが日の光で目を焼かれた記憶しかなかった。


 そして前世の記憶では『水中メガネ』で保護していたと痛さの中で思い出した。


『痛いだけ……ヴィーに目が痛いと泣きつくか?……アリな気もするが我慢しよう。……慰めてくれるとは思うけど……我慢してエビで笑顔にするのが先!』


 どう考えてもアウトな思考が混ざったがルクレイは心に鬼番人を置いて海中探索を続けることにした。脳内では慰めてくれるヴィオナの姿を幻視していた。


『息継ぎは後で考えるとしてエビを探そう……ってエビとカニが沢山いる……。あれは……ウニ……アワビとか誰も獲らないから? いやこれも後にしよう』


 ルクレイは手近なエビを二匹ほど掴み海上に出た。


『両手が塞がってる……』


 ルクレイはプカプカと浮きながら両手が塞がっていることを思い出した。入れ物を持っていないのでどうするか考えて足元に水壁を発動した。


「水中にも水壁が出せる時点でどこにでも階段が設置できるじゃん。何だろう……出せるからアリなんだけど納得感が抗議団体みたいに主張してる……」


 ルクレイは便利は正義と水壁を階段状に展開して陸まで歩いて戻った。何となく『エビを獲った』という感動的なものは引っ込んでしまった。


「おかえりー。エビさんいたね。火を熾してるところだから生け簀に入れる? 二匹なら桶に入れてても良いよね。あっ、それとも乾燥させちゃう?」


 ヴィオナが戻ってくるルクレイに気が付き駆け寄ってきた。両手のエビを見て高いテンションで笑顔をルクレイに向けた。


 ルクレイの脳内では『やっぱり笑顔を選んで正解だ!』と自分を絶賛していた。


「桶に入れておこうか。海の中はエビやカニがたくさんいたよ。たくさん獲ったらどうなるのかも調べたいけど時間が掛かる調査だしどうしよう……」


 ルクレイは桶にポイポイとエビを入れた。


「獲りすぎるといなくなる?」


 ルクレイの呟きにヴィオナは首を傾げた。


「そこが分からないんだよね。エビを食べるようになったのはアルフォンスさんたちが浜焼きをしたからでしょ? まだ捕獲量が少ないからねぇ」


 ルクレイは「保留だね」と肩を竦めた。


 ルクレイは再び波打ちぎわに向かって歩き始め目の痛さをどうするか考えていた。考えた末に水壁を周囲に展開して確認してみることにした。


「自分に紐付けするとして可変なのは形状と抵抗になるのかな?……後は発動場所か。変数は減らした方が良いから通常の防御用の水壁で飛び込むか」


 ルクレイは岩場の縁に立ち水壁を展開した。


「んー、形はやっぱり球形がベースなんだな。地面の中に展開されてると感じない。展開先に何かあって無理そうなら展開を諦める感じなのかな?」


 ルクレイは出っ張った岩の上に立ってみた。


「地面の下で展開されなかった部分も勝手に補完されて展開された。つまり展開する努力はたぶんしているってことだろうな。空を飛んだら……階段で良いか」


 階段状に水壁を設置して登ってみると防御用の水壁は完全に球形で展開された。確認が終わったので階段を降りて岩場に戻る。


「階段は上面が壁になってる。降りるときは防御用の水壁と壁同士が干渉しそうだけどすり抜ける。納得感は薄いけどすり抜けるのだから()()()()()


 ルクレイは納得感は自己満足なので起きた事象を事実を付け入れることにした。


「どうしたの? 階段の昇り降りしてたけど……」


 なぜか戻ってきたルクレイにヴィオナが首を傾げて尋ねた。


「ちょっと水壁で気になったことができた。ちょっと僕の水壁の前に風壁を展開してくれる? 場所は固定で壁の面を僕に向けてお願い」


 ヴィオナは「いいよー」と軽く答えて風壁を発動した。


 ルクレイは風壁を確認して踏み出した。


「前に進めない……」


 風壁と水壁の壁の面が当たるとルクレイは動けなくなった。


 ルクレイはヴィオナに防御用の風壁を自身に紐付けて展開してもらった。代わりにルクレイが自身に紐付けた小さな水壁を展開した。


「ヴィーが今度は前に踏み出してみて」


 ヴィオナは頷き踏み出して「動けないー」と手をパタパタと振りながら藻掻いた。踏み出す下半身と押し戻される上半身に翻弄されていた。


 ルクレイは『動きが可愛い』と藻掻くヴィオナをジッと見た。


「僕の方は身体を押されてる感覚があるよ。紐付けた場所に何らかの影響を及ぼしてるみたい。どこまで影響がでるかは時間のあるときに確認しよう」


 ルクレイの言葉に「手伝うね!」とヴィオナは手を挙げた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 ルクレイは再び波打ちぎわに向かいながら水壁の透過ルールを整理していた。


