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海の落とし者と釣り竿  作者: うにまる
第六章 二人は婚約して冒険デートに出かけたい

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閑話 レベナで繰り広げた双子とリドルで未来の布石

 メルカド伯爵領の領都リベルグから港町レベナに続く街道を六頭の馬が南下していた。六頭は隊列を組み伝令の騎士たちが丁寧に先導していた。


 隊列の中には三人の男の子が混ざっていた。馬の動きに合わせようと真剣な面持ちでありながら笑みも浮かべていた。


「最近はヘラムが姿勢の乱れとか教えてくれる。指摘される回数もだいぶ減ってきて乗馬そのものがとっても嬉しくて楽しい!」


 リドルが相棒のヘラムに感謝を伝えた。


「バルムも」「フリムも」「「教えてくれるー」」


 マルセリオとフィリクスが声を揃え相棒から指摘されている事を主張した。


「私たち斥候隊も馬たちに教えてもらうようになり、以前より格段に騎乗技術が伸びています。相棒として認めて貰える騎士も増えルクレイ殿に感謝してます」


「「「ニロンも凄いよ!」」」


 ルクレイとニロンが騎乗技術を高める手助けをしていると三人は声を揃えた。


 三人は楽しそうに話をしながら街道を南へと駆け続けた。


 双子とリドルはレベナの北門を抜け町中へと踏み入れた。伝令の騎士たちは騎士団の詰め所に向かうため門のところで別れた。


「代官屋敷で先触れを頼んで、僕たちは昼食を食べた後に製糸工房に行く予定のままで大丈夫みたいだね」


「「予定通りに」」「レベナに」「到着!」


 双子とリドルは代官屋敷を目指して町中を常歩でゆっくりと移動した。


 代官屋敷に入りリドルが屋敷に向かい双子はヘラムも連れて馬房に向かった。


 リドルは代官屋敷の執事に声を掛けマルセリオとフィリクスの到着を告げた。


「悪いが昼食の用意と三カ所ほど先触れを頼む」


 そして漁師のビット、波止場の管理事務所、製糸工房への先触れを頼んだ。


 用件を伝えたリドルも馬房に向かい従僕たちの手を借りながら相棒の手入れを行った。果物も振る舞い移動のねぎらいを丁寧に行った。


 昼食の準備が整い食堂で双子とリドルは昼食を取っていた。


「リドにぃ、僕たちって役立つかなぁ?」


 マルセリオは少し考え事をしながらリドルに話しかけた。


「うーん、僕は王都とかで多少は経験を積んだから話せるというのはある。たぶん、リューウェンにいたら大人との話し合いは無理だったと思う」


「リドにぃ、僕たちも王都に行った方が良いかな?」


 フィリクスが不安そうにリドルを見た。


「僕はメルカド領にいた方が良いと思う。大変な状況だけど二人の両親が色々してるのを見るのも勉強になる。何よりルクにぃがいるのは大きいと思うよ」


 リドルは双子の勉強の場は領地だと話した。


「ルクにぃは相手から笑顔を引き出して前を向かせてる。そのやり方をなぜしたかを考えてルクにぃに聞くのがためになると思う」


「ルクにぃに聞くの?」


 マルセリオが不安げにリドルに確認した。


「聞けるのは僕たちみたいに小さい子の特権だと思うよ。大きくなると聞きたくても聞けないみたい。僕たちはまだまだたくさん学ばないといけないからね」


「「分かったー」」「たくさん聞いて」「たくさん覚える」


 双子とリドルが製糸工房に向かおうと準備を始めたら漁師のビットが代官屋敷を訪ねてきた。ラウンジに通すよう指示してビットを迎えた。


「呼び出してすまない。今回、漁師たちに頼みたいことがある」


 リドルが代表してビットに話し掛ける。


「頼みたいこと……ですか?」


 リドルは頷き概略を話す。


「ルクにぃがレベナで魚粉を生産する工房を立ち上げる指揮を取る予定だ。その前準備としてビットたちに魚粉を試しに作ってもらいたい」


 ビットは「魚粉を作る?」と眉を寄せた。


「細かいことはビットが領都でルクにぃから聞いてもらうことになる。移動は騎士に同乗することになるので予定は代官屋敷に伝えてくれ」


