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海の落とし者と釣り竿  作者: うにまる
第六章 二人は婚約して冒険デートに出かけたい

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第一節 風壁パンチで可愛さ爆発とルクレイ黒歴史?

 進もうと思っていた方の木々の間から男性たちが駆けてきた。声を掛け励ましながら必死にルクレイたちがいる方に向かってきた。


「思ったより多いな。たぶん魔物とかだろうから戦闘準備!」


 ルクレイは棒をクルクルと回し軽く構えた。隣にいたヴィオナも構える。騎士リーダーと戦闘侍女は少し左右に位置を変えて迎撃の態勢に入る。


 駆けていた男性がルクレイたちに気が付きギョッとして声を掛けてきた。


「魔物だ! 逃げろ! 数が多い!」


 ルクレイは軽く構えたまま「お構いなく」と男性たちに返事をした。


 男性たちの背後の木々から黒いウルフが飛び出してきた。数はあっという間に十頭を超え後続はまだ多いように感じた。


「風壁パーンチ!」「えぃ」「えぃ」


 隣に立っていたヴィオナが風壁を飛ばし始めた。ルクレイは横目でヴィオナを見て『めっちゃ可愛い』と小さな掛け声で軽くパンチを繰り出す姿を見ていた。


 男性たちがルクレイたちの防衛線の裏に周り駆けるのを止めた。


 ルクレイは飛び込んできた魔物のウルフにスッと棒を突き出し頭部を吹き飛ばす。頭を失ったウルフは後方に吹き飛びながら黒い煙になり消えていった。


「何も残さないって習ったけど本当に黒い霧になって霧散するんだね」


 後続がどんどんと襲い掛かって来るが棒で叩きまくり霧散させていく。足元は軽くステップを踏み同じ場所に留まらず棒を振り突きウルフを霧散させ続けた。


 ヴィオナは棒より風壁を使った攻撃を選択し棒を手放し風壁を飛ばし殴った。威力で見るとルクレイより強打で襲いかかるウルフをステップを踏みながら殴った。


「ヴィー、後ろに通しても味方がいるから気にせず前を潰して」


 ヴィオナは「分かった」と答え無駄な移動を減らし風壁を飛ばして奥側のウルフを潰す回数を増やした。たまに肉薄されると素手の裏拳でウルフを吹き飛ばした。


「後続にボアタイプが混ざってきたぞ!」


 ルクレイから魔物の変化が伝えられる。


 目の前のウルフを叩こうとした瞬間にルクレイに向かってウルフが吹き飛ばされた。ルクレイは右にステップを切りウルフを左手でボアに向け弾いた。


 視界が塞がったボアが再度ウルフを弾き飛ばすと棒の先端が頭に刺さった。


「よっ!」


 軽い掛け声と共に頭に棒が刺さったボアは上空に飛ばされ空中で霧散していった。棒を使ってボアを上空に投げ飛ばしたルクレイは後続のボアを叩き伏せた。


 魔物の主力がボアになり抜ける数が増えた。騎士リーダーと戦闘侍女は抜け出る場所を塞ぎ剣で霧散させていく。抜ける場所は限られたので封殺していた。


「すげぇ、あの数の魔物を淡々と処理していくぞ。四人で止まる数とは思えないんだが……。何より前衛の子どもたちが半端ないな……」


 逃げ込んだ男性も拾った木の棒を持って構えていたが魔物は来なかった。


「後続が切れたぞ! 潰して一休みするよー」