『地面は透過して風壁は透過しないのは確認できた。風壁は弱めれば風を通すけど遮断は可能。この性質は水壁も同じはずだから()()()()()()()海水は通らない』


 仮説は仮説とルクレイは考え実践で確認することにした。ただ、仮説の時点で既に思考しているため魔力くんに筒抜けとなっていることは失念していた。


 ルクレイは波打ちぎわで水壁を展開し海に飛び込んだ。


「水壁の内部に海水は侵入して来ないから濡れない。沈む速度は速くない……その代わりか潮に流されて沖に向かってるな……。防御用だから潮に押されてる?」


 ルクレイは順調に岸が離れていくのを目視していた。


「抵抗を消せば流されない?……事前に分からないから実践あるのみ」


 ルクレイは水壁の抵抗を消した。


「うわっ……」


 海底まで底が抜けたように落ちたルクレイは海底に立っていた。足元のサンゴは無残に踏み潰されて足は膝ぐらいまで埋まっていた。


「いやいや……えっ? 自由落下より酷い速度で落ちただろ。足を怪我してないのは……頑丈か? この落下は危なすぎるだろ……抵抗って偉大だな」


 ルクレイが上を見ると悲惨と言える状況だった。渦が作られ近づきたくないほどの乱流が起きていた。抵抗がないため海水が強引にどかされた余波である。


「抵抗なしで海水が無理やり動かされたから酷い乱流になってる。魚がなすすべもなく巻き込まれてる。水中で抵抗を消すと自分以外にとってめちゃ危険だ……」


 ルクレイは視線を海底に向けた。


「不思議だ……サンゴとかは海底と同じような扱いみたいだけど……エビやカニは潰れてる。いやマジで基準が分からないから海底散歩はダメでは……」


 海底を水壁を展開して歩くと色々なものを押し出す効果が付随する。サンゴは動かないからサンゴなどと水壁で押し潰される生き物が続出する未来しかない。


「ヴィーと一緒に海底を()()のは無理と考えよう。色々と迷惑でしかないから僕だけでも歩くのは禁止としておかないと」


 ルクレイは砂地ならギリでイケるかもとよぎったが保留した。


「水壁を展開して海中にいるとエビの捕獲は難しそうだな。近寄れば水壁が獲物を押すから手が届かない……。まてよ……水壁同士なら透過するか」


 ルクレイは獲物を水壁で包めば入手できそうな気がした。とりあえず少し上に階段を展開しジャンプして階段に足をつけた。


「だから……抵抗なしの移動はまずいって言ったよ? 今度は海底が酷い……上は押された海水の乱流、海底は真空になった場所に海水が吸い込まれてる……」


 海底も流れ込んだ海水によりグシャグシャに荒らされていた。軽く環境を破壊する破壊神にでもなった気分をルクレイは味わっていた。


 軽く首を振り「諦めも肝心」と呟き水壁を展開して陸側に移動した。


「さて、エビを水壁で包む方法だけど……って、やっぱり目視で包む展開は無理か。とすると簡単な方法は何かで魔力を届けてすいへ……届ければ良い?」


 ルクレイは思考の中で『届ける』という点に引っ掛かった。


「魔力を流す訓練みたいなことは結構やった。流せると知った後は色々と流してあそ……試したし。でも空間に流したことはなかったな」


 ルクレイは流す対象として空間を定義して糸をイメージして流し始めた。


『魔力くん、空間にも魔力って流せるよね? 何かに流せるなら空気だって物質だし雷みたいに流れるイメージ……は速度が危なそうだな』


 雷をイメージした瞬間にエビに魔力が届いたと理解した。


『レスポンス良いね……。もうエビに届いてエビの情報が流れてきたよ。というかアオエビってそのままだよね。この世界の命名規則って雑すぎない?』


 ルクレイは名前に気が付いたが雑なので見なかったことにした。


「覚えてたら女神様に聞いてみよう。重要度が低くて絶対に忘れるに賭けても良いけど一人では賭けにならないから諦めよう。エビはエビ。カニはカニで問題なし」


 匙を投げたルクレイは魔力が届いたエビを逃さない形で水壁を展開する。


「うんうん簡単に包めたね。で……あっ! シイラを包んだとき引っ張るいし……うぉっ! あぶねぇ……。エビがすごい勢いで顔に向かって飛んできた」


 シイラを釣り上げるときにルクレイは水壁で囲み引っ張るイメージをした。その時の結果は今回と同様に顔に向かって飛んできた。


「あの時は糸を経由していたから少し軌道がズレたのか。魔力を繋げると一直線になって顔に向かってくるのね……。小箱の手袋がなかったら刺さったのでは……」


 とりあえずエビは掴んだのでルクレイは捕獲を進めることにした。自分に紐付けた少し大きい水壁のバケツを用意してエビを投げ込んでおく。


「まぁ、目からビームではないけど魔力を繋げるのは簡単だった。そして水壁で包んで飛んできたのを掴んでバケツに入れて捕獲完了……乱獲の未来しかない……」


 ルクレイはエビを十匹ほど捕獲してバケツに投げ入れた。ついでとカニとアワビに魔力を繋げて捕獲していく。見た目が岩ガキも簡単に捕獲できた。


「うーん、色々と捗ってはいるけど色々と酷い結果ばかりの気がする」


 簡単にエビやカニを捕獲できたことにルクレイは多少の危機感を感じてた。水壁で海に入れるのは良いが広まれば問題が沢山でそうと考えた。


「風壁が魔道具で提供されているよね。あれって何気に危険な空気を感じるなぁ。アルフォンスさんにしては迂闊ぽくないか? 洞窟対策で必須だからか……」


 洞窟対策として風壁魔道具を提供するとリベランさんは言っていたことを思い出した。用途の限定を意識させるためかとも考えたが気にしないことにした。


「少なくともエビの捕獲に風壁魔道具を使おうと考える人は……まぁいないよな。対策なしで入れば沖に流されちゃうから好んで使う人もでないだろうな」


 ルクレイは階段を展開し空中に飛び出し水壁の上を拠点まで駆け抜けた。


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