 断れないと悟ったビットは「分かりました」と答えた。


「僕は悪い話でないと思ってる。魚粉を作ること自体は難しくない。単純にリューウェンで作ってるが足りてない。そこでレベナでもという話になった」


 リドルは話の経緯を少し開示した。


「ただな、ルクにぃはレベナの不漁で大量に作れないと判断してる。魚粉を作る準備と不漁対策をある程度は同時にやりたいと言ってたぞ」


 漁業の建て直しも予定とビットに伝える。


「分かりました。詳細はルクレイ様から聞くため領都に向かいます。このあと、仲間に段取りを伝えますので明日の出発でも問題ありません」


 ビットは聞くなら早いほうが良いと判断した。その場で明日の朝に代官屋敷に集合することで話がついた。ビットは暇乞いをして屋敷を後にした。


「ふぅ、メルカド家でない僕が話す場合の距離感が分かり難かった。ルクにぃが後始末はしてくれると言ってもしっかりやるの前提だからね」


「「リドにぃ」」「とっても」「カッコ良かった」


 リドルとしては他家の領民に領主家の代理として指示を出すのは初めてだった。領主になるのはかなり先だが勉強の機会と役割を受けていた。


 ビットの早い訪問が終わり双子とリドルは代官屋敷から町中に出た。リドルの目にはやはり王都リヴェルナやリューウェンとの活気の違いに目が行った。


「リオ、リク。二人はレベナをどんな町にしたい?」


 リドルはふと双子に問いかけていた。


「んー、具体的なことはまだ分からないよ?」

「ルクにぃは笑顔って言ってた」


「「レベナに笑顔を増やす」」「そして」「考える」


 マルセリオとフィリクスは出来ることからと答えた。リドルは「出来ることから……かぁ」と双子の答えを聞いて呟いた。


「リオ、リク。コロコロってルクにぃはもう一つ案を出してたよね。あれを今日は披露してみない? やり方は一つではないよって伝えたいんだ」


「「おおー」」「リドにぃ」「それ楽しい!」


「それじゃ、棒を支える役はリオとリクにお願いしようかな。僕はルクにぃがやってたやり方を話す役をするね。引っ張る役は子どもにしよう」


「「かしこまりー」」


 双子とリドルはイゴルト製糸工房に到着した。


「「たのもー」」「こんにちはー」


 双子はいつもの挨拶をしてどんどんと工房の中に突入していく。リドルは苦笑いを浮かべながら双子の後からついていきイゴルト工房主を見つけた。


「マルセリオ様、フィリクス様、リドル様。お出迎えできず申し訳ありません」


「「気にするなー」」「いつもの」「言葉で」「「いいよ?」」


 双子の新技にリドルは吹き出してしまった。


「ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きます」


「あー、イゴルト。厄介草の在庫ってどうなった? ルクにぃは集積場の数字を出さないと出荷は厳しいと言ってた。少ないようなら伝えるよ?」


 リドルは厄介草の在庫を確認するため尋ねた。


「はい。コロコロに変えてから誰かしらコロコロしていて在庫はあと二日か三日ぐらいです。私が工房主になって初めての状況です」


 イゴルト工房主は明るい笑顔で答えた。


「在庫がなくなりそうという話は戻ったらルクにぃに伝える。魔道具の改造を待つかどうかは判断してくれます。引き続きコロコロは続けるように」


 イゴルト工房主はにこやかに頷いた。


「実はコロコロと同じように棒を使った表皮の剥ぎ取り方法がある。これから実演してみるから従業員を集めてくれ」


 リドルこ言葉にイゴルト工房主は作業場に声を掛け従業員たちを集めた。


「今回、別の方法を見せる。考え方は同じだから直ぐに分かると思う。まず実演するから……そこの二人は前に出てきてくれ」


 リドルが子ども二人を指名して呼び寄せる。


 双子は棒を二本持ち出して準備万端でリドルを見ていた。リドルは作業内容を指示しながらマルセリオの横に立った。


「元のやり方は地面を使っていたのを棒にした感じだな。とりあえず二本の棒の間に乾燥させた厄介草を通して棒を密着させる」


 マルセリオとフィリクスは棒を密着させた。リドルは子どもたちに頷き指示したように片側から引っ張らせた。