 まったく疲れたように見えないルクレイが魔物の波が終わることを伝え前に出た。左右にステップを踏みながら前に進みボアが左右に吹き飛んでいく。


 最後の一体をヴィオナが吹き飛ばして魔物の波が終わった。


「さすがに疲れたー。レイったら全然疲れてないでしょ! ずるーい。レイのその体力を少しはわたしに分けてよ〜」


 ヴィオナはこの程度では欠片も疲れないルクレイに苦情を上げた。


「疲れない秘訣が分かったらヴィーに教えるよ。ただ、ヴィーは少し動きすぎだよ? もう少し手を抜く感じでやらないと。鍛錬でそこを伸ばそうね」


 ヴィオナはプクッと頬を膨らませ「ずるーい」と繰り返した。


 ルクレイは苦笑いを浮かべてヴィオナの頭をナデナデした。


『もう空間を塗り替えた! 明らかに討伐数が少ないわたしは結構ギリギリな感じだったのに……二人は身体が暖まった程度にしか見えない……』


 戦闘侍女がため息を吐いて騎士リーダーを見ると苦笑いを浮かべていた。


「貴方たちが森林地帯にいた理由を報告しろ」


 ルクレイが逃げてきた男性の集団に近づき説明するよう命令した。


「あ……」


「言葉使いは普通でいい。情報を正しく報告しろ。嘘や隠蔽は後悔するぞ?」


 ルクレイは厳しい視線で男性たちを見つめた。


「俺たちは領都所属の樵です。この先で果樹園を作っているのですが魔物の襲撃を受けて逃げてきました。果樹園の作業は領主様の許可を頂いております」


 樵と名乗り行っていた作業を伝えた。


「ふむ、爽快の実が成る木の果樹園を作ってるのは貴方たちですか。魔物を見たという情報で来ましたが……思ったより多かった理由は?」


 ルクレイは厳しい視線のまま問いただす。


「分かりません。果樹園でディア退治をしていたら突然湧いて襲ってきました。逃げれたのはディアが間にいて距離が空いていたからです」


 ルクレイは「突然湧いてきた?」と聞き返す。


 ルクレイはそれほど魔物の勉強は進んでいない。四歳の教材に記載はなく『異変の英雄』関連で仕入れた知識しかなかった。


「うーん、魔物が湧いた辺りに何か変わったものはなかったか? 何もないところで湧き出すのは納得いかないぞ?」


 ルクレイは『突然湧いた』という言葉に引っ掛かった。


「変わったもの?……あったのは寝泊まりする拠点を作った広場ぐらいだよな?」


 周囲の樵たちに話していた樵が聞いた。


 ルクレイは「広場?」と眉をピクッと動かした。


「木々に囲まれたそれほど大きくない広場か?」


 樵は驚き「そうですが……」と言葉に詰まった。


『アルフォンスさんが王都の近くで見つけた石碑の設置場所が広場だったと、ユリウスさんは石碑の話で言っていた。つまり石碑関係の場所?』


「ひとつ聞くが正直に答えろ。その広場に四角い石があっただろ? 飾り気のない石碑みたいなやつだ」


 ルクレイはとぼける道を潰した質問をした。


「四角い石ですか?……あっ、ありました。中心付近に転がっていて邪魔なので端に置いときました……それが何か……」


 ルクレイはため息を吐き「案内しろ」と冷え切った声で命令した。樵の男性は真っ青になってコクコクと頷き案内のため動き始めた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 森林の中を進んでいくと木々が開け開けた空間が現れた。ルクレイが見渡すとほぼ円形をした広場のような場所だった。


「ここが広場か。で、ここに拠点を作ったわけだな?」


 ルクレイが樵たちに尋ねた。


「はい。ちょうど良い広場でしたので拠点にしようと色々と持ち込みました。小屋を建てたりしたのですが……全部壊されました……」


 樵たちは項垂れた。


『この広場は妙に違和感が強い。このざわつき感は少し前から強くなってるけど何だろう。うーん、魔力くん、この広場の違和感を見えるようにして!』


 ルクレイは魔力くんに頼み周囲の違和感を看破するイメージで目の魔力を活性化した。すると、一気に灰色の世界が視界を埋め尽くした。


『はっ? なんで灰色の世界なんだ? めちゃ視界が悪くなってるんだけど……』


 ルクレイは灰色の世界で目を凝らした。広場を見渡すと中心付近に吹き上げるような濃い灰色の柱が見えた。仕方がないので中心に向かって歩き出す。


『間欠泉?……いや、ずっと出てるから間欠ではないか。なんかすごい勢いで灰色の何かが吹き出してるんだけど……これなんだろ』


 ルクレイは『仕方ないか……』と魔力くんに情報の読み取りをお願いした。身構えていたルクレイの頭の中に『魔素』という言葉が浮かんだ。


『なに! 疑問形でない答えだぞ! ていうか魔素?……これってテンプレ的な解釈だと魔力の元になるやつだよな。それより疑問形はどこにいったんだ?』


 ルクレイは仕方がないので視界の隅で光っている場所に向かった。


「これって……石碑ってやつか? ユリウスさんに呼び名は聞いたけど見た目は知らないって言ってたからなぁ。明らかに石で作られてるみたいだし石碑だな」


 ルクレイは石碑と決めて情報を読み取ると『魔光石』と頭の中に浮かんだ。


『うんうん石だ。ていうか、光る石ってそういう意味なのか?……うぇ、魔力を見るのを止めたら広場が普通に広場だな……外から見たら俺は間抜けか?』


 灰色の世界で動いていた姿は普通に見たら滑稽だったのではとルクレイは気が付いた。何もない広場を慎重に移動する姿は絶対に自分では見たくなかった。


 ルクレイは魔力くんに再度頼み魔力や魔素が見れる状態に戻した。


『こっちの方が落ち着く……って違うだろ』


 色々と葛藤したルクレイは石碑を拾って魔素が吹き出している場所に移動した。すると地面にも魔光石が存在することに気が付いた。


「これは……石碑を置く場所なのかな。とりあえず石碑を再設置するか」


 ルクレイは石碑を設置してみた。


『うぉっ、吹き出してた魔素が止まった? すげぇ、あの勢いで出ていた魔素がまったく出ずに……石碑がめちゃ眩しくなった。魔光石の魔は魔素?』


 吹き出していた魔素が止まったのを確認したルクレイは首を傾げた。


『たぶん、外から見てたヴィーたちは意味不明だな。灰色の世界とか言ってもポカーンとする未来しか見えない。ポカーンとしたヴィーは超可愛いのだが……』


「ヴィー、こっちに来ていいよー」


 ヴィオナは呼ばれたので笑顔でテケテケと駆け寄ってきた。少し見惚れたルクレイは気を取り直して石碑に関して説明を始めた。


「これが石碑だと思う。ユリウスさんからは見た目は聞いてないんだけど間違いないと思う。地面に同じ材料で台があったから載せてみた」


 ヴィオナも顔を近づけ「ほんとだ台がある」とつぶやいた。


「あった場所に石碑を置けばいいらしいから後は様子見かな。とりあえず、広場に散らばってる樵たちが持ち込んだゴミは掃除して一旦村に戻ろう」


 ルクレイは立ち上がり樵たちに掃除するよう指示を出す。


 ルクレイは騎士リーダーと戦闘侍女を呼び寄せ軽く説明をした。石碑の広場が見つかったことでメルカド領も異変対応に参加する必要ができたからである。


「詳細な情報は伯爵様の判断に任せるとしてこの石は石碑と呼ばれてる。王国が実施している異変対応に関係している物だ。まぁ、王宮報告案件というやつだな」


 ルクレイの言葉に騎士リーダーと戦闘侍女が驚いた。


「石碑を元にあった場所に戻せば良いと聞いてはいるが伝聞だから確証はない。騎士たちの巡回に組み込むかもしれないから場所は覚えておいてくれ」


 騎士リーダーと戦闘侍女は真剣な顔でルクレイに頷いた。


「よーし、片付いたら一度村に戻るぞ。樵たちはメルカド領を危険に晒した容疑があるから領都に連行するからついてこい。村から領都には馬車を手配する」


 樵たちは青い顔で俯いた。


「まぁ、ここで会ったのも縁だ。石碑のことを知らなかった件と素直に情報提供に応じた件は伝えておく。ただ、本業の樵として労役が付くと思ってくれ」


 樵たちは顔を上げてルクレイの言葉を聞き始めた。


「戻る村の樵は全員が村を去っている。つまり樵が圧倒的に足りなくなっている。しかし、森林管理の観点から間伐を進めて適切な状態に戻す必要がある」


 ルクレイは森林の管理状況を改善する意図を伝える。


「ディアが多すぎる件も対処が必要なんだが……村の狩人も去っている。間伐とディア狩りで少々忙しくなる。別に無料奉仕は求めてないから頑張れ」


 樵たちの表情は少し明るくなった。ルクレイたちは来た道を戻り村へ向かった。


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