「パリパリパリ」


 乾燥した厄介草の表皮が音を立てながらポロポロと破片が床に落ちていった。端まで行くと反対の子どもが引っ張り始めた。


「一回でいいぞ。その状態をみんなで見てくれ」


 周囲にいた従業員が子どもの周りに集まり双子とリドルは少し距離を置いた。


 従業員たちは一回の往復でかなり表皮が取れていることに驚いた。引っ張った子どもは力はそれほど強く引いてないと説明していた。


「少し聞け。今回違う方法を見せたのはやり方は一つでないことを再確認するためだ。棒で叩いてたのがコロコロになったように別のやり方は存在する」


 リドルの話に従業員たちは頷きながら聞いていた。


「人それぞれ考え方は違う。今までも恐らく叩く方法以外を思いついた者はいたかもしれない。コロコロ以外に楽な方法があるかもしれない」


 リドルは静かに話し従業員を見回す。


「やり方を思いついたら皆に話せ。そして試せ。『それは無理』といった否定の言葉を言う前に試せ。そうすることでより良い方法が生まれると考えろ」


 リドルは言葉を伝え従業員を解散させた。


 双子とリドルはイゴルト工房主を誘って工房のテーブルを囲んだ。


「まだ煮込んだ後に叩く工程が残ってる。あの叩く作業が何を目的としているか。他に方法がないかといった部分の相談も始めてくれ」


 リドルの言葉にイゴルト工房主は真剣な顔で頷いた。


「話は変わるが新しい糸に関してだ。こっちは糸を作るのは簡単というイメージがある。でも、そんなはずもないだろう。色染めなど話は広がると思う」


 リドルは静かに話し始めた。


「イゴルトは一度リューウェンに行ってナンニルと話してきてくれ。王都でも作るが……需要が読めないそうだ。撥水糸は新商品だから尚更だな」


 他領に赴けとの言葉にイゴルト工房主は目を丸くした。


「レブコン……製布工房の工房主だけど帆で使いたがると思う。ここが動くと需要が爆発しかねないとルクにぃも言ってた」


 多くの帆船を想像したイゴルト工房主は苦い顔になった。


「撥水糸の原料になるガラスもルクにぃが領都で準備に入る。少しで済むという算段が難しいみたいだから十分に準備して欲しい」


 イゴルト工房主は喉を鳴らししっかりと頷いた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 代官屋敷に戻った双子とリドルは庭園の隅で棒を使った武術鍛錬をしていた。


「ヤァー」「カーン」「トォー」「カーン」


 三人で考えた三人でやる模擬鍛錬である。仕掛ける相手を自由に選びながら三人持ち回りで仕掛ける側になる変則的な鍛錬である。


 足場も少しずつ場所を動かすことで変えていた。三人でやれる鍛錬方法を考えて導き出したオリジナルの鍛錬法であった。


 屋敷から執事が庭園に訪れ客人の来訪を伝えた。


 リドルと双子がラウンジに入った。ラウンジにはノルド家所属連絡船の船長が席を立ち三人に挨拶を述べた。


「船長、忙しいのに呼び出してごめんね。実はお願いがあるんだ。例の白い粉だけどリガレアにも運ぶから量を多めにしてもらって」


 リドルは船長に伝言を頼み始めた。


「あと『名の無い雑草』の群生地があるか調べたいので冒険者ギルドに依頼をお願い。範囲はレベナとリガレアの周辺で出しておいて」


 船長はリドルのお願いをメモに書き込んだ。


「そうそう、ルクにぃが『帆布だよなー』って呟いてたからレブコン製布工房に在庫チェックを頼んでおいて。少し後にルクにぃと向かう予定……」


 リドルは言葉を止め宙を見た。


「ルクにぃがリューウェンに顔出しする予定があることを父上に伝えておいて。メダル船長は確か当分はリューウェン待機だったと思うのでそっちもお願い」


 リドルはお願い事項を船長に伝えた。船長は足早に代官屋敷を後にした。


 三人は仲良く湯殿で長湯して茹だり、バランスを鍛える体操を三人で邪魔しながら楽しそうに行った。――三人でベッドに寝転び三人だけの夜を楽しんだ。